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ポストコロナでもリモートワークは続くのか?

御存知の通り、6月10日から外国人観光客の入国制限が緩和され、観光地でも外国人観光客の姿を見るようになってきました。また、これに先立ちビジネスでの日本入国、日本人の海外出張、国内の大型イベントの開催、10人程度までの飲み会も再開され、徐々に社会・経済も元に戻りつつあります。経団連も17日に感染対策指針を大幅に簡略化しました。

最近、国内外の大手企業がポストコロナを見据えた勤務形態を発表して話題になっています。この記事では、主な大手企業の発表内容を見ながら、ポストコロナの働き方について考えてみたいと思います。

NTTが原則テレワークの働き方を継続すると発表

日本国内では、国内に社員18万人を抱えるNTTグループが7月から社員の勤務を原則、自宅でのテレワークとし、居住地の制限もなくすと判明して話題になりました。持ち株会社のNTTやNTTドコモ、NTT東日本・西日本、NTTデータなどで当初はテレワークに適した部署の国内社員3万人を対象とするとのことです。出社は「出張扱い」になるとのこと。

テレワークといえば、IT業界ではコロナ 禍では主流の働き方になっており、大手各社がテレワークの働き方を発表しました。ヤフーもこの4月1日にリモートワーク制度を改定し、居住地・通勤手段の制限を撤廃しました。飛行機・新幹線通勤もOKというのも話題になりました。

私が所属する富士通でも、かなり昔の2020年7月にポストコロナの働き方も踏まえて原則テレワークへの移行を発表しています。コアタイムのないスーパーフレックス勤務適用、オフィス全席をフリーアドレス化、遠隔地勤務、F3rdX(エフサードクロス)や一般に提供されるサテライトオフィスの活用を推進しており、オフィスへの出社は出張扱いです。原則として国内約8万人の全従業員に適用されます。

2022年度末までに国内オフィス半減を目指しており、既存オフィスも内装をリラックスしながら働けるモダンスタイルにリニューアルするとともに、部門に割り当てられる床面積は大幅に縮小、国内の本部員全員がオフィスに出社するとオフィスが満員電車状態になってしまいます😁もうコロナが収まってもコロナ前の勤務形態には逆戻りできない状態です。

私が所属するマーケティング部門も、元々約半数が海外メンバーであり、オフィスに出社したとしても基本はテレカンでの連携であり、国内メンバーも東北や中部地方をはじめとする遠隔地勤務の人がいます。地方の営業所から異動してきたメンバーも、勤務地は変えずに地方から勤務することができます。

テレワークから出社に逆戻りする大手企業も出現

一方、日本の大手企業の中には、コロナ 禍でテレワークを導入していたものの、コロナ後は原則出社や出社率に目標を持たせるところもあります。

ホンダは、創業者から受け継がれる三現主義「現場、現実、現物」の実現のために原則出社を求める制度を5月下旬から実施するとのこと。「対面のコミュニケーションを活性化するとともに、イノベーションの創出を促すことが狙い」ということです。介護や病気、育児などの事情があり、所属長が承認した場合を除き、原則週5日間すべてで出社が求められます。

NECも出社率を4割程度と想定して2025年度末までに京浜オフィスを25%削減する一方、リアルな共創空間にも力を入れるとのこと。

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この動きは日本国内だけではなくアメリカの大手企業の間でも広がっています。イーロン・マスク氏が率いるテスラでも「最低40時間、オフィスに出勤して働かなくてはいけない。リモートで働いていいのは勤務時間外の作業のみ」というメールを全従業員に出したり、グーグルでも原則として週3日出社を求めるとしています。

2021年冬に行われたNHK 100社アンケートでは、リモートワークについて規模を拡大して継続が約10社、現状維持以上が約半数でした。

働き方の歴史

いままでの人類の働き方の歴史を振り返ってみると、18世紀後半の産業革命までは第一次産業に従事している人が大半でしたので、勤務地は自宅近くの農耕地でした。産業革命後は「工場」「作業場」「事業所」等の概念が生まれ、自宅との間の「通勤」が発生するようになります。日本でも明治維新後、欧米型の産業の導入と鉄道や路面電車の発達により、1900年代には大都市で朝の出勤、夕方の退勤が通学の学生・生徒と共に大きな流れを形成したようです。

第三次産業が主流になってくると、デスクワークを行うホワイトカラーが事務所で書類の山に囲まれて仕事をするようになってきました。1970年代のコンピュータによるOA (オフィス・オートメーション)化によりコンピュータは導入されたものの事務所には縛られる働き方が続きました。

そして、2010年代になりコンピュータやモバイル機器、ネットワークやクラウドコンピューティングの発達によって、やっとリモートワークができる環境が整いました。新型 コロナにより、社会が強制的にリモートワークの働き方に追い込まれたことで、技術的には可能だった働き方を多くの人が実際に体験することで、 日本でも多くの従業員がリモートワークに慣れることになりました。

ちなみに、欧米では人数の少ない拠点ではもともとホームオフィスという形で自宅を勤務場所とする制度が導入されており、富士通でもヨーロッパやアメリカリージョンでは、コロナ前から在宅勤務の働き方は一般的でした。

接客業や窓口業務についても、新型 コロナを機に、無人化、ロボット化する動きが広がってきそうです。

リモートワークにおける課題と解決策は?

