埠頭、腎臓、スーパーチャット
結婚式に乱入して、サウンド・オブ・サイレンスを流しながら、愛する女とバスに乗り込むなら格好がつくが、俺は何もかもが違った。
今いるのは子どもの玩具のようなコンテナが並ぶ真夜中の埠頭。盗むのは死体。イヤホンから流れるのはVtuberの雑談配信。
これから命をかける相手は、美少女の皮を被ったおっさんだ。
倉庫から中国語の混じった怒声が聞こえた。
俺は緊張を紛らわせるため、生配信の音量を上げる。港のWi-Fiは弱く、何度も動画が止まって苛ついた。
「スパチャありがとうござい