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ユーリオンアイスについてベラベラ述べる1

 2016年、10月。高校生の私は、ありえないほど人数が少なく、陰険な女ばかりが集まったミッションスクールの四角い教室の中で、毎日ため息をついて二酸化炭素を吐き散らす平々凡々な生活をしていた。が、その当時私には学友がいて、彼女は隣のクラスだった。よく教科書を忘れ、彼女から教科書を借りた。貸すより圧倒的に借りる方が多かった。その友人は今看護師で、きっと力強く働いているのだと思う。私は、合わせる顔やタイミングがないままこんなに大きくなってしまって、いつ彼女に笑顔で会えるだろうかと考えたりもする。きっと無理矢理にでも会おうと思えば会えるのに、どうしてか会えない。
 けれど、彼女が高校にいなかったら、きっと私はもっと陰鬱なティーンになっていたと思う。感謝しかない。あの9人しかいない最悪のクラスの壁一枚向こうに、あの子がいる。その事実と恩恵で、私はどうにかあの頃を生きていた。
 その子と見ていたアニメ、それがユーリオンアイスである。一緒にコラボのスイーツパラダイスにも行った。オタクらしいオタクコラボに行ったのは多分それが初めてだった気がする。楽しかった。
 このアニメは、そういう意味でも私にとって特別な作品だが、なぜか、今でもラジオのように聞いてしまう。構成が上手いし、アニメの旨味もでかい、メディアとしてアニメを選択し、MAPPAを起用し、諏訪部順一と内山昂輝と豊永利行をキャスティングしたこと全てが噛み合っていたし、テレ朝の枠だからこそできた準備素材の多さによる内容の充実もこのアニメの完成度に一役買っている。何回聞いても飽きない。全部知っているのに、なんでか繰り返して見てしまう。ハローキティの一緒にお風呂、とハリーポッター以外に私が繰り返して流し続けるコンテンツができるとは。驚きである。
 そして、何よりテーマが好きなんだと思う。愛について。だから。構図を限定しない愛の物語に私は弱い。兎にも角にも、好きなのだ、このアニメが。でも、単に好きだ好きだと言ってるのもなんだか気持ち悪い。だから今この時点でこの作品を見た感想を、きちんとフリーズドライにしたいと思い今回筆を取った。いつだって、私が文字を放つのは、自己保存のためなのである。

あらすじ

日本中の期待を背負って挑んだグランプリファイナルで惨敗…「現役続行と引退はハーフ ハーフ」そんな気持ちで実家に引きこもっていた崖っぷちスケーター勝生勇利。ひょんなことから世界選手権5連覇のヴィクトル・ニキフォロフに興味を持たれ… 

アニメユーリオンアイス公式サイト STORY より

第1滑走 なんのピロシキ!グランプリファイナル! 

 ソチで行われたグランプリファイナル。試合が終わり、実況アナウンサーが試合を振り返る。今大会を驚異的な強さで圧倒したレジェンド、ヴィクトルニキフォロフ!27歳で引退も心配されると仕事の彼だが、メダルを下げて颯爽とリンクへ上がる。一方で、日本から出場していた主人公勝生勇利(かつきゆうり)は最下位。メンタルの弱さが敗因か____と、今季での引退を噂するネット記事を他人事のように眺めていた。

 冒頭の自己紹介で「僕の名前は勝生勇利!どこにでもいる日本のフィギュアスケート強化選手で23歳!」とポップに名乗っているが、これは当時宇野昌磨となんら遜色ない経歴であったため、どこにでもいるは嘘だろ、とオタクたちが騒いでいたのが懐かしい。
 けれど、勇利の美点(時に欠点にもなるが)はこの自分が「普通」だと思っているところ。国内大会を勝ち抜き、世界レベルで戦い、その上グランプリファイナルにまで残るとなると全国ネットで特集を組まれてもおかしくない。ただ、勇利からはスター性やアスリート性などは微塵も感じられない。
 ただひたすら、そこに行き着くため、練習拠点をデトロイトに移してまで本気で挑んだ勇利。そのグランプリファイナルは、憧れのレジェンド、ヴィクトルと肩を並べられる、夢の集大成のような場所であったが・・・・。

 「プレッシャーで試合前にやけ食いしたり、実家の犬が亡くなったり、メンタルもフィジカルも最悪!」

だったらしい。落ち込んでいるとも取れないあっけらかんとした様子でニュース記事を読み、化粧室へ入る勇利は内心こう付け足す。

「まあ、全部自分のせいなんだけど」

【勇利は強い】
 この発言から、一話が始まって3分ばかりだが、有り有りとわかる。彼は強い。
勇利は確かに、どこにでもいる23歳のフィギュアスケート強化指定選手なのかもしれない。メンタルが弱く、今季で引退を噂されるような、冴えないグランプリファイナル最下位の選手なのかもしれない。けれど、そこまで辿り着き、この結果を引っ張ってきてしまったことに対して、「全部自分のせい」と言える彼は強い。私なら、愛犬が死んでしまった、ということを全部外的要因として位置付けて、自分の失敗の片棒を担がせてしまう気がする。高校生当時は「ストイックだなー」くらいにしか思っていなかったが 、20歳くらいになって見返してた時、これは勇利の強さであると気がついた。