リモートワークの導入によって、産業化により勤務場所が自宅から離れることにより、家事、育児、介護、地域交流などがやりにくくなっていた問題を解決し、再び自宅中心の仕事環境にする選択肢が取れるようになりました。

一方、リモートワークに移行したことで発生する問題も露呈しました。リモートワーク経験者で完全にオフィスワークに戻りたいと答えた人は10%に満たない一方で、たとえば、コミュニケーションが取りづらい、長時間労働になりがち、仕事とプライベートとの区別がつきにくい、といったことが挙げられています。

また、新入社員や新しく人間関係を作る必要がある場合などにはリモートワークは不向きであることも分かってきました。このことから、ある程度のオフィスワークも織り交ぜてハイブリッドに働く工夫が必要であることが分かってきています。どれくらいの割合が適切なのかは業種業態や職種、勤続年数等によっても異なってくる可能性があり、それぞれでノウハウの蓄積を行い適切な割合を見出していく必要がありそうです。

今後の都心のビル需要や経済圏への影響は?

リモートワークへのシフトは、企業や従業員の間だけの問題ではなく、経済圏にも大きな影響を及ぼします。リモートワークであればタイムゾーンさえ同じであれば外国からでも同じように仕事が出来てしまうため、採用条件を日本に絞る必要がなくなってきます。そうすると国を跨ぐ労働の所得税の問題が出てくるため、国家間での綱引きが今後起こる可能性があります。

また、国内であっても東京や大阪などの大都市圏に住む必要がなくなってくるため、都心の価値が相対的に下がる可能性が出てきます。大都市圏を支える鉄道の大容量輸送、繁華街の飲食店や店舗を支える人口も今後は見込めなくなる可能性があります。

東京駅八重洲口側で進む再開発

オフィスの問題も深刻です。東京でも相変わらず大規模再開発が都心3区を中心に多く行われています。2027年度竣工予定の高さ390mの「常盤橋再開発B棟」、2023年度竣工予定の高さ325mの「虎ノ門・麻布台地区 A街区」をはじめとして、東京駅周辺 (丸の内、大手町、八重洲、日本橋、京橋)、虎ノ門周辺 (赤坂、神谷町)、品川・泉岳寺・高輪ゲートウェイ、渋谷、新宿・歌舞伎町、池袋、と目白押しです。東京圏で全国のオフィス供給床面積の約7割を占めるとのことです。

東京23区における延床面積1万m2超のビルプロジェクトだけで、約100棟、総延床面積1,000万m2となっています。オフィスの総延床面積は10年間で1,500万m2増えているとのことです。一人当たり床面積は約3坪 (10m2)と言われているため、10年間で約150万人分に相当するオフィスが増えていることになるのです。

先に出たNECの京浜オフィスの25%を削減する計画では、約14万m2 (14,000人相当) に相当する床面積が削減されます。大手企業で同様のオフィス削減計画が実施されると、仮に100社が行うと約1,400万m2の空きオフィスが発生します。こう考えると明らかに需給バランスがおかしいようにも思いますが、東京のビル事情は今後どうなっていくのでしょうか。

都心でもコロナで中小のビルも含めてだいぶ建て替えが進んでいますが、中小のビルは完成してもテナントが入る気配がないビルが多く見られます。東京ビジネス地区の5月時点の平均空室率は6.37%と1年前に比べて0.4ポイント上昇、新築ビルでは約20%と1年前よりも10ポイント以上上昇しています。

まとめ

経済圏の計画は数年前より行われるため、現在の計画はまだコロナ前の計画に基づいて行われています。新型 コロナによる修正は今後数年間かけて行われていくことになると思われますが、一度リモートワークを体験した従業員は簡単には元のオフィスワークには戻れないことも想定されます。特にアメリカではオフィス復帰の強制に対して大量退職「the Great Resignation」といった現象も起きています。

現在のところ、日本企業のリモートワークへの取り組みは半分が継続、半分が縮小・コロナ前に戻る、といった流れのようです。しかし、リモートワークの可否は今後の優秀な人材の確保の是非にも大きく関わってくると思われます。働き方改革とあわせて人事制度の抜本的な見直しによるポストコロナ時代への適応が、企業にはいち早く求められます。今後の大きな流れとしては、リモートワークを適度に取り入れることが早晩必須となってくるのではないでしょうか。

では、また!

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