マガジンのカバー画像

逆噴射小説大賞

18
運営しているクリエイター

#小説

宙、つめたく冷えて

 横薙ぎに椅子を男のこめかみに叩きつける。  吹っ飛んだそいつに椅子を投げつけ、腹の包丁…

摩撫甲介
3年前
32

空に噛みつく青い鳥

  犬の群れが追う。  ドアを叩きつけ、もつれる手で鍵を刺す。  ロックが掛かり、吠え声…

摩撫甲介
3年前
31

ホールケーキはもう出ない

 母さんは昨日のことが嘘みたいなニコニコ顔のまま、お皿を2つ、僕とカナの前にそれぞれ置い…

摩撫甲介
3年前
29

よごれ仕事

「おふくろがね、消えたんだ」  ビニル袋の中の酒を取ろうとした手が勝手に固まって、おれは…

摩撫甲介
5年前
20

人生の悪役

 幸八は3歳の娘を殺してしまった。例の怒りの発作が起きたのだ。  昼飯時のフードコートで…

摩撫甲介
5年前
5

血だるま放浪記 黄金の吹雪

 雪まみれのメッコングを丸机の上に投げ落とすと、酒場の酔漢どもがどよめいた。  店主曰く…

摩撫甲介
5年前
14

大統領の世界みなごろし大作戦

 アメリカの大統領が世界各国のテレビ衛星をジャックして、生放送を始めた。 「国民、ひいては世界の皆様、お話があります」  中華街にあるラーメン屋、天井角に設えられた小さなテレビの中で、彼はそう言った。 「私は、もうこの世界に耐えられません」  届いたばかりの大盛りのラーメンから顔を上げ、そりゃそうだろうなと、おれは思った。 「ゆえに私、アメリカ合衆国大統領ハート・ミハルカは、死ぬことにしました」  勇気ある決断だ。店の外のサイレンが騒がしい。 「この世界は、私むけに作られてい

月の光が人を焼く

 私を縛る縄が痛いけど、舌の感覚もなくなったから言えなかった。  殴られすぎて頭がパンパ…

摩撫甲介
5年前
19

そしてあの子はいなくなる

 昼過ぎに玄関のチャイムが鳴った。  家事を終えたばかりのアリアが玄関の戸を開けると、黒…

摩撫甲介
4年前
64

牙に生え変わるとき

 まず通帳を、次に結婚指輪をフロントガラスに投げつけた途端、リョーコは閃光と轟音にやられ…

摩撫甲介
4年前
26

地獄も投げ出した家にて

 ナカモトの家の玄関は広く、すっきりとしていた。新品のスニーカーが1足だけ。起爆装置のひ…

摩撫甲介
4年前
19