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経済評論家の父から息子への手紙 お金と人生と幸せについて

本書は、経済評論家である山崎元氏が、大学入学を控えた息子への手紙を基に、現代の若者に向けた働き方お金の増やし方、そして幸せな生き方について指南する内容です。 従来の「安定志向」の働き方では不利であることを指摘し、株式報酬獲得やベンチャーへの参加など、リスクを取った効率的な働き方を推奨しています。 同時に、全世界株式インデックスファンドへの投資など、シンプルで効果的な資産運用方法も提示し、お金と幸福の関係性についても独自の視点から考察しています。 全体を通して、読者に「工夫」と「適度なリスク」の重要性を訴え、機嫌よく生きることの大切さを説いています。

働き方・稼ぎ方

昭和生まれの働き方常識

昭和生まれの働き方の常識は、「安定した職を得て、出世して、労働を高くかつ長く売る」ことでした。典型的な良い就職先は、大企業や国家公務員で、医師や弁護士のような高時間単価で「食いっぱぐれがない」職業も良しとされました。

サラリーマンの場合、「できるだけ大手の安定した会社に入り」、「失敗を避けながら人事評価上の競争を勝ち抜いて」、「なるべく偉くなること」が目指すべき職業人生でした。部長や役員などの最終ポストが上がると年収が増え、退職金や退職後の待遇でも差がつきました。

しかし、古い働き方では、大いに不自由な職業人生を送り、小さな確率で成功するものの、成功しても大金持ちにはなれません。

・一つの組織に居続けると、人事評価の重要性が増し、失点すると一生尾を引く可能性があった。
・人事は基本的に好き嫌いで決まり、評定者の言いなりになることが求められた。
・出世して自分の労働時間の単価を上げて、長く勤めて、より大きなお金を手にしようとしたが、時間売りのビジネスモデルであることに変わりはない。
・大企業役員、医師、弁護士のような職業の成功者でも、せいぜい数億円単位程度の資産を持つ「中金持ち」になるに過ぎない。

新しい働き方

新しい働き方では、効率性自由を重視します。

① 効率性
従来の「時間売りの働き方」では、稼ぎに限界があります。新しい働き方では、時間ではなく成果に重点を置き、なるべく若い時点で効率良く財産を築くことを目指します。具体的には、起業、ベンチャー企業への参加、ストックオプションを付与する企業への就職、起業への出資など、株式性の報酬を得る方法を推奨しています。

自由
従来の働き方では、会社に縛られ、自由な時間が限られていました。新しい働き方では、働き方の自由度を高め、自分の時間やスキルをより自由に活用することを目指します。

新しい働き方を実践するために必要なマインドセットは以下の2点です。
・常に適度なリスクを取ること
・他人と異なることを恐れずにむしろそのために工夫をすること

お金の増やし方

  • お金を効率良く増やすには、次のようにするといい。 (1)生活費の3~6カ月分を銀行の普通預金に取り分ける。残りを「運用資金」とする (2)運用資金は全額「全世界株式のインデックスファンド」に投資する。

  • アクティブファンドは手数料が高く、市場平均に勝つことは困難なため、推奨しない。

資本主義経済の仕組み

資本主義経済は、リスクを回避する者から、リスクを取る者が利益を得る構造になっていることを理解することが重要です。

資本主義経済では、生産活動には「資本」「労働」が必要となります。

労働者の中には、安定を求めてリスクを回避し、比較的低い賃金で満足する「労働者タイプA」が存在します。一方、起業家や投資家といったリスクを取る者は、資本を提供することで、企業の成長や利益獲得を目指します。そして、経済が成長し、企業が利益を上げると、その利益は資本家へと分配されます。

つまり、リスクを回避する労働者が創出した価値の一部が、リスクを取る資本家へと流れる仕組みになっているのです。

さらに、近年では、高い専門性や希少なスキルを持つ「労働者タイプB」が出現しています。 彼らは、株式報酬などの形で、従来は資本家が得ていた利益の一部を、労働者側へと引き寄せています。

このように、資本主義経済は、リスクに対する考え方によって、富の分配構造が変化していくダイナミックなシステムと言えるでしょう。

キャリアについて

  • 最初の仕事選びにおいては、「興味が持てて」、「倫理観に反しない」ことを重視。

  • 転職は、人材価値を高め、活かすための有効な手段として積極的に活用すべき。「転職していい理由は3つ ①仕事を覚えるための転職 ②仕事の能力を活かすための転職 ③ライフスタイルを変えるための転職」

  • 副業は、収入源の多角化だけでなく、新たなスキルや人脈を築く機会となる。「小さくても副業のチャンスは逃がすな」

小さな幸福論

  • 幸福の決定要素は「自己承認感

  • 「モテ」は幸福度に大きく影響する。モテるためには、相手の話を熱心に聞くことが重要。

  • 人生は通算成績で評価されるものではない。日々の小さな喜びを積み重ね、上機嫌で生きることが大切。

本書は、著者の個人的な経験と深い洞察に基づいた、具体的かつ実践的なアドバイスが満載です。 若い世代だけでなく、あらゆる世代の人々が、お金、仕事、人生、幸福について考えるヒントを得ることができるでしょう。


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