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お世話になった愉快な院長

歯医者になって、初めて医療でお金を貰ったとき。

ひょんな縁で、研修医の頃から働かせてもらったところである。

院長は、とても愉快で、我が道を行く。だから、それが見ててとても気持ちいい。
自分の信念は曲げないのだ。優柔不断なんかありゃしない。


僕と、ほぼ同じくらいにして大学の同期がそこで一緒に働き始めた。

僕は国浪したので、卒業同期だけど、歯科医師歴は彼の方が1年先輩である。仮にR先生とでもしておこう。

同じ歯医者で働き始めて気づいたことがある。

R先生は、常勤先の医院が自費押せ押せの医院なのである。

とある関東地方の端っこの歯医者、99.99999%が保険診療のところ、見事R先生は素晴らしいコンサルで何百万も売り上げをあげた。

院長からしたらいい稼ぎ頭である。
もちろん、そんな人の売り上げからスタッフさんのお給料もでるわけで、自費はその場でチャージするから、見事にその場でその月の売り上げがとんでもないことになるのである。

院長はR先生を可愛がった。
褒め称える。
セミナーにも連れて行くし、ご飯にも連れて行く。
それは至極真っ当なことである。
なぜなら、売り上げが欲しいという院長の希望を十二分に満たしているからである。

対象的に
僕は肩書きもなければ、売り上げも上げないしがない保険医なのである。

保険医として思うところは、チリツモの算定漏れをどれだけ増やすか、
点数ではなく、コストのかからない処置をどれだけ増やせるかというのが肝で
その処置は長きに渡って処置していくと1年くらいで気づいたときには儲かっているという算段。

日々の10点30点を算定漏れせずに算定し、同じ800点の売り上げでも
セットで売上の800点は、材料費も技工料も込みであるから実質の売上は200点=2000円くらいのものだろうか。
それに比べるとP処置の患者さんは同じ800点のスケーリングでも出て行くコストは水とせいぜいポリッシングのペーストで100円くらい、つまり7900円が粗利になる。

保険診療というのは、売り上げの増点をするのではなく、支払いで医院から消えていくお金が減ることで、気づいたら売り上げ変わってないのに使えるお金がめっちゃ増えてるという、すごい貪欲で噛めば噛むほど味がでるスルメのようないやらしさとねちっこさ全開の診療である。

そして、その、結果をでるためには、医院の方向性が処置を減らし長期管理・重症化予防に努める必要があり、院長勤務医スタッフ含めみな同じ方向に進んでいかないといけないのである。
そして結果がでるのは1年とか3年とかそーゆー話なのである。


結果は漠然
もちろん、医院にさっと売り上げを、あげてくれるR先生を可愛がる。 隣の医療機関の親族の先生もR先生を可愛がる。


まぁ、それもまた至極当然のことである。

僕としてはなんだかな、と思うことだってあった。

僕は親族の先生じゃなくて、その院長に雇われたのだから、その先生と飯行くくらいなら院長と飯行きたいとか思ってたし。


スタッフさんから医院が狭いと言われたら、見通し良くするようにパーテーションとかも低くして開放感も出してみたり。でも、医院からお金はもらわなかったのよ。僕は売り上げあげない分、なにかできることはって思ったら、スタッフさんたちが快適に過ごせる空間作りをしてあげることに寧ろ普段売り上げあげてない分はこの分でなんとかやらせてくださいって感じ。
毎回スタッフさんに少ないけど差し入れしたり。
医院のお方付けもしたり。
結局スタッフの、ご機嫌取りをしないと、院長が、大変な思いをするから。
院長だけは楽しててほしいと思って。
まぁ、その頃R先生は寝っ転がってたけど。笑その辺もかわいくていいじゃない。愛らしい同期。


でも、金ってすごいもので。そんな9割保険だった地域で自費があがるようになると、院長も積極的に自費を入れるようになった。

患者に治療計画や口腔内写真を撮影し、ほんとにいいモノをすすめるようになった。

そこで感じた、
僕はここにいるべきではないと。
保険診療の肝はいかに処置を減らして行くかが大事であり、そこが保険医としての腕の見せ所である。

対して、自費診療というのは
「患者の為を思って歯医者をすること」である。
言い方悪いが僕は患者さんの金でおまんま食わせてもらってるし、おまんま食わせてくれない人はそーなってからおいで、と思うし。
いい歯医者ではなくいい保険医になりたいと思うようになっていた。
だから、いい歯医者として、患者様に誠心誠意いいモノをいい治療で、という医院の方針には合ってないと思い。大きな船を降りる決断をした。

まぁ、ここまで書いてなんなんですけど、普通に悔しいんですよ。

同期のR君はすごいかわいがられて羨ましいし、売り上げもあげるから当然なのだけど。

単に自分の生意気そうなキャラと力不足で売り上げもあげれなくて、医院に対する勤務医としての努めを果たせなかったことが単純に悔しくて申し訳ないんです。


今はいい勤務医がたくさんいるとのことなので、貴院の益々の発展をお祈りしています。

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