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死がふたりを分かつまで
青空に白く尾を引くジェット噴射は、いつもより速度が乗っている。
全く、厄介な相棒を持ったものだ。
沙門はそれを視界に捉えつつ、国道を全開で飛ばす。
「メランダめ、どこで待ち合わせをするつもりだ?」
久しぶりに友人に会うと云っていたが、確かあの方向には巨大なジャンクヤードがあったはず……
ジェットの軌跡が地上へ向う。思考を打ち切り、慌ててハンドルを切る。背後の車のクラクション。
入口の巨大な鉄門から、大勢の従業員が慌てふためき吐き出されてくる。
車を路肩に突っ込ませ、沙門は舌打ちひとつ、走り出す。
無理もない。胸まで鋼鉄の女神が天から降臨。宇宙人でも逃げていく。
沙門は「特任」手帖を掲げ、人々を滑るように避けながら奥へ向かう。
いた。
息を整えながら沙門が見上げるのは、四角く潰れた自動車が積まれたピラミッド、その天辺だ。
滑らかな顔に笑みを浮かべながら、相棒は銀色の両腕を大きく振っている。
そこ目掛け、黒煙噴き上げ雲裂いて奔るのは、彼女の倍もあるだろう黒い金属の塊だ。
「ブラスチカさーん、私はここですよー!」メランダが笑う。
「避けろ馬鹿野郎!」沙門が叫ぶ。
「あっ、沙門さん。来てくれたんですね」
沙門に顔を向けたメランダにブラスチカが衝突する。足場のジャンクが激しくたわみ、沙門が顔を歪める。
「激しいなァ、もう――ひいっ」
ブラスチカを微動だにせずキャッチした、はずのメランダはさっと青ざめ、おぞましいものに触れたかのようにそれを地上へ投げ捨てたところに、睨む沙門は腰の炸裂銃を抜いた。
「嫌、嫌……」メランダが震える。気づいたのだ。
空中で姿を組み換え着地したのは赤い双眸の鉄巨人。その胸の中央に埋め込まれた、黄金に輝くそれは、今にも泣きそうな、滑らかな女の顔。
「ブラスチカぁーッ!」メランダが友人の名を叫ぶ。
ブラスチカの瞳が閉じる。
鉄人は首を傾げ、巨大な拳を振り上げる。
沙門の銃が爆炎を噴き、鉄人の拳が割れる。
【続く】