SkycloudSpring:OI Analyzer ver.1.2
0. はじめに
OI Analyzer とは
トレーダーの突っ込み売買や、いわゆるバケツリレー売買を検知することを目的にインジケーター「SkycloudSpring:OI Analyzer」を開発しました。Bitcoinなどの仮想通貨トレードの売買参考指標として活用できます。
当初、TradingViewにはOI(Open Interest)を表示させる機能がありませんでしたが、2022年頃になってBinance, Kraken, BitMEXなどの一部の取引所の一部の通貨(シンボル)でOI情報の表示が可能になりました。OI AnalyzerはTrading Viewで表示されるようになったOI情報を活用しています。
OIに関する日本語の情報は、2021年頃からだいぶ増えてきました。ただ、表面的に説明している程度のものが多く、中には明らかに間違っていると思われる解説も多いです。そのような状況もあってか、トレードの指標としてOIがなかなか普及しないのではと考えています。
OIを正しく読むことで、トレーダーの売買行動やその背景にある心理状況を手にとるように理解することができます。これをトレードの指標に使わないのはもったいないというのが私の考えです。
ただ、OI自体は片手落ちのデータでもあり、生データのままでトレードの売買指標に使うのは難易度が高いのも事実だと思います。そこで、OIの生のデータに少し手を加えて、トレードの参考指標として使い易くすることを目標として、この「OI Analyzer」を開発しました。
注意事項
本ノートには、OIをトレードに活用することを目的に開発した「SkycloudSpring:OI Analyzer ver.1.2」の解説とスクリプト(Pine Scriptのソースコード)を掲載しています。
ご利用にあたっては、下記の注意事項を守って頂くよう宜しくお願い致します。
1. OIとは
OIとは、「Open Interset(オープン・インタレスト)」の略で、日本語では「未決済建玉(みけっさいたてぎょく)」や「建玉(たてぎょく)」と言います。取引所によっては、OV: Open Value(オープン・バリュー)と呼ぶ場合もあります。Open InterestとOpen Valueの違いについては、「OV = OI / Price」のような定義で使い分けるのが一般的のようです。
Open Interest は、証拠金取引での決済されていない(つまり、アクティブな)デリバティブ契約の総数のことになります。つまり、証拠金取引で建てられたポジションの総数がどのくらいあるのかを示す指標になります。
OIの増減を見れば、価格の変動が新規ポジションによる値動きなのか、ポジションの決済による値動きなのかをある程度予測することができます
OIをどのようにトレードに活用するのかについては、以下のnoteで基本的なところから詳しく解説しているので参考にしてみてください。
2. OI Analyzerの仕組み
OIの欠点
OIの欠点は、様々な売買が混ざってしまっていることです。OIと売買の関係を整理すると下記になりますが、色々な売買が交錯しているため、出来高と増減したOIの数が合わないことがほとんどです。
例えば以下のチャートを見て下さい。OIが急激に増加してます。この時に増加したOIは213.2BTCです。一方で出来高を見てみると、705BTCで数が合いません。残りの491.8はどこに行ってしまったのでしょうか?
この時にOIが急増したのと同時に、OIが減少するもしくはOIが変化しないような組み合わせの売買もそれなりに行われていることになります。213.2BTCの新規ポジションが構築されましたが、同時に491.8BTCに相当する売買も行われています。すなわち、OIを急増させるような213.2BTC相当の新規ポジションを構築する売買以外にも、同時にOIが減少もしくは変化しないような491.8BTC相当の決済(ポジション解消)の売買も行われていることを認識する必要があります。
OI Analyzer の表示データ
・バーの上下
OI Analyzerの仕組みはシンプルです。以下のようにOIが増加した際には上に、現象した際には下にバーが表示されます。
・バーの色
色はデフォルトでは緑と赤の二色です。価格が上昇した(つまり成行買いが支配的だった)場合には緑、下落した(つまり成行売りが支配的だった)場合にはバーが赤色で表示されます。
・バーの透明度
バーの透明度が変化しますが、これは出来高に占めるOIの変動量の割合が高いほど濃く表示されます。透明なほど出来高に占めるOIの変動量の割合が小さいことになり、その場合は、OIが変化しない売買の組み合わせ(例えば、新規の買いと買いポジションを解消するための売りなどの売買)が同時に相当数あることになります。
