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【インタビュー】アクセシビリティの担保を当たり前に。CAO (Chief Accessibility Officer) の挑戦
エスケイワードは2025年1月に社員CxO制度を導入しました。この制度は、特定分野に責任を持つリーダーを任命し、会社の成長と活動の浸透を推進するものです。今回は、初の社員CxOとなった、CAO (Chief Accessibility Officer) 高須さんにお話を伺いました。

高須 拳斗
2013年エスケイワードに新卒入社。フロントエンジニアとして様々な上場企業のウェブサイト構築に携わる。 チームリーダーを経て、2025年からCAO及びデザインチームとフロントエンドチームを統括するマネージャーに就任。Trusted Tester認証やNVDAエキスパート認定試験に合格しており、ウェブサイト・アプリのアクセシビリティ改善に取り組んでいる。アクセシビリティの啓蒙活動をライフワークとし、700名を超えるオンラインコミュニティの運営を行う。2024年にはアクセシビリティカンファレンス名古屋の実行委員長を務めた。
「良いものを作りたい」思いからアクセシビリティの道へ
―― 高須さんは新卒でエスケイワードに入社しているんですよね。これまでどんな仕事に携わってきたのか、教えていただけますか?
入社以来、フロントエンドエンジニアとしてHTMLやCSS、JavaScriptを用いた構築を担当しています。受託制作の中で大企業のコーポレートサイト制作に携わることが多かったので、ウェブサイトのページ数が多くても破綻しないよう、またCMS(コンテンツマネジメントシステム)の導入に耐えられるよう、設計に力を入れてきたのが特徴的かもしれません。
2020年からはチームリーダーを担うようになり、メンバーのマネジメントにも関わってきました。
―― ウェブサイトの制作に携わる中で、アクセシビリティのことはいつ頃から意識し始めたのでしょう。
ずっと、とにかく良いものを作りたいと思いながらコーディングをしていて。客観的な評価が知りたいと思ったときにコードの採点ツールの存在を知って、試してみました。そうしたら、スコアが低いところがあり、中にはウェブアクセシビリティに関する項目も。当時は自分のコーディングに自信を持っていたので、ショックでしたね(笑)。そこから、スコアを上げたいゲーム感覚でウェブアクセシビリティについても学んでいったんです。
しばらくして、担当したお客様からの追加要件に「アクセシビリティ」の項目が登場して。大企業のコーポレートサイトだったのですが、「アクセシビリティがお客様から求められることがあるんだ!」と知ったのがこの時です。
―― そこから、順風満帆にアクセシビリティと仕事が繋がっていったのですか?
いえ、全然そんなことはなく(笑)。自分としては、採点ツールでアクセシビリティを知ったときから学びを続けていて、社内で勉強会をしたり、Discordでコミュニティを運営したり、少しずつ活動を広げていました。ですが仕事では、自分がコーディングを担当する際にはアクセシビリティに配慮した実装をしていましたが、個人の取り組み止まりで。会社の仕事としてアクセシビリティに取り組んでいきたいと上司に伝え続けていましたが、まだ会社的にも社会的にもアクセシビリティの認知度が高くなく、受託制作でアクセシビリティを仕事に繋げる難しさを感じていましたね。

楽しむことが高じた先の、キャリア展望
―― 何か転機になった出来事はあったのでしょうか。
「名古屋市交通局」公式ウェブサイトのアクセシビリティに関する試験を受託したことですね。当時の上司が入札案件情報を見つけてくれて。このプロジェクトを無事に納品したことで、エスケイワードとしてアクセシビリティに関する実績を作ることができました。何より、自分自身もチームメンバーも、アクセシビリティ向上への取り組みが実際の業務に繋がったことに自信を持てました。
そこからは、この実績をもとに営業活動にも力を入れてもらい、第一三共ヘルスケアダイレクト株式会社様にウェブアクセシビリティチェックと改善の支援を行ったり、協業している制作会社さんに対してアクセシビリティ向上の支援を行ったり、実績を増やしていっているところです。2024年4月に改正障害者差別解消法が施行されたことも、追い風になりましたね。
―― 2024年にはアクセシビリティカンファレンス名古屋を主催するなど、高須さんの活躍の場がとても広がった印象を持っています。CAO就任も意識されていたのでしょうか。
アクセシビリティ大忘年会でもお話したのですが、楽しむことが高じてカンファレンスまで開催してしまって、あまりその後の展開は考えていなかったんです(笑)。ただ、2025年にどんなことをしていくか考える中で、アクセシビリティの知識を持ってデザインの領域にも関りを持ちたいと思うようになっていました。社内でデザイナーとアクセシビリティの話をする機会も増えてきていたので、職種の枠組みを越えて活動を推進していきたいなと。
それを大忘年会のパネルディスカッションで話したら、代表の沢田さんが聞いていて「CAOやってみたらいいじゃない」と声を掛けられて。その時は冗談だと受け流していたんですが、後日正式にオファーをいただきました。

―― 冗談だと思っていたのですね(笑)。高須さんにとっては予想外だったのですか?
予想外でしたね~。別途、組織としてマネージャー昇格の話を事前にいただいていたので、さらにCAOとは。
驚きはしたんですが、社員CxO制度の第一号として試すつもりでやってみてほしいということに背中を押されました。新しい取り組みならやってみたいと思えましたし、これまでもアクセシビリティを会社としてやっていくために行動してきたので、公認してもらった、という感覚です。

みんなの力で「当たり前」を叶える
―― では改めて、CAOとしての意気込みを教えてください!
就任挨拶の際、社内のみなさんに対して「最終的には『エスケイワードでは、アクセシビリティを担保することは当たり前の品質ですよ』と言えるようにしたいです。情報を全ての人に届けたい。ただ、その実現をするには本当に高須一人じゃ無理なので、たのむ! みなさんの力を貸してください!」と伝えたんです。これが心からの言葉で。
「当たり前にする」は「一人だけができる状態」ではダメなんです。みんなで取り組んでいかないと実現できないことなので、自分を中心とした一部の活動から、みんなの活動に広げていきたいですね。アクセシビリティに軸足を置きながら、デザイン、紙媒体、多言語、バックオフィスといったエスケイワードが持つ様々な領域に触れていこうと思っています。みなさんのことを知りながら、アクセシビリティのエッセンスを各所に入れていくのが楽しみです。特に、エスケイワードは多言語の強みを持っていますので、先々は日本語を母語としない当事者の方を交えた制作に取り組んでいけたらいいなと考えています。当事者の方と関わることで「なぜ教科書的にこの実装が良いとされているのか」を知っていきたいですね。
最終的にはアクセシビリティが様々な制作物に溶け込んで、推進なんていらない、CAOはもういらない状態にしたいですね!
インタビュー、執筆:家本夏子
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