「鉄道模型と精密」 そのうちコマ撮りアニメに横すべりするはずの模型のはなし #02
鉄道模型の話の続きです。
前回は、HOゲージとかOゲージとか、はてはGゲージだとか(庵野さんの記事で初めて知ったわけだが、)でかいサイズの模型の話がメインだったけど、それはインスタで流れてくる鉄道模型の動画が、なぜかアメリカの鉄道模型ファンの動画が多くて、すべからずでかいサイズの模型の話題だったからですね。
自分自身は実はでかいサイズの模型にそこまで心惹かれていたわけではない。
メルクリンのZゲージの蒸気機関車のびっくりするくらいの精巧さ
そもそも私が初めて実物を見た鉄道模型は、HOゲージやOゲージではなく、日本標準のNゲージでもなく、なぜかドイツの老舗鉄道模型メーカー・メルクリンのZゲージの蒸気機関車で、それはもうほんとにびっくりするくらい小さくて精巧だった。で、メルクリンの鉄道模型って、金属キャスト部品を多用してるんですよ。Nゲージは割とプラスチック感が強い印象なのだけど(思い込みかもしれない。ごめんなさい。)、それとはちょっと方向性が違う。サイズが極端に小さいのでかなり省略・デフォルメはされてるのだけど、なぜか精密感がすごい。それと模型表面の印刷がすごく綺麗だなという印象。上に貼ったyoutubeにも出てくる小さな蒸気機関車の全長が3〜4センチくらい、細かな車体の側面の配管とかも再現されていて、密度感が心地よかった。金属キャストのずしりとした重さとひんやりとした手触りも良くて、ずっと手に取って見ていたい感じ。すごく憧れました。
問題は値段が高いこと。サイズが小さいから狭い面積でも大きな構図のレイアウトで線路も設計できるし大編成も作れるよ!みたいなコンセプトなのだろうとは思うけど、メルクリンはドイツのメーカーで舶来品、とても子供に手が出せるものじゃない。大編成など夢のまた夢で、ここでもまた「カタログを見続ける」日々が始まる。
それにしてもメルクリンのカタログは美しかった。製品も普段見慣れないヨーロッパの蒸気機関車とか山岳鉄道とか、見たことないディーゼル車とか、どれもこれも魅力的な形状と色彩。再現されているレイアウトの情景もヨーロッパの街並みだったりアルプスの山岳地帯だったりして、想像を大いにかき立てられる。あと、抽象モデルというか、例えば等高線に沿ってきれいに裁断された白いボードを積み重ねて丘陵地帯を表現した真っ白な情景模型とかも深く印象に残っている。こういう表現もありなんだ、という驚き。あと山岳地帯の架橋と、その下を流れる渓流を表現した情景では、ガチで水の表現をやっていて、模型でもここまでできるんだと驚いた。 もちろん、今思えば、当時の模型における「水」表現は、素材的な限界もあっただろうし、現在に比べるとかなり未熟だったと思うけど、それでも紙粘土や石膏で水面を作って着彩した「水面」に比べると、透明感のあるリアルな水面表現に成功している写真が掲載されていたような気がする。
そうした情景模型としての魅力もありつつ、やはり鉄道模型は機関車や車両の、モデルの緻密さに憧れた。
自宅には「鉄道模型趣味」というマニアックな雑誌がなぜか数冊あって、そこには国鉄の何年の何型の客車の制作、みたいな記事がふんだんに載っていて、車体をボール紙を重ねて構築し、真鍮線を曲げて手すりを作ったり、台車は既製品を改造して使うとか、そういう制作記事には、図面や部品の型紙まで載ってたような気がするんだけど(ノリは手芸雑誌に近い?)、その記事の写真がすごくカッコよく、作例は細部までびっくりするぐらい再現されていて工芸品のようでもあり、鉄道模型とはだから、私にとっては、凄腕のモデラーが手作りする奇跡の逸品みたいなものでもあった。
記事の続きはSKOOTAにて閲覧いただけます。