何でか、この場面が好きである。第4回
僕のセンチメンタル・ローテーションのエース格。『LoveLetter』が右のエースだとすると、こちらは左腕のエースといったところか。
『LoveLetter』がキレのある変化球をコーナーに投げ分けて打たせてとるタイプだとすると、こちらは一見何でもないストーレートに見えて、手元で微妙に変化してゴロを打たせるタイプ。と、ここまで書いてどちらも野球と全く関係ないことに気付く。まあ、気にせず続けますが。
あまりネタバレはないように気を付けますが、一応見てない方はご注意を。
≪女子トイレ前のシーン≫
主人公のハン・ソッキュが、若くてキレイな駐車違反取締員のシム・ウナとデートをしている場面。遊園地で遊んだり走ったりした後、不意に訪れるこのカット、トイレに行っている彼女を待っている場面が、なぜだか印象深い。
女子のトイレは長い。だから一緒に行っても待たされるのは先に終わった男。
こんな誰しもが経験していることだけど、映画でワザワザ描かれているのは他ではあまり見かけない。
僕自身、デートしていて、一番デートしていることを実感できる時が、まさにこの瞬間だったりする。相手がいない時に一番相手を意識してしまうというのも変な話だが。
この作品、決して主人公の不幸に泣ける映画ではない。むしろ、不治の病による死を前にして訪れた、幸福に涙してしまう映画なのだ。
で、その最も幸福なシーンが、このトイレ待ちを挟んだデート場面。
最初に観てから何年も経つが、観るたびに涙の量が増えている気がする。そんな映画の、一番を選ぶならココ。ここが主人公の幸せの絶頂だと思うからである。