神激のプロフィールを読む前にこれを読んでくれオタク
Clean×3・Rap・Scream・Shoutの6人ボーカル+マニピュレーター7人編成で、アイドルにもバンドにもDJにも無い新しいアーティストスタイルでのパフォーマンスを展開するバンドユニット。名実ともに、アーティストとしての存在感をまとい始め、来たる2022年3月30日に日本武道館ワンマンライブが決定している。音楽性はメタルコアと転調やテンポチェンジを軸に、ラップ・ジャズ・EDMなど先の読めない構成とサウンドを展開しており、サビではどんな超展開の後でもキャッチーでエモいメロディを歌い上げる。更にライブはマニピュレーターが32パラアウトデータのサウンドシステムに、リズムマシーンやギター等の演奏をリアルタイムで演出する。
神激の公式プロフィールって、オタクにはめちゃくちゃ優しくない文章で書かれてますよね。ちょっと解説してみようと思います。
Cleanってなに!?
Clean×3・Rap・Scream・Shoutの6人ボーカル+マニピュレーター7人編成で、アイドルにもバンドにもDJにも無い新しいアーティストスタイルでのパフォーマンスを展開するバンドユニット。
Cleanって何?ってのをエゴサしてるとよく見かけるので説明すると、
まあ要は普通のボーカルです。
ギャーギャー言ってるScream/Shoutに対してのCleanという意味。
デスメタルとか、そこから派生したジャンルはデスボイスがあることが前提なので、
デスボイスじゃない声をクリーンって言うのですね。
メタルコアってなに!?
音楽性はメタルコアと転調やテンポチェンジを軸に、ラップ・ジャズ・EDMなど先の読めない構成とサウンドを展開しており、サビではどんな超展開の後でもキャッチーでエモいメロディを歌い上げる。
メタルコアってなんぞや?となりがち。
メタルとメタルコアって何が違うの?という質問はメタラー宗教戦争を引き起こしかねないのであんまり断言はできないんですけど、
ざっくり言えば、メタルとハードコアを混ぜた音楽がメタルコア。
とりわけ、ハードコアの文化である「ブレイクダウン」をメタルに取り入れたものをメタルコアと呼ぶことが多いです。
あとは、転調とテンポチェンジをごちゃごちゃにしてる人をよく見かけますが、「なんかちょっと雰囲気変わったな」ってなるのが転調、「なんか遅くなったな/速くなったな」となるのがテンポチェンジです。
マニピュレーターとPAって何が違うの!?
更にライブはマニピュレーターが
マニピュレーターってめちゃくちゃ勘違いされてるんですが、PAじゃないです。
めーちゃくちゃざっくり言ってしまえば、
PAは、スピーカーから出てくる全ての音を調整している人。
マニピュは、オケを流している人です。
ところで、「今日のライブは音が悪かった。ボーカル聞こえにくいわボケカス!マイクがハウリングしまくってる!マニピュがゴミすぎ!」って思ったことある人いませんか?
思ったことある人がいたら手をあげてください。僕がキレに行くので。
それ、大体マニピュのせいじゃないんですよね。
ボーカルが聞こえにくいのは大体PAのせいか、ハコの限界です。
あとは、いつかの騒動みたいに、そもそもの音作りとしてボーカルの声が抜けにくいという場合もありますが……。
というか今、「抜けにくい」という言葉をさらっと使ったんですが、これもいまいち正確に伝わってない気がします。
なので、音が抜ける、音が抜けないについて、ついでにちょっと話します。
音が抜けるってなに!?
中学理科で、弦をびろーんって振動させて、振幅がどうの、周波数がどうの、音が高い低いなんだとやったことを覚えていますか?覚えてませんね!この話はやめます。
じゃあ、ちょっと音にこだわりがある人とかで、音楽プレイヤーの「イコライザ」をいじったことある人って結構多いんじゃないでしょうか。
こんなやつ。英語で書くと「Equalizer」略してEQ(イーキュー)って言ったりもします。
横の数字が「周波数」で、単位はHz(ヘルツ)です。1Kは1000ですね。まあオタクなら耳馴染みある言葉か。
周波数が低いと低い音、高いと高い音ってのは直感的に理解いただけると思います。よく使われる用語として、低音域を「ロー」、中音域を「ミッド/ミドル」、高音域を「ハイ」って呼ぶので覚えて帰ってください。
んで、どの楽器がどの辺の周波数帯で音を出してて、その楽器の一番美味しい・キモとなる帯域はどこかってのが大体決まってるんですね。
例えばバスドラム(ドゥンって音。心臓にくるやつ。キックとも言う)なら、20〜6kHzあたりの帯域で音を出してるんですが、
その中でも80~100Hzが一番美味しい帯域。イコライザでこの辺りを上げたり下げたりすると、「ドゥンッ!」の感じが変わります。
で、今この4行読んで
「6kHz?なんかすげー上の方でも音鳴ってね?」って思った人、鋭いです。実はバスドラムって上の周波数帯域でも音が鳴ってて、
大体2kHz付近で「バチンッ」って感じの音が鳴ってます。
メタル系だと、このバチンッ!感の強い音を作るためにこの辺りの帯域をブースト(上げる)することが多くて、神激のキックの音もその傾向にあります。
どうですか? 今話したのはドラムの中でも、「キック」という一個の部位の音についてだけの話です。これを全パート考えて、音楽って作られてます。キモいですよね。こんなことを話してくる人間は絶対に狂った音楽オタクなので近寄らない方がいいです。
それはさておき……こうも思いませんか?