そして、勇利はトイレの個室から、九州の母親に電話をかける。母さん、寝とった?と。しかし、実家ではパブリックビューイングが開催されていた様子。「やめてさ!恥ずかしか〜」と赤面し、へらっと笑う勇利だが、すぐさまそれは涙へ変わって

「ごめん、だめやった。」

と一言。すぐに電話を切って、込み上げる嗚咽を必死に殺して、大粒の涙を流す。

きっと、お金も労力もかかるフィギュアスケートの世界へ挑む自分を散々応援してもらってたどり着いた先で見せるのが、「ボロボロになって最下位」という姿だったことに、罪悪感ややるせなさを抱いているのかもしれない。悔しかったり、申し訳なかったり、決して一つつかんで取り出すことのできない感情が去来して、もう何も言えることがない。そんな様子だろうか。

 メガネをかけた勇利の大泣き、レンズに涙がボタボタ溜まっている。と、そのドアに________容赦ない、蹴りの一撃。

 驚いた勇利が個室の外に出ると。

「オイ、来年から俺がシニアに上がるから、ユーリは2人もいらない。才能ないやつはさっさと引退しろ、バアアアァカ!」

と眼前で噛み付くようなに罵声を浴びせられる。その相手は、ジュニア部門で優勝したロシアの天才スケーター、ユーリ・プリセツキーである。金髪に白い肌、緑の瞳が荒々しく勇利を睨む。とても威勢のいいロシアンヤンキーの登場に、勇利はタジタジである。才能ある若い世代に凄まれた勇利。会場を去る間際、今後の進退を問われるも、今は何も考えたくないと窓の外を見つめて、愛犬の死に際に立ち会えなかった寂しさに目を潤ませる。そこに飛び込む「ユウリ!」という名前、ハッとして声の方を振り向くが、それは勇利を呼んでいたのではなく、ロシアの「ユーリ」を呼ぶヴィクトルの声だった。ずっと憧れてきた存在が、すぐそこにいる。勇利がヴィクトルを眺めていると、その視線に気がついたヴィクトルはこういった

「記念写真?いいよ。」

なんとも残酷な一言だ。自分はスターで、相手は取るに足らない。まるで、自分と写真を撮るのが「記念」になるような、表彰台以上に段差のある存在だとでもいうような。ヴィクトルという強者の存在が際立つ。勇利は、実際、絶望した顔をして、大きなキャリー片手に俯いてその場を去ってしまうのだった。

恥ずかしい。ずっと憧れていた人と、やっと対等な立場で会えるって少しでも思っていた自分がバカだった。

これはきつい。ここでタイトルコール。

 その後、九州の地元の長谷津に帰る勇利。グランプリファイナル終了後、すべての大会でボロ負けして、世界選手権にも選抜されず、コーチとも関係は解消。進退はすべて保留にして、ユートピア勝生、という温泉を運営する実家に5年ぶりの帰省だ。ずっとバレエのコーチングをしてきたミナコ先生と実家に戻った勇利だが、そこでミナコから「勇利アンタ太った?スケーターにあるまじき太り方!」と仰天される。体型もメンタルも、今はスケートから遠のいているらしい。
 その温泉旅館のTVにはフィギュアの世界選手権の中継。第1滑走ヴィクトルニキフォロフの練習シーンが映される。お風呂上がりにそれを目撃する勇利。途端に実家を飛び出して向かったのは、昔から使っていたスケートリンク。幼馴染でありリンクメイトのゆうちゃんが切り盛りするスケート場に駆け込むと「久しぶり」と気まずそうに勇利ははにかむ。

ゆうちゃんは、二つ年上のリンクメイト。子供の頃は、めっちゃスケートが上手くて、僕にとって憧れの人だった。

【勇利は憧れがおわる時を知っている】
 これは視聴当時からの感想だが、今でも思う。「《子供の頃》は、めっちゃスケートがうまくて。僕にとって憧れの人⦅だった⦆。」この発言、結構残酷じゃないかと。その後の回想でもわかるのだが、勇利はゆうちゃんとの友情を築いて、その中でヴィクトルという憧れに出会う。2人でヴィクトルの真似をして、ヴィクトルを追いかけてスケートをする日々。「ヴィクトル、プードルを買い始めたんだって。」と愛らしい犬を羨むゆうちゃん。後日勇利は、ヴィクトルが買い始めたプードルとそっくりな「トイプードル」を飼えることになり、「ヴィクトル」と名づける。「いいなあ、勇利くんは本当にヴィクトルが好きなんだね」「勇利くんとヴィクトルが戦ってるとこ早く見たいなあ」と笑うゆうちゃん。スケートがうまかったのも、氷上で勇利を守ってくれていたのも、過去のこと。きっとスケートの神様に選ばれたのは自分の方だと、当時の勇利は気づいていないのだろうか。無邪気にプードルを撫でる勇利の横で、にっこり笑う彼女は、制服姿にほぼ手ぶらであり、スケートに選ばれていないのも、勇利のように憧れだけでポイっと犬を飼ってもらえないのも、残酷な差であるが、この頃の勇利はまだそれに無自覚だ。もしかしたら、ゆうちゃんは女の子であり、男の子よりもスケートを諦める「タイミング」が早くにきてしまったのかもしれないとうっすら思う。氷から降りたゆうちゃん、それは静かで残酷な、勇利の憧れの終わり。

 回想が終わり、勇利はいう。

ゆうちゃんに見て欲しくて。試合が終わってからずっと練習してたんだ。見てて。

生中継のテレビの中、颯爽とヴィクトルが現れる。それと同時に、長谷津の勇利も氷上へ。かつての憧れに、今の憧れを重ねて見せる。そう、勇利はゆうちゃんへ、今季のヴィクトルのプログラムを完全再現して踊り始めたのだ。大勢の観客の前で、拍手と注目を浴びて踊るヴィクトル。その一方で、勇利は重たくなった体をものともせずに踊り出す。誰もいない、静かなリンクで、たった1人、ゆうちゃんのために。曲は「離れずにそばにいて」。
 くっそかっこよか!!!ヴィクトルの完コピヤバいよ!!てっきり落ち込んでるのかと思ってた!
演技終了するやいなや、興奮してリンクの壁の縁をバシバシするゆうちゃん。それに勇利はこう答える。

うん、でも落ち込んでるのにも飽きちゃってさ。ずっと考えてたんだ、スケート好きな気持ち、取り戻したくて。ゆうちゃんとヴィクトルの真似して滑ってた頃想い出せるかなって・・・。ゆうちゃん、僕、ずっと・・・ゆうちゃんのこと・・!

ジーーーーーッ!そうまごつく勇利を見つめる3人の子供。アクセル、ルッツ、ループと名前がつけられた三姉妹。なんともアニメらしいが、常にデフォルメで描かれるキャラクター像と相まってとても良いコメディのバランスが取れている。
ゆうちゃんは、母になっていた。そしてその相手は、勇利をかつていじめていた西郡。「しばらく見ない間に、大きくなったでしょう」というゆうちゃん。つまり、勇利はゆうちゃんが西郡と結婚し、三つ子を産んだことを知っているということになる。長谷津を離れてた5年よりも前に、生まれたばかりの三つ子にあっていることも窺える。それでも「僕・・・ずっと・・・・ゆうちゃんのこと」
なんだったの?!ゆうちゃんのことが何?!好き、とは流石に言えないでしょうに!!!!と気になってたまらないのである。が、
 なんと勇利のヴィクトル完コピ動画はミーハーな三つ子によって撮影されており、ネットにアップされていた________!各方面で話題になる動画、押し寄せる連絡に疲れてスマホの電源を落として眠る勇利。その翌日、雪かきのために外に出るとヴィクトルの愛犬にそっくりなプードルが飛びかかってきて、勇利の父はこう言った「ヴィっちゃん(亡き愛犬)にそっくりやろう。さっき、かっこよか外人のお客さんが連れてきたとばい!今、温泉入っとらす。」
 その言葉に疑いと確信を半々抱いた勇利は、浴場へと向かう!露天風呂にいたのは、憧れのヴィクトル・ニキフォロフ。

ゆーり!今日から俺はお前のコーチになる。そして、グランプリファイナルで優勝させるぞ!

全裸で、シャララララと効果音付きで、絶妙なものの配置に股間を隠されながらかっこよく立ち上がるヴィクトル。勇利も我々視聴者も?!?!?!?!?!?!となって第1滑走、終話。である。

第1滑走 感想
 
挫折から始まる物語として、構成が出来すぎてる。豊永利行のナチュラルな演技と、ヴィクトルの堂々と、にぎやかでアニメ映えする存在に、諏訪部順一が彩りを添える。そこに若々しくエッジの聞いたユーリの噛み付くようなエネルギーを内山昂輝が持ち込む。とにかく、具体とデフォルメ、質感のバランスが良い。
勇利の弱そうで強くて、スポーツアスリートらしい覚悟の持ち方と、らしさを裏切るナイーブな部分。ヴィクトルの、圧倒的で絶対的で煌めき溢れるスター性。ユーリの怖いもの知らずで、才能に恵まれ、努力にしがみつく美しさ。キャラクターの構成も好きだ。勇利の人生が始まる。こっからどうなる。予感が、うっすら長谷津の季節外れの雪のように降り積もる。二話が楽しみになるが、たった一話の感想を書くだけで、4000字を使っているので、12話分すべて完走することを目指し、自分のペースで書いていきたい。
 終わる頃、なぜ自分がこんなにこのアニメを気に入って接しているのかわかれば御の字だ。

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和 さやか
その100円で私が何買うかな、って想像するだけで入眠効率良くなると思うのでオススメです。