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35歳、ひとり、再びはま寿司で呑む



・油断

気温も徐々に落ち着きを取り戻してきた9月末。
外より暑い室内で缶ビールを呑んでいた。
何気なくスマホでインターネットの海を漂流していると、はま寿司のサイトに行き着いたのだ。
そういえばしばらくいってないな、と思いメニューを見ると新しいフェアがずいぶん前に始まっているではないか。


今回は「牡蠣と秋の旨ねた祭り」
前回のフェアが8月下旬からスタートし今回のフェアは9月の中盤。
これは予想以上にフェアが好評だったのであろうか。
なんにせよ次から次へとフェアを開催してくれるのは嬉しい。
ふんふんとメニューを見ていく。

牡蠣がこの値段はお値打ちではなかろうか。牡蠣フライタルタルもいい。
さすが牡蠣フェアと謳うだけあって納得のラインナップである。
しかし原則的に1貫ネタを頼まないはま寿司の猛者、はま猛者からすると引きが弱い。はま猛者って何?
次から次へとチェックをしてくと

!?
あんきも軍艦が復活している!?
ということはまさか…

やはり。復活だ。
この時を待って幾星霜。
これはすぐにでも駆けつけなければならぬ。
はやる気持ちを抑え予定を確認するも週末までは予定が詰まっている。
有休をとろうかと考えたが、さすがにそこまでする?と自問。
週末まで待つか?しかし9月も末に差し掛かっている。
そこまで生き残ってくれているか…
今シーズンの生き残りをかけた分水嶺はまさに今この時であった。

・即決即動

いや、週末など待っていられるはずもない。
今日の仕事が終わり次第向かおう。戦友 ともに逢うために。
そう決めた。
よく考えると週末の店内はまさに鉄火場、並大抵の精神力では持たない。
で、あれば閉店間際になるかもしれないが平日夜だ。
悠々とした店内で久しぶりの戦友との再会を喜ぼう。
しかし悠長に構えているわけにもいかない。
なにしろ、はま寿司のフェアは「なくなり次第終了」であり絶対数ではないのだ。
即決即動、この時点で出来ることは今日の仕事をいかに早く終わらせ、戦友と再会ちゅうもん することのみである。
武者震いをなんとか抑えることもなく、めちゃくちゃ平常運転で業務をこなし定時退社したのであった。
いざ戦友の待つはま寿司へ。

・再会

18時30分、我再びはま寿司に立つ。
休日の様に外まで人が溢れていることなど当然ない。
ほっと胸を撫で下ろし入店。
しかし本当の地獄はここからであった。
平日にもかかわらず、待合室は魑魅魍魎が跋扈している。
金晩の影響だろうか。
なんとか人々の波をくぐり抜け券売機へたどり着き、受付を済ませた。
ホッとしたのもつかの間、順番が前後します!とフロアに自動音声が元気よく鳴り響き、自分の番号が呼び出された。
券売機に記載された番号はカウンターの一番奥の席。
少し広い特等席であった。

席に着くなりタブレットを確認。
とりあえずハイボールを注文し、品切れ商品を確認する。


運良く戦友はまだまだ健在な様だ。
ここで少し考える。
開幕から最高潮も良いのだが徐々にアゲていくのも捨て難い。
悩みながらメニューを眺める。
様々な商品が並ぶ中、今回の先鋒を決めた。

先鋒はしめ鯖。
こう言っちゃなんだが、味わいがない味。
惰性で頼んだ一品。
ここで嘘でも惰性とかだせぇとか言ってはいけない。死ぬぞ。

とろたくつつみ。
これぞ、といった味わい。
個人的にはもう少したくあんが主張してくれてもいい。
たくあんのちょっといいとこみてみたい!
まずネタだけをつまみにちょこちょこ食べては飲む。

ネタがなくなったらガリを乗せよう。

包んで食べるとさっぱりうまい。
回転ずしで呑むということはどれだけガリを上手く使えるかということ。
海苔とガリとシャリだけで十分な美味しさである。
回転すし各社はガリ寿司とか開発すべき。

さぁここでハイボールが空になった。
いよいよ戦友との再会だ。

一年ぶりの再会である。
見た目はそれほど変わってはいない。
が都会の風に吹かれて、社会の荒波に揉まれ、普通に荒波にも揉まれた君は、まだあの頃の君のままだろうか。

恐る恐る口に運ぶ。するとどうだろう。
まさに口の中に小さな海が口の中で誕生した。
生命の母、ミルキーはママの味である。え?
あんきもの濃厚な甘みとクリーミー感と、かにみその濃厚な苦味。
そこに気持ちばかり散らされたネギのショリっという食感がアクセントに。
甘みと苦みという相反する旨味が混ざり合う。
そして噛めば噛むほどにその旨味が口内に染み渡る。
舌自慢の方からすればそれほどの品って訳ではないのだろう。
だからこそ日本酒と手をつないで仲良く、ではなくハイボールで一気に洗い流す。最高。
あの頃の君のまま。
いや、この離れた1年という月日がより美味しくしてくれていた。

1カンで一杯片づけてしまった。これは(予算的に)まずい。
しかし久しぶりの戦友との再会だ。水を差すわけにはいかぬ。
しかし財布がそれをなかなか許してくれな

一皿で2杯呑んじゃった。
しょうがないよね!久しぶりだから!と自分に言い訳をしながらも心は清々しかった。

・〆の一皿センス

ここらに来て水分(酒)でお腹がいっぱいになってしまった。
普段は飲みながらご飯は食べず軽いアテだけで済ますことが多い。
回転すしは頼みたくなるメニューに溢れている。
そこにアルコールを入れてしまうため満腹中枢がバカになり、欲望の解放と共に必要以上に頼んでしまいがちだ。
しかし、そこを抑えスマートに店を去ってこそ真の酒飲みではなかろうか。
とか一人で妄想しながらハイボールを追加。
今日も今日とて渾身の締めの一皿を厳選。

はま寿司ビギナーには何かわかるまい。
いわゆる「悪者の寿司」である。
いか天ガーリックマヨ寿司。もはや何それ寿司?状態。
しかしこの手の揚げ物系がはま寿司は抜群にうまい。
はま寿司は揚げ物が原則揚げたてで提供される。
ゆえに夜や昼のピーク時は提供に時間がかかるため、思っているより5分前に頼むことをオススメする。

もちろん揚げたて。
つるっとした触感のイカとサクサクのころもに、甘たれとマヨネーズがマッスルドッキング。
さらにそこにハイボールで後を追う。
成ったな、これは成った。

呑みに出て〆を食べても満たされないのは非常に酷。
はま呑みにおいては揚げ物系をチョイスすれば間違いないだろう。
空腹感というヘル・ミッショネルズから見事に3カウントを奪取したところでごっそんさんでした。
あまりの満足感にいつものガリ乗せかっぱ巻き食べ忘れたわ。

・晩夏

会計を済ませ店を出るとエアコン入ってんのか!?となるぐらい涼しい風が吹いた。
そうか、あんきもかにみそ軍艦が出るということはもう秋なのだ。
ダラダラ流した汗も、恐ろしいほどの電気代も過行く思い出となるのだ。なるのか?
半袖では肌寒いほどの気温に秋の始まりを実感すると同時に、家に帰ってワンカップをレンチンして呑もう。
そうなるとなんかアテが欲しいな、コンビニでおでんでも買って帰ろうか。
空腹感の次は食欲という悪魔将軍が現れた。
しかしこれはしょうがない、食欲の秋はもう目前なのだから。

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関野ヤマ
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