公の場で小さな子供を執拗に叱りつける。心配なのは子供か?親か?
「ギュって持ったらダメって言ったじゃん!!!」
とある休日。
商業施設で買い物をしていた時の事。
猛烈な怒りを抱えた叫び声が耳に飛び込んできた。
チラリと声の先を見ると、ショップの前の通路にバギーに乗った2歳位の男の子と母親がいた。
「ギュッて持っちゃダメって言わなかったっけ?」
「言った」
「今言ったばかりなのに、何でギュって持つの??」
どうやら、紙パックのジュースを手渡したら「ギュっ」と握ってしまいジュースがこぼれた様だ。
「もうジュースなしだよ!!」
「飲みたぁぁい」
小さな男の子はとても悲しそうに泣いている。
私は切なくなってきた。
それでもママの怒りは落ち着かないようで
「ねぇ、何ていうの?泣いてるんじゃないよ。ごめんは?」
「ごめんなさぁい」
謝りながらも泣き続ける男の子。
「ギュって持ったらダメって言ったじゃん。何でギュって持つの?ねぇ何で??」
いやいや、答えられないやろ。
号泣してるやん。
↑心の声が思わず関西弁になる
「自分で拭きなさいよ!」
そう言ってママはティッシュを手渡し、男の子が拭いたティッシュを入れる為に懐かしいピンクの袋を準備していた。
延々と泣き続ける小さな男の子。
私はその場にいるのが辛くなってきて、売り場を離れた。
理由を聞かれても…
偶然見かけたママの怒り方は、ちょっと懐かしかった。
私の母親の怒り方に少し似ていた。
私も小学生位の頃に、食卓でふいに味噌汁をこぼした事がある。
その時、母親は私に向かって何度も「なんでこぼれるの?教えてよ?」と怒りながら聞いてきた。
「なんで?」と言われても、手がぶつかったからだし。
手がぶつかった理由を聞かれても、咄嗟の事で原因は不明だ。
まぁ、小学生のくせにぶつかるなよ!だし。
今思えば、「ぶつからないように置き場所を工夫したり、気をつけて食事をしよう」という教訓に持ち込みたかったのかもしれないけれど…。
「何で?」と怒りながら聞かれても、返答に困る。
そこにはもう「心理的安全性」がないので言葉が出てこないのだ。
ましてや、あの日見かけた男の子なんて2歳位である。
「ギュッて持たない」と分かっていても、言葉と行動が一致させる事が難しい年齢だ。
更には、多くの子育て本で書かれているように否定形の言葉は脳に伝わりにくい。
「走らないで!」ではなく「歩こうね」
「騒がない!」ではなく「アリさんの声」
の様に「望ましい状態」のメッセージを送らないといけない。
あの男の子の場合なら「そーっと持とうね」等だ。
そうは言っても、親も完璧ではないので常に良い声かけをする事は難しい。
だけど、効果的な方法を少しでも知っていたら平和でいられると思うのだ。
心配なのはどっち?
ママの怒りがいつまでも収まらなかったので、私は男の子のメンタルが心配になった。
物凄く委縮している様に見えたのだ。
だけど、あまりにもママがしつこく責め続けている。
結構大声だたので、店内にいた人も通路を歩く人もジロジロと親子を見ていた。
それでも責めて怒り続けるママを見て、今度はママが心配になってきた。
あのBOSSの袋やティッシュがすぐに出てくる位なので、色々な場面を想定できる「しっかりしたママ」なのだと思う。
だけど、あの怒り方はちょっと普通ではなかった。
「怒りすぎ」
「虐待では?」
そうやって親を責める事は簡単。
だけど、たかだか2歳位の子をあそこまでしつこく怒り続けるのは「ママのメンタルがかなり限界なのでは?」と推測してしまう。
誰だって生まれた時は純粋だ。
だけど、家庭環境が凄く複雑だったのかもしれない。
「親から受けた躾」がかなり厳しいものだったのかもしれない。
ワンオペ育児でストレスの限界なのかもしれない。
シングルマザーで物凄く孤独な子育てをしているのかもしれない。
流石に、偶然見かけた「通りすがりの人」である私が「何か大変な事があるのですか?」と突然話しかけるのは無理がある。
だけどもし、自分が日常的に接する人の中に「限界っぽい人」を見かけたら何ができるだろう?
以前記事にも書いたけど、子供への虐待は深刻な問題らしい。
日本は「子供は親のモノ」「家庭に口出しできない」という風潮があり、よっぽどの外傷等がない限り口を挟めないらしい。
対して「子供は社会のもの」という考えが浸透していて、外傷がなくても虐待と思われる言動や行動が見えたら家庭に介入して親子を引きはがすという国もある(どこか忘れてしまった💦)。
勿論、産んだのは母親。
子供を育てているのは両親。
だけど、親だけで抱え込む事によって子供が犠牲になるのは辛い。
例え「虐待死」に至らなかったとしても「心の傷」を追ってしまった子は沢山いるのかもしれない。
もしも私が80歳位のお婆ちゃんだったら。
あの親子に「あらまぁ元気ねぇ。次はそーっと持ってみよう」と言いながらジュースの1本も差し出したかった。
お婆ちゃんじゃなくてもやれよ!って感じもするけど。
同じ子育て世帯の人がやるよりも、顔がシワシワな「人生の先輩」がニッコリ笑いながら声をかけてくれた方が、親もリラックスできるような気がする。
そして「なんくるないさー」と言って欲しい。
うん。
やっぱりさ、「沢山の大人の目」と「声かけ」って大事だよ。
そして世代間対立ではなく、お互いに助け合っていけたら良いよね。
荷物を持つのが大変そうなお年寄りに話しかけるとか。
子供が泣き止まなくて困ってるママに、お婆ちゃんが構ってくれるとか。
そういう「温かい社会」が、一番の情操教育じゃない?
そんな事を思った休日だった。
今日も有難うございました。