非合法無人傭兵
まずカメラが回復する。
青空と暗黒雲海。
意識のタイムスタンプを確認。断絶は数秒間。
身体ダメージ診断・軽微。武装・レーダー使用不可。カメラは生きている。
友軍機反応、識別名『エフティー』。800m後下方。後輩の僚機。
インパクト前に入っていた通信の復号完了。ミサオから。《準備完了。北倉庫の地下15階で。妨害警戒》
現在通信機故障。
ブロンソンはエフティーに向け友好的にアームを振る。
エフティーからミサイルが放たれる。
ブロンソンはコンマ遅れつつ撹乱チャフを放ち、予備動作なしに噴いたバーニアの悲鳴を後に暗黒雲海へとダイブ。
雲海中は夜闇のごとく視界は効かない。追ってくるなら、目視ロックできず熱反応の少ない弊機に対して肉薄するしかない。
雷撃地帯に入った。身体から帯電音。突っ込んでこない。諦めたか、待っているのか、迂回か。
何度も雷撃が掠める。
雲を抜ける。眼下に味方基地。めちゃくちゃに防衛兵器が動き回っている。地上は殺られた味方で酷い有様。
背後へ視界を回す。すぐそこにエフティー。機銃の回る音。
前方から急接近、ミサイル。味方のもの。
とっさに急減速。バーニアが焼け、フレームが軋む。突っ込んできたエフティーにアームを引っ掛け食らいつく。
接触通信が聞こえる。
『やり遂げたら奢ってくださいよ、先輩』
ブロンソンはエフティーを突き飛ばせなかった。
2機目掛けて突っ込んできたミサイルが直撃する前後の数秒間、ブロンソンはおのれの感覚器官を全てシャットダウンして祈る。
身体ダメージ診断・深刻。武装・レーダー使用不可。ノイズまみれのカメラ。
固く冷たい鉄の感触。身を捩ると機体は転がり、コンクリートの上に落ちる。
横に転がっているのが自分かエフティーの一部かどうかわからない。
座標を見る。
北倉庫まで300m。歩行用脚部展開不可。
姿勢を低く、アームで這う。
北倉庫の入り口から機銃が鉛を吹き付ける。
【続く】
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