デザインとソーシャルイノベーション
今年度Xデザイン学校に通っていることは既に記載したとおりだが、そこでオススメのあった講演会に行ってみて、とても良かったので、数年後の自分のためにその記憶を留めておきたい。
仮想政府セミナー/STIG国際シンポジウム
初めて聞いた時、何?!むっちゃ怪しい名前やんと思ったことを覚えている。
イタリアのデザイン研究者で、ソーシャルイノベーションとサスティナビリティのためのデザインに関する第一人者であるEzio Manzini(エツィオ・マンズィーニ)氏の来日記念の講演である。
テーマに興味があったことに加え、ご本人と同じ空間に居れることは中々ないであろう&東大でセミナー、なんかカッコええやんというアホ丸出しの動機でいそいそと本郷まで出向いだ次第。
講演はとても素晴らしく、講演中に胸熱な気持ちになったことを覚えている。
講演/セミナーの構成は、公式のページを参照されたい。
https://www.iais.or.jp/seminars/20240514/vgseminar18/
資料や当日の様子は、後日公開されるようなのでそれも待ちたいが、例によって自分がどう聞こえたか、新しい気づきや学びを記録しておきたい。
印象にのこったこと
ソーシャルイノベーションをもたらすデザインーデジタル社会との共存
Ezio Manzini氏の基調講演である。
ソーシャルイノベーションという社会の仕組みを変革する様々な活動(公益性の高い公共の場での取り組みが多いような印象)の中で得た知見が紹介された。"社会"は様々なレイヤーで構成されることから、氏の述べる取り組みは、レイヤーを置き換えると、様々な場面で活用できるものだと感じた。
印象的だったキーワードやエピソードを書き残しておきたい。
Collaborationの場を設計し、人々をより受動的に動かしていくための戦略的な行動/意図を持った行動の重要性を訴えていたことが印象的だった。
また、人間の特性として、他者への"care"を疎かにしがちな点に言及しており、効率や効果の追求も重要だが、特にそれらが上手く行っているとき、他者をcareすることを疎かにしがちで、そこに割く時間の確保が大切であるとのことであった。
ソーシャルイノベーションが活発化している背景として、デジタル技術を始めとする技術的イノベーションの加速を挙げていた。
ただし、それも仕掛ける人の動機、関与する人の動機、取り巻く人々の動機を噛み合わせていく必要があり、上手く機能させ、広げていくためには政策的な取り組み(注)と、政治的な意思決定が必要となる。普段の仕事で苦労しているところとも重なる部分があり、印象に残ったことを覚えている。
注:仕組みを組織やコミュニティで実行可能なプランに落とし込むこと
日本での事例紹介① ~こどもがつくる地域社会~
鹿児島で保育園の運営や小学校の設立に携わる古川 理沙氏の講演。
親の下にいる間に、如何に自力で計画立てて行動できる力をつけるかに焦点を当てた教育を行っているとのこと。
集大成として園児が自分たちで行った遠足が想像以上で感動的だった。
家庭のサイズが小さくなり、子供時代の社会接点が狭まる中で、「どのように社会との接点を作るか」の点で子供達に経験の場を作る取り組みは、同世代の子供を持つ親として、目の奥が熱くなった。
廃校になった小学校を再び立ち上げる取り組みも始めたとのこと。
Socialな教育の機会を創ることで体験や協働の場が出来、それがその地域の文化や風土を繋いでいくとともに、これからの社会に必要なCollaborationを紡いでいく。
意図を持った人が、出来るところから少しづつ広げていっている印象的な話だった。
日本での事例紹介② ~サスティナブルな未来を地域で作る~
神奈川県座間市で廃棄物の資源循環サービスに取り組む小田急WOOMSの正木 弾氏の講演。
ゴミ集積場の収集状況をオンラインで可視化することで起きた、収集車のドライバーの行動変容が印象的なエピソードだった。
元来、ゴミは排出予想量をベースに、収集車の割り当てやルートを予め決めて収集を行うが、排出される量は時期によってまちまちで、予想は当たらない。
専用アプリを導入し、収集場の収集状況を可視化、すべての収集車で共有したところ、収集車同士の自発的な助け合いが起きたとのこと。
現場で働く人たちからも、仕事の質が変わったとの声が上がっているようだ。
Manzini氏の話にあった、他者へのcareが励起され、現場で働いている人たちの自発的な行動により、新たな価値が生まれていると感じた。
おわりに
講演に出向いた動機はなんとも・・・だったが、非常に感じることの大きい機会となった。
仕事でのお困りごととに取り組んでいく上でも、参考になる振る舞いや考え方があり、ヒントを得られたように思う。
身近な"社会"や人の"care"に繋げ、より良い社会を創っていくために、今できることから取り組みを進めていきたい。
一方で、そこまでcareできるのかという課題は依然として残るだろう。
サスティナブルな取組みとするためにも、そこに参加する人たちの自発性・自立性を促すような仕掛けをセットで必要だろうから、そこも考えていきたいところだ。
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