初めて行った献血で、自分が思ったより繊細だったと気付けた話
簡単にまとめると、どうやら血管迷走神経反応が起きたという話。赤十字のHPには、献血者の約1%という記載がある。レアな事象だったようなので、メモしようと思った次第。
筆者は「なら次は成分献血してみたら、どうなるだろうか」と自分の身体で実験してみようと思っている変態側の部類なので、そういう人間が書いているnoteだと思って読んでもらいたい。あくまで個人としての体験談だ。
なお、ここから先は血だの注射だのの話をするので、苦手な方はブラウザバックをオススメする。
1.注射嫌い
今回の事象が起きた要因の一つに筆者の注射嫌いがあるだろう。ちなみに由緒正しき注射嫌いである。
筆者は幼少期病弱だった。何かにつけて病院に行き訳の分からないことをされる日々。そりゃあ子供なので、治療など理解できるわけもない。
そこでの注射嫌いを決定づけたのは、とある大学病院での検査だ。訳のわからない機械に入れられ、腕になんかよく分からん検査をされた後、ベッドのある部屋に通されたのだが、そのベッドの枕もとに注射器が置いてあったのだ。
今でもその時の印象を鮮明に覚えている。あれは象でも殺すのかというレベルの大きさの注射器だった。血を抜かれたら死ぬ。本気でそう思った。「あれつかうの?」という質問に答えない大人を信用できるわけがない。
ぶっちゃけ大学側が悪いと思う。子供が見える位置に注射器を置くな。しかもこれから血を抜かれるとわかってる子供だ。幼き子供の必死の抵抗は大学の自業自得である。
そうして、めでたく注射嫌いの人間が生産されたのだった。
2.はじめてのけんけつに行く決心
注射嫌いであっても、現代において人生に注射は欠かせない。そのあたりは筆者も理解しているので、ワクチン接種だの健康診断だの手術だので、打たれたり抜かれたり点滴されたりするのは渋々受けている。
必要な時だけは注射を認めようという気分で生きようと思っていたのだが、オタク生活をしていると意外と「献血」は目につく位置にある。
まず何といってもオタクの祭典、コミックマーケットだろう。ずらりと並ぶ献血車を参加者は目にする。車を目にするだけでなく血を抜かれるために率先して並ぶ列も見える。個人的には異様に見えた光景だった。
そして、推しジャンル。これもまた献血を意識するきっかけとなる。
筆者の推しジャンルのひとつには、医療モノがある。漫画も邦画も洋画も各ドラマも、医療モノを見るのが好きだ。人を救う・命のやり取り、という普段は触れない世界の話は、たとえ誇張されていたとしても面白いし、視聴している側が救われることもある。そのうちにジャンルそのものに貢献したくなってくるのが、オタクの性であろう。
医療に貢献するのは難しい。そもそも資格がないと何もできないし、寄付もお金が要る。だが一つだけ簡単にできることがある。
献血だ。
ブラック・ジャックでも輸血ができなければ患者は救えない(『上と下』ほか)。
しかし筆者は注射が嫌いである。さらに血を抜くなんてもっと嫌だ。この『嫌い』の根底にあるのは憎しみではなく『恐怖』である。
恐怖は克服できるのだろうか。身一つで貢献できるなら、こんなにコスパが良いこともない。注射は嫌いだが、今まで血を見て倒れたり、気分が悪くなったことはない。
そうやって、行きたいけど行きたくない、とウダウダしていたところ、友人から「行こうぜ」とお誘いがあり、とうとう献血に行くことを決心したのである。
3.はじめてのけんけつルーム
献血ルーム
全国にある献血ルーム、写真だと「清潔で明るくて怖くないよ~」という場所ばかりだが、筆者が行ったところは実際に「清潔で明るくて怖くないよ~」という空間だった。
※例えば東京だと以下のリンクご参照
個人的な印象は、何か健康な人ばかりが居る綺麗な診療所の待合室。しかもカップドリンク自販機が複数置いてある。後は休憩できるように本もたくさんあった。
健康な人ばかりなので、あの病院独特な鬱屈としたような空気が無いのが良かった。良かったのだが、筆者はソコソコ緊張した。だって皆、血を抜かれるために居るのだ(自分も含めて)。摩訶不思議な空間ではないか。
献血の流れ
献血の流れについては、赤十字社のHP記載のそのままなので、まずはご一読いただきたい。
筆者が行った献血ルームでは、友人と一緒に来たお友達特典的な景品を貰えた。不安な人は友人を連れて行くと良いと思う。ちなみに、初めての人には初めての人と分かるように首から札が下げられた。
色々な質問等に答えて血圧を測る。この時の筆者の血圧の上が128、下は70くらいだった。普段より血圧は高く、ついでに心拍数も高く、オヤ、緊張しているな我、と思ったのである。
