逆噴射小説大賞についての雑感
おれのことは摩部甲介と呼んでくれ。
思うところがあって(酒は多くても困らないよな?)、逆噴射小説大賞2019に5本投稿した。
内、二次選考に残ったのは3本。初挑戦にしては素晴らしい結果ではなかろうか。
結果を見る前は、どうやら好評らしい「大統領」が一本残れば僥倖、という心地だったので、正直驚いている。
さて、各作品の解説をしたいと思う。他の人もやっていて面白そうだったからだ。内容としては、テーマとか色々書いてみるつもりだ。
おれはスコッチとジャズをキメながら書いているので、文体や筆がすべるに違いない。
序
今回、大賞に応募する作品執筆にあたり、大切にしたいポイントがいくつかあった。
1つ目はできるだけ序盤にフックをつくることだ。noteはあらすじやキャッチコピーを持たぬシンプルなつくりだ。タイトルと画像と出だしの数行で読むのを読者は決めるだろうと踏んだ。だから冒頭の一行でデッカイのをかましてやり、目撃者を小説世界に引きずり込んでやる必要があった。最終的に解決されるであろう謎、つまり主人公の目的の達成の是非とかを置いてやると、物語の進みが良くなる。これは小池一夫が書いていたことだ。
2つ目に最終行にヒキをつくることだ。小説の冒頭800字である以上、続きが存在する。この文の続きを読みたくなるようなイベントを起こしてやるとか、今までの世界観をひっくり返すようなツイストをいれてやるとかしなくてはいけなかった。
3つ目は小説のフォーマット設定。こいつは短編小説をイメージした。10万字以上の長編となると序破急の割り振りがその分長くなるので、800字でうまく設定とヒキ、フックを配置できそうな長さを考えた結果だ。
では解説にうつる。
解説
1.よごれ仕事
こいつは本命だった。頭をひねって考えたのが、ミステリ的構成だ。なぜコイツはこんな行動をしているのかという謎を置いておき、のちのち回収する形だ。これは読み返すと二度楽しめる具合になるからよい。設定はパルプなら犯罪ものがふさわしかろうと考え、殺しの後始末からやくざのドンパチに巻き込まれる話になった。
工夫したのは、タイトルの「よごれ」と「仕事」がひらがなと漢字で区別してあることだ。こうやってやると単に「汚れ仕事」とやるより「よごれ仕事」にしたほうが言葉が強調されて目に付きやすいし、メリハリも出る気がしている。
評判が悪かったのでどうだろうと思っていたが、運良く残った。
2.人生の悪役
嫌なことがあって、そのルサンチマンを書きなぐった一品。当然のことながら、不評だ。
そりゃあ、主人公に感情移入できるスキがないから、当然のことだ。
今読み直しても、つまらない。
3.血だるま放浪記 黄金の吹雪
SF世界の賞金稼ぎで行こうと思って書いた一本。主人公の特徴と目的、続きへのヒキはこなせたと思うが、やはり引っかかるだろうと思っていた冒頭に突っ込まれた設定の説明不足/無意味さがマイナスか。設定と目的の説明にすべてが注ぎ込まれ、物語がドライブしかけたところで終わってしまった感覚もある。
血だるま放浪記シリーズの3本目くらいという設定。
4.大統領の世界みなごろし大作戦
これもルサンチマンをぶつけた作品。ハート大統領の言葉はおれの言葉でもある。まず狂った大統領の大破壊に呼応した主人公の大量殺人の話を書こうとしたが、この主人公も大統領にしたら面白いだろうという電波を受信してしまい、誕生した小説だ。この「日本の一般人だと思ったらロシアの大統領だった」というひねりが好評のようだ。中華街くらいロシアにもあるだろう。地続きだから。
逆噴射氏のアドバイス通り、言わせにくいことは悪役に言わせると効果的というのはどうやら本当らしい。
タイトルの「みなごろし」がひらがなの理由は、よごれ仕事の項で書いたものと同じだ。
5.月の光が人を焼く
平山夢明風ノワールをやりたくて書いた一本。氏の長編に「ダイナー」という傑作があるが、それの冒頭が「ヤクザに銃を突きつけられながら自分の墓穴をスコップで掘らされている女子大生(うろ覚え)」という凄まじい打撃を加えてくるものだったので、それをオマージュした。主人公がいきなりボコボコにされているのはそのためだ。ゴリラケーキという名前は字数を喰っていかんな。
結
さて、この5本のうち、続きを書いてやれているものは一本もない。おれは中絶児を5本も生み出してしまったのだ。だが、気が向いたら書くし、書かないかもしれない。どうせ書かないだろう。こうやって振り返りという形で思い出を語ってやるのが、とむらい代わりということになる、と思っていること自体が、このおれの奢りにほかならないだろう。つぎ込んだ工夫を書き晒して並べているのも、おぞましいくらいのナルシズムの現れだ。
さて、今回はこれくらいで筆を置いておこう。またキーボードを叩くようなことがあったら、読んだやつが心臓麻痺でくたばるくらいのやつをかましてやりたいものだ。すぐには無理だろうが。
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