上記2つの例を比較すると、上側は出来高に占めるOI変動量の割合が約31.9%で、下側が約17.3%になります。よって、上側のバーの方が濃くなっています。
・累積表示
OIの変動量の累積表示も可能です。累積期間は設定画面で調整できます。デフォルトでは期間60(足60本分)が設定されています。累積表示は設定画面で非表示にすることも可能です。OI Analyzerは基本的には1分足や5分足など短期的な傾向を掴むこと際に効果的ですが、累積表示を活用することで中長期的な相場の判断にも活用することも可能です。
①成行買いが支配的な状況(価格上昇局面)でOIが増加した売買取引量の累積量
②成行売りが支配的な状況(価格下落局面)でOIが増加した売買取引量の累積量
③成行買いが支配的な状況(価格上昇局面)でOIが減少した売買取引量の累積量
④成行売りが支配的な状況(価格下落局面)でOIが減少した売買取引量の累積量
複数表示
複数のシンボル(取引所:通貨)のOIデータを表示させることが可能です。
2023年4月16日現在では、Binance、Kraken、BitMEXのPerpetual Contaract(コインマージンとUSDTマージン)シンボルがOIデータに対応しており、これらを同時に表示させることも可能です。BTC以外のETH、XRP、
複数の取引所のOIの挙動を同時にモニターすることで、売買判断の幅を広げることができます。
3. OI Analyzerから読み取れるもの
OIと価格と売買出来高のそれぞれの挙動を見ることで、相場環境を読み取るヒントを得ることができます。具体的には以下のようケースに分類できます。OI Analyzerは、このようなそれぞれの状況を可視化することで見分けることが容易になります。
※相場環境にもよるので一概にこうだとは言えません。こういう傾向があるというように参考にしてください。
4. 活用事例
活用事例を紹介します。(少しずつ事例は追加していきたいと思います。いいねたくさんして頂けるとモチベーションが上がりますので、どうぞよろしくお願いします)
基本的には1分足や5分足で使うのをお勧めします。長期足では、相殺される売買の割合が多くなってしまい、指標としてのノイズが多くなってしまうからです。
清算が入ってからツッコミ売りをして、下げ切らずに上昇していくケース。
見れば比較的容易に理解できるチャートかと思います。チャート左側の黒丸付近で価格が下落(成行売りが支配的な状況)しながらOIが大きく減少しています。これはおそらく清算かストップロスが入って成行売りが誘発されたと考えられます。
その後、青丸付近で価格が下がりますがOIは増加しています。つまり、これは底値付近で成行売りで突っ込んでしまったことがわかります。その後、底値が硬いことから売りが続かず下げ渋り、結果反発して上昇していきます。
その後、上昇は続かずダラダラと価格が下がってきますが、チャート右側の黒丸付近で価格が急に下落(この時は下髭をつけています)します。この時もOIは大きく減少していますので、清算かストップロスが入って成行売りが誘発されたと考えられます。
その後、青丸付近で再度底値を試しますが、この時はOIが増加しながらですので、ツッコミ売り(新規の成行売り)が入ったと考えられます。先ほどと同様に売りが続かずに反発して、その後は大きく上昇していくことになります。
このように、OI Analyzerを活用することで、価格変動の裏側でどのような売買行動が行われているかが、比較的容易に把握できるようになります。トレーダー達の心理状況も想像でき、いわゆる相場環境を理解しでトレードができるようになるのではないでしょうか。
この事例は、以下のツイートが参考になると思います。
底値圏で売りが続かずに反転上昇していくケース
レンジ相場の底値圏で新規の成行売りが入ったのが赤丸付近です。その後売りが続かないと、ショートカバーを誘発しながら価格は上昇していく傾向があります。累積表示機能を活用すると判断しやすくなります。
価格の急上昇の最終局面
価格の急上昇の最終局面を判断する際にもOI Analyzerを活用することができます。価格が急上昇した後に新規の成行買いが入ったのが赤丸付近です。新規の成行買いが継続的に続きますが、頭が重く出来高も減少して買いが続かない状況です。これがしばらく続くと価格がダラダラと落ち始めて大きく落ちるという傾向があります。累積表示機能を活用すると判断しやすくなります。
OI Analyzerの活用事例は、随時Twitterでも紹介していきます。
https://twitter.com/hashtag/OI_Analyzer?src=hashtag_click&f=live
5. Pine Script
本章では、「SkycloudSpring:OI Analyzer」のスクリプト(Pine Scriptのソースコード)を公開します。
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