その後、お医者さんとの問答をして血液チェックで指先を針でぱちんとやられるのだが、その場所で献血スペースが目に入った。当り前なのかもしれないが、献血する人が座るであろう椅子がずらりと並んでいる。隣で献血している人が見えるやつだ。
「ワ、ワァ……」この時、筆者の内心はちいかわになった。
呼び出し
「飲み物たくさん飲んでくださいね」と言われて、なるほど献血ルームに飲み物がたくさんある理由はこれかと、遅まきながら認識をする。
倒れたりしたくはないので、カップ3杯は飲んでトイレにも行ったところで、献血しに来てください呼び出しが鳴った。大丈夫だろうと向かったが、結論は冒頭記載の通り、大丈夫ではなかった。
4.はじめての人間には何が「気分不良」か分からない
ようやく本noteの本題である。
筆者は並ぶ献血チェアに上り、右腕を差し出した。チェアには小型のテレビがついていて、なぜか将棋の羽生さんの対局が映されていた。渋い選局だ。
看護師さんがテキパキと準備をしすまして、ぶすりと針が腕に入るが、そこまで痛くはなかった。
筆者は針を入れられるところは見たくないので、ずっと羽生さんの対局を映すテレビを見ていた。羽生さんは劣勢だ。
400ml献血はそこから15分ほどで終わる。時計を見ると長針が3の位置だった。半まで15分。まぁ、問題ないだろうと思った。
右腕から血が抜ける不思議な感覚がする。そのあたりから、ちょっと気持ち悪くなった。
ちょっと気持ち悪いというのは、軽い自動車酔いのような、なんかそこまでひどくはないけど気持ち悪い、という感覚だ。献血するんだから、ちょっとくらい気持ち悪くなるものだろうと勝手に思っていたので、羽生さんの対局に集中することで忘れようとした。
だが、気持ち悪い。
これはちょっとじゃなく、結構気持ち悪いぞ?
看護師さんに言うべきか言わざるべきか、と考えてたらさらに吐き気が追加されて、酷くなった。
ここで、他の人の確認していた看護師さんが「大丈夫ーー」と振り向いて「じゃないですね」と即断してくれたので、よほど顔色が悪かったのだと思う。
献血は途中までで中止となった(抜けるところまでは抜いてもらった)。ここで、これが「気分が悪くなったら言ってくださいね〜」の水準だったと悟るのである。
5.気分不良からの回復
すぐにチェアの背もたれが、歯医者さんの治療の時のように後ろに倒れて、フラットな体勢になった。
その体勢になると、何と吐き気と気持ち悪さが消失していくではないか。足も上げてもらうと、さらに良くなった。人間の体は繊細だけどテキトーだ。
薄ぼんやりしてる間に血圧が取られて、101くらいだから大丈夫だね、という会話が聞こえた。先程記載の通り、献血前の血圧は128だったので、血を抜くだけでここまで血圧下がるのか〜と感心する。下の数値は覚えていない。
そのまましばらく安静にしていると、血圧が110くらいまで回復した。面白いくらいに体調が良くなった感じがしたので、これが「整う」ってやつなのかもしれない。
そういえば昔から伯母が「なんかそろそろ血を抜いて貰わないと」と言いながらイソイソ献血に行っていたが、もしかしたら「整って」いたのかもしれない。……などと、ずいぶんと適当なことを考えていた。
落ち着いた後にチェアから降ろされて、休憩スペースでさらにゆっくり時間を取った。だいぶ体調も戻っていたのだが、献血チェアに乗ってからまるまる1時間はかかった。献血に来るときは時間に余裕をもって来た方が、身体には良さそうだ。
6.献血は怖くない……と思う
そんなこんなで、初めての献血で色々と初体験をしてしまった。一緒に行った友人には心配をかけてしまって申し訳ないと思うが、貴重な体験だった。
気分不良はどうやら緊張していたことが要因であったようだ。個人的にはそこまで緊張しているつもりはなかったので、心は平気でも身体がダメだったというパターンと思われる。井の中の蛙、実は箱入りだったのかもしれない。自分は意外と繊細だったらしいと気付けた。
献血ルームの皆さんは最初から最後まで優しくて、こちらこそ今度は元気な血液パックになるね! という気分にさせてくれた。先の気分不良の時もテキパキと対応をしてくれて、処置に不安は感じなかった。
もちろん、具合が悪くなった時の対処や救済制度は整えられている。
人が手厚いぶん安心して受けられると感じたので、献血が気になってる方は一度チャレンジしてみてはいかがだろうか。筆者は注射は嫌いだが、献血は怖くないなという結論だ。またやってみようと思っている。
身一つでできる医療貢献、やる価値は間違いなくある。