街
電車がターミナル駅のホームに差しかかる。
見下ろす町並みが、どこか懐かしい。
けれど、生まれ育った場所とは全く違う場所だ。それでも感じるこの哀愁はなんだろうか。
毎日川を渡る。むこうにこの街のランドマークが見える。
朝陽が電車に差し込む。今日は一日晴れるらしいことをニュースで言っていたことを思い出す。
この街に越してきてだいぶ月日が経った。
まだ慣れないことも、前の街への羨望も消えない。けれど少しずつこの街の暮らしに慣れ、また少しずつ気に入ってきているのも事実だ。
前の街から都心へ向かう時も川を渡っていたことを思い出す。
橋から見下ろす景色は違えど何と無くつながっているような気がした。
私はこの街に住み続けるのだろうか。
いまだに捨てきれない前の街への気持ちを抱えながら。
中学校入学から高校卒業までは寮で生活をしていて、その後長く住んだ街でも3年ほどだった。
どうも私には定住するという感覚が希薄だ。
今の街が私が骨を埋める土地になるんだろうか。
ずっと、彷徨ってる。
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