
JUST KEEP BUYING 自動的に富が増え続ける「お金」と「時間」の法則
本書は、著者が自身の経験とデータ分析に基づき、賢くお金を貯め、富を築くための戦略を提示した個人向け投資指南書です。 継続的な投資の重要性、節約と投資のバランス、負債の有効活用、適切な資産配分、そして時間と資産の価値について解説しています。
Just Keep Buying哲学
これは、ドルコスト平均法をベースに、収入を生み出す多様な資産を継続的に購入するという考え方です。重要なのは、いつ、どれだけ、何を買うかではなく、継続的に投資することです。株式、債券、不動産など、長期的に収入を生み出すと期待される資産を定期的に購入することで、経済成長の恩恵を受け、着実に資産を築くことができます。
貯蓄
必要最低限の貯蓄額
必要な貯蓄額は人によって異なり、一概には言えません。貯蓄額を決めるには、収入と支出を把握し、将来の目標やライフスタイルを考慮する必要があります。
本書では「貯蓄は貧しい人のためのものであり、投資は裕福な人のためのものである」という考え方が示されています。これは、投資によって資産を増やすためには、まず一定の貯蓄額が必要であることを意味します。貯蓄額が少ないうちは貯蓄に集中し、ある程度の額になったら投資に目を向けるべきです。
貯蓄と投資のバランス(Save-Invest continuum)
これは、貯蓄に重点を置くべき段階から、投資に重点を置くべき段階へと移行していくという考え方です
予想貯蓄額: 今後1年間で、無理なく貯蓄できる金額。
予想投資成長額: 投資資産の合計額と予想年間リターンに基づいて計算される、投資資産の予想年間成長額。
予想貯蓄額が予想投資成長額よりも大きい場合: 貯蓄を増やし、投資に投入する資金を増やすことに重点を置くべきです。 つまり、「貯蓄」段階にあると言えます。
予想投資成長額が予想貯蓄額よりも大きい場合: すでに保有している資産の投資方法を見直し、より投資にフォーカスすべきです。
両者が近い値の場合: 貯蓄と投資の両方に時間を割くべきです。 つまり、「貯蓄」と「投資」の移行段階にあると言えます。
ケース1:A子さん
・年齢:25歳
・年収:300万円
・投資資産:50万円
・年間の予想貯蓄額:60万円(年収の20%)
・投資資産の予想年間成長率:7%
・投資資産の予想年間成長額:3.5万円(50万円 × 0.07)この場合、A子さんの予想貯蓄額(60万円)は、予想投資成長額(3.5万円)よりもはるかに大きいです。 つまり、A子さんは「貯蓄」段階にあり、貯蓄を増やすことに重点を置くべきです。
ケース2:B子さん
・年齢:35歳
・年収:500万円
・投資資産:3,000万円
・年間の予想貯蓄額:50万円(年収の10%)
・投資資産の予想年間成長率:5%
・投資資産の予想年間成長額:150万円(3,000万円 × 0.05)この場合、B子さんの予想投資成長額(150万円)は、予想貯蓄額(50万円)よりも大きいです。 つまり、B子さんは「投資」段階にあり、投資戦略を見直すことに重点を置くべきです。
2倍ルール
贅沢品を購入したい場合は、同額を投資に回すというルールです。これにより、衝動買いを抑え、投資への意識を高めることができます。
充実感を最大化する
お金は人生の目標を達成するためのツールであり、罪悪感を感じずに使うべきです。
毎日のラテは無駄な出費に見えるかもしれませんが、それが仕事で最高のパフォーマンスを発揮するために必要であれば、それは有意義な支出と言えるでしょう。
投資
資産クラス
株式、債券、投資用不動産、REITなど、それぞれのメリットとデメリット、投資方法を具体的に説明しています。
投資タイミング
著者は、データを駆使して、市場タイミング戦略の非効率性を明らかにしています。
「底値買い」の非現実性: 市場が底値に達するタイミングを正確に予測することは不可能であり、「底値買い」戦略は長期的にドルコスト平均法に劣る結果になることが多いと指摘しています。
Just Keep Buyingの優位性: できるだけ早く、頻繁に投資することが、最も効果的な投資戦略であると結論付けています。
投資における運
投資における運は、リターンシーケンスリスクとも呼ばれ、特に退職後の資産取り崩し期間において重要になります。
・リターンシーケンスリスクとは、資産の運用成績が時期によって異なることによって生じるリスクです。例えば、退職直後に市場が暴落した場合、資産価値が大きく目減りし、その後なかなか回復しない可能性があります。
・本書では、1920年から1980年の間にランダムに選ばれた40年間について、ドルコスト平均法と「底値買い」戦略を比較したシミュレーション結果が示されています。その結果、「底値買い」戦略がドルコスト平均法を上回るケースは全体の30%に過ぎませんでした。
・これは、市場の動向を予測することの難しさを示すと同時に、投資における運の要素の大きさを物語っています。しかし、運が悪い時期に遭遇した場合でも、その影響を軽減するための方法があります。
十分な低リスク資産(債券など)で分散投資を行う: 退職前に債券の比率を高めておくことで、市場が低迷した場合でも、株式を売却せずに済む可能性が高まります。
生活費を見直し、支出を削減する: 退職後の生活費を減らすことで、資産の取り崩しペースを抑え、資産寿命を延ばすことができます。
パートタイムで働くなどして、収入を増やす: 退職後も収入源を確保することで、資産への依存度を下げることができます。
心の持ちよう
著者は、相対的な豊かさにとらわれず、「豊かさ」の定義を見直すことを提案しています。
お金は「豊かさ」の尺度として不完全である: 本書では、宝くじの高額当選者であるジャック・ウィテカーの例が挙げられています。ウィテカーは宝くじ当選前、すでに1700万ドル以上の資産を持つ裕福なビジネスマンでした。しかし、2002年のクリスマスにパワーボールの当選券を引き当て、3億1490万ドルという巨額の賞金を手にしてから、彼の人生は一変しました。
・頻繁に訴訟を起こされたり、泥棒に入られたり、周囲の人々に金銭を要求されたりといったトラブルが絶えませんでした。
・彼自身もギャンブルやアルコールに溺れ、家族や友人との関係も悪化していきました。
・最終的には、孫娘がドラッグの過剰摂取で亡くなるという悲劇も経験しました。
ウィテカーは、宝くじ当選後の人生について、「当選券を買わなければよかった」と語っています。彼の例は、お金は幸福を保証するものではなく、むしろ過剰な富は不幸を招く可能性もあることを示唆しています。
本書では、「豊かさ」とはお金の多寡だけで決まるものではなく、時間、人間関係、心の平穏など、さまざまな要素が複合的に作用するものであることを示唆しています。ジャック・ウィテカーの例は、この考え方を裏付ける一つの例と言えるでしょう。
「豊かさ」の感じ方は相対的である: 本書では、友人同士や億万長者同士の比較を通して、人は常に他人と比較し、相対的に「豊かさ」を感じたり、感じなかったりすることが示されています。つまり、「豊かさ」は客観的な基準ではなく、個人の主観や置かれている環境に大きく左右される概念なのです。
本書では、元ゴールドマン・サックスCEOのロイド・ブランクファインが、億万長者であるにもかかわらず、「自分は裕福ではない」と発言した例が挙げられています。彼は、ジェフ・ベゾスやデビッド・ゲフィンといった、さらに裕福な人々と比較して、自分の資産はそれほど多くないと感じているようです。
人は、客観的な資産額ではなく、周囲の人々との比較に基づいて、自分が「豊か」かどうかを判断する傾向があると言えるでしょう。他人と比較して一喜一憂するのではなく、自分にとって本当に大切なものは何かを見つめ直し、時間という貴重な資産を有効活用することで、真の「豊かさ」を追求することができるのではないでしょうか。
時間こそ最も重要な資産: 本書では「時間こそ、お金では買えない、真に貴重な資産である」と繰り返し強調されています。
本書では医師で長寿の専門家であるピーター・アティアの思考実験が紹介されています。彼は、聴衆に対して「ウォーレン・バフェットの全財産と交換に、彼の年齢(当時87歳)になることを受け入れる人がいるだろうか?」と問いかけています。ほとんどの人は、たとえ莫大な富を得られるとしても、残りの人生の時間を犠牲にすることはないと考えるでしょう。この思考実験は、時間にはお金では買えない価値があることを示唆しています。
時間は若いうちほど価値が高い: 本書では、時間の価値は年齢とともに変化し、一般的に若いほど価値が高くなると述べています。これは、若い時期に投資やスキル習得に時間を費やすことで、将来の収入増加や人生の選択肢の拡大につながる可能性が高いためです。
本書は、読者に対して、時間という貴重な資産をどのように使うかを深く考えることを促しています。お金を稼ぐことだけに集中するのではなく、時間の使い方を意識することで、より充実した人生を送ることができるでしょう。
また本書が提唱する「Just Keep Buying」の原則は、投資における時間活用戦略と言えます。人生におけるあらゆる選択において、時間という貴重な資産をどのように使うか、常に意識することが大切です。
まとめ
「Just Keep Buying」は、お金を貯めて資産を築くためのシンプルかつ効果的な哲学であり、本書は、その実践方法を具体的に解説しています。読者は、本書を通じて、賢くお金を貯めて、豊かに生きるための実証された方法を学ぶことができます。