「そしたら楽器同士で、帯域の取り合いになるんじゃないの!?」
なります。
なので、譲り合いが必要なんです。
基本的に歌ありの音楽はボーカルが主役なので、ボーカルの美味しい帯域である1kHz〜5kHzは、他の楽器の音があまり入ってこないようにします。
なんですけど、実はギターの美味しい帯域もこの辺なんです。
だからギターって、普段はこの辺りの帯域を抑えめにして、後ろの方でコードをジャカジャカ鳴らして歌を支えているんですが、ギターソロになると、この一番美味しい帯域をブーストして、オラオラオラオラ〜!!!と張り切って前に出てくるわけです。
で、件のアブゼロことのさんパート。
「私は今日もこの都会で感情を音にするんだ」
のとこはギターソロやってるのにボーカルが歌うという、完全にボーカルとギターで帯域の取り合いをしている「なんでやねん!」というセクションなので、ボーカルが聞こえにくいのは当たり前で、それを意図してやってるんですよ。という話なのでした。
パラアウトってなに!?
32パラアウトデータのサウンドシステムに、
パラアウトは、パラレル-アウトプットの略。
パラレルってのは英語で並列って意味なので、並列に出力すること、
つまり、一個一個の音を別々で出すということです。
普通、アイドルグループが流してるオケは、我々が普段サブスクとかで聞いているようなCD音源をPAさんが流しています。
CD音源ってのは、上述の通り、一個一個の音の「抜け」を完璧に整理して、綺麗に気持ちよく聞こえるように調整した音源のことですね。(「2mix音源」とか言いますが、詳しくは説明しないので興味ある人はググってください)
つまり、「パラアウト」って、
「一個一個調整して綺麗にした音源をもう一回バラバラにしちゃう」
ってことなんです。「え!?何がいいの?二度手間じゃない!?」って
思いますよね。なぜパラアウトすると音が良くなるのか、説明します。
パラアウトがそんなに偉いのか!?
ライブって毎回同じ場所・同じ環境でやるわけじゃなく、会場によって低音がよく反響したり、会場のスピーカーの特性上、高音が抜けにくかったり、あとは、客の体が低音を吸収することで音が変わったり、さまざまな要因で音の環境が変わります。
そこで、一個一個の音を調整して、どんな会場でも良い感じに聞こえやすくするのがPAさんの仕事です。
PAさんは普段、PAブースにいます。
そこではこんな感じの機械の超でっかい版(PAミキサー)をいじっているのを見かけますよね。
この機械には、ボーカルのマイクから拾ってきた音とか、ベースとかギターのアンプから出た音とか、あとはドラムの各部位(キック・スネア・ハイハット...etc)の音とかが別々に入ってきてます。
赤く囲った部分が一個一個の音の部屋みたいなイメージ。この部屋を「チャンネル(ch)」と呼びます。
この部屋の中で音量とか、どの周波数帯域をブーストするのかとかを
決めて、「綺麗な音になりました!準備オッケー!」となったら、
それら全部を合体させた音をスピーカーに出力します。
では、話を戻しましょう。
なぜCD音源じゃなくてパラで出した方が良いのか。
CD音源をPAミキサーに送る場合、
ドラムの音・ベースの音・ギターの音・ピアノ・ストリングス・シンセ...etc いろんな音をひとまとめにして、一個のチャンネルに送ります。
もちろん、綺麗に整理された音なので、それで崩壊するということはないです。
でも、会場の音環境に合わせてPAさんが「キックの音だけもうちょい上げたい!」とか「ベースのミドル帯をちょっとブーストしたいな」とかはできません。
それができるようにパラアウトして、PAミキサーの一個一個のチャンネルに入れて、PAさんに「良い感じに調整してください!」とお願いしているんです。
「なるほどね!じゃあ絶対パラアウトした方がいいじゃん!」となりますが、神激以外でこれやるアイドルはほぼいません。
なぜか?大きく分けて3つの要素が考えられます。
①機材を揃えるのにお金がかかる
②専門的な知識が必要(素人がやると普通にオケ流すより音が悪くなる)
③アイドルの強みはリハなし転換0分で出演できることなのに、リハ必須になる
という3点。特に③はデカイと思います。音を綺麗にする作業は時間がかかるので、バンド対バンとかだと20分〜30分くらいかけて、ライブハウスがオープンする前にリハをしています。
最近、対バンで神激さんチームが7時半とかに会場入りしてリハをしているのはこのためです。ましてや32チャンネルという、下手したら普通のバンドより多いチャンネル数で出力しているので、綿密なリハをしないとまともな音が出せません。
でもさあ、正直ここまで音にこだわる必要ってあんの!?
リズムマシーンやギター等の演奏をリアルタイムで演出する。
ぶっちゃけ、そこまでやらなくても、CD音源でまぁ悪くはない音は出ますし、それに加えて、リズムマシン(サンプラー)も入れて、MC中にドラムの音出したりしてるのは神激以外で見たことないです。
それもそうでしょう、ここまで労力をかけて出音にこだわるよりも、衣装とかMVに金と時間をかけた方がわかりやすくオタクが喜ぶし、言葉最悪ですが、そもそも音なんて聞いてないオタクが大半なので32chパラアウトなんて毎回やるのはコスパが悪すぎるんです。
それでもパラアウトを毎回する、というのは本当に自分たちの作った音楽にこだわりがあって、それを最高の状態で届けたいということの、何よりの証拠だと思います。
どうですか? 音の世界に興味湧いてきませんか?
……とまあ、そんな感じで、なにか疑問あったら遠慮なく聞いてください。
(ここ間違ってるよってのがあったらそれも教えて)
僕で答えられない範囲のことはfaniconのZOOM会で聞くのがいいと思います。
以上!!!
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?