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『現代短歌の鑑賞101』を読む 第七回 齋藤史

