【私の十界論】畜生界…「自分が良ければいい、弱いやつが悪い」
中途で入社した会社には同期が二人いて、そのうちの一人は新卒の男の人だった。アルバイトもしたことがないらしく、働くことにとても一生懸命だった。
その会社は新卒を取るのが久しぶりで、教える人がかなり年上のおじさんだった。昔ながらと言えばいいのか、技は見て盗めというタイプで、あまりその人に丁寧に仕事を教えていなかった。
そのくせミスをすると怒鳴るし、感が悪いと言ってその人をけなしたりしていた。その人は確かに仕事を覚えるのが遅かったけど、教え方も悪かった。
私は経験者だったので、よく比較された。この子はできてるのに、なんでお前はできないんだと言われている彼を見て、私は何も言えなかった。かわいそうだけど、仕方ないと思っていた。もっと上手くやればいいのに。と、その人を下に見ていた。
相当ストレスが溜まっていたのだろう。その人は突然会社をやめてしまった。
そしてその数年後、心のバランスを崩して今度は私が辞めることになった。私は、人を動かす仕事が全然できなかった。みんなの意見に流されて、みんなが不満を言ってくることに耐えることもできなかった。
その時、できない自分を一番責めていたのは自分だった。「もっと上手くやればいいのに。」かつての同期に抱いていた気持ちは今度は自分に向けられていた。
畜生の心にあるのは自信のなさだと思う。自分の目で見たものを信じられないから、まわりの評価をそのままその人の評価だと思ってしまう。
今は、そういう心になっているなと気づいたら、「私は、私の感覚を信じるよ」と言ってあげている。