マガジンのカバー画像

逆噴射小説大賞

18
運営しているクリエイター

#短編小説

戦場を着た男

 倉庫を整理していると、隅に耐火布の被さった小山があるのに気づいた。  近くで札束を数え…

摩撫甲介
4か月前
41

ほほえみを焼き落とせ

「神野さん、もう悲しむことはありません」  病室のベッドの娘の亡骸に埋めていた顔を引き上…

摩撫甲介
2年前
44

鉛のあしゅら

 改造医の河豚は簡単に折れた。  河豚が扉越しに声をかけると、ガラス戸がかっ開き、待たせ…

摩撫甲介
2年前
23

宙、つめたく冷えて

 横薙ぎに椅子を男のこめかみに叩きつける。  吹っ飛んだそいつに椅子を投げつけ、腹の包丁…

摩撫甲介
3年前
32

空に噛みつく青い鳥

  犬の群れが追う。  ドアを叩きつけ、もつれる手で鍵を刺す。  ロックが掛かり、吠え声…

摩撫甲介
3年前
31

ホールケーキはもう出ない

 母さんは昨日のことが嘘みたいなニコニコ顔のまま、お皿を2つ、僕とカナの前にそれぞれ置い…

摩撫甲介
3年前
29

人生の悪役

 幸八は3歳の娘を殺してしまった。例の怒りの発作が起きたのだ。  昼飯時のフードコートで、ハンバーガー越しに顔面をガラスコップに叩きつけたのち、破片で喉を抉ってやった。  我に返ったときはもう遅い。 「ち、違うんだ。娘の自殺を止めようとしたんだよ、本当だ。なっ」  弁明の後、幸八はぐったりした娘を放り捨ててその場から逃げ出した。  信号を無視してクルマをぶっ飛ばし、新築の一軒家に幸八は帰宅した。  血まみれの服を脱ぎ捨て、いじめのフラッシュバックに悪態をつきながら準備を始め