女子大生が考える戦争とAIの基礎(2)
このnoteは女子大生が考える戦争とAIの基礎(1)の続きである。
女子大生が考える戦争とAIの基礎(1)|大佐/Taisa (note.com)
このnoteでは各国のAI兵器に対する反応、それに基づくAIに対する法規制についての考えをつづる。次回大手AI兵器民間会社(a16zなど)について、そしてそれらに対する私の感想などを述べる。
また、LAWSとは自律型致死兵器システムである。
1.各国のAI兵器に対する反応
第一に元米空軍高官のローパー氏は世界中の国々はLAWSを使用する方向に動くだろうと述べている。
核の場合は非常に慎重な取り扱いが必要になるうえ、主体が国家であった。しかし、LAWSは訓練期間が短く、比較的安価で取り扱いやすいため、「LAWSの傘」は作られることがないだろう。また、核拡散防止条約の様にLAWSの拡散を阻止することは難しいだろう。というのも、「核の傘」は報復への恐れによって成り立っている。しかし、LAWSは使いやすく、だれがいつ、どこで使用してもおかしくない。また、主体が国家ではなく、民間事業会社である可能性もある。そのため、報復を恐れて攻撃しないということはめったにないと考えられる。
そのため、無秩序なAI兵器の開発が各国で進んでいる。
(1)アメリカ
グーグルの元最高経営責任者エリック・シュミットが率いる委員会は2021年AI兵器を禁止すべきでないという旨の文書を発表した。その理由としてはAIにより誤認の可能性が減ることがある。また、アメリカは積極的なAI兵器の開発や資金援助を行っている。アメリカ軍はAIが戦闘機を操縦する実験に成功し、「ドローン軍」の創設も検討している。また、アメリカではAIの最新兵器の展示会も行われている。
(2)ウクライナ
ウクライナはLAWSに関しては反対の姿勢をとっている。しかし、ウクライナはアメリカから数多くのAI兵器の提供を受けている。例えば、無人偵察機やスイッチブレード(自爆型無人兵器)がある。兵士の数でウクライナはロシアに劣っているため、無人兵器がウクライナ軍の主力兵器の一つとなっている。AI兵器をいかに有用に使うかがウクライナロシア戦争のカギとなるだろう。
しかし、ウクライナは、これらのAI技術を使用する際には、人間の介入や監督が必要であると主張している。
また、AI兵器開発する国々がウクライナで実験データ収集し、開発が加速していると述べている。
(3)ロシア
ロシアウクライナ戦争においてロシアもまた無人兵器を主力としている。
ロシアの国防相は2021年、AI搭載のロボット兵器を量産したと述べた。また、AI兵器を「明日の兵器」と表現している。アメリカや中国に人口の数や経済的に劣っているロシアが、国際世界での権威拡大のために今後もAI兵器開発やLAWS開発に注力する可能性は高いと筆者は考える。
(4)イスラエル
Elbit Systems(大手軍事用電子工学会社)がイスラエルに本居地を置くことからわかる通り、イスラエルはAI産業やAI系スタートアップに力を入れているAI先進国である。
現在は空爆目標の選定や戦時兵站の編成にAIを活用している。ガザ地区などでの戦闘においてもAI搭載のドローンなどが使用されてきた。
LAWS開発に関しても世界的リーダーである。背景にはイランとの核に対する緊張の高まりがあると考えられる。
2021年に開かれた特定通常兵器使用禁止制限条約(CCW)の会議でもロシアやイスラエルはLAWSを規制することに反対していた。
また、軍事領域における責任ある人工知能に関する第1回世界サミット(REAIM)において唯一イスラエルはAI兵器を懸念することに同意しなかった。
他にも中国、イギリス、フランス、韓国などがLAWS開発を進めているといわれている。
(5)日本
日本は2023年7月25日から始まる国連にAI兵器の開発には人間の意志の関与が不可欠であり、それに基づく国際的規則の必要性を求める文書を提出した。また、ドイツフランスなどは同様の考えを持っている。
日本は自衛隊の装備や運用において、人間の判断や責任を重視し、自律的な攻撃を行うAI兵器は認められないという立場をとっている。日本は国際社会でAI兵器の規制や禁止を求める動きにも参加しており、2019年にスイスで開かれた国際会議では、LAWSに関する指針の採択に賛成した。
LAWSが開発される前に、平和憲法を持つ国として動くべきなのか、それとも経済的トレンドに遅れないために動かないべきなのか、非常に悩ましい。
戦争責任の追及には人間の介在が必要という理由からブラジルやパキスタンを含むラテンアメリカや欧州がこの「殺人マシーン」を禁止することに賛成している。
(6)国連
グテーレス事務総長はAI兵器を禁止する法的拘束力ある枠組みについて各国に2026年までに交渉をまとめるよう求めた。
しかし、各国でAI兵器に対する考えに深い溝がある限り、国内で拘束力のある法律を制定しても、各国の兵力の差を助長するのみに過ぎない。
国際的な規範、倫理の共有、また国際的ルールが必要なのではないか。
また、国際的なAI管理のあり方を提言する委員会を年末までに召集する、安保理が危機感を持ってAI技術に取り組むことを強く求める、と述べている。しかし、AIの開発は日々すさまじい速度で進んであり、LAWSが完全開発されてからでは手遅れである。
2.LAWSへの法規制
特定通常兵器使用禁止制限条約(CCW)の会議など世界中でLAWSへの法規制について議論されている。
核も同様だが、一度技術が発展・普及した後に規制することは難しい。
技術が未発達なうちに法規制を作ることで、凄惨な事故や武器開発競争などを避けることができる。
次回は具体的な法規制の在り方についてから書いていきたい。
おまけ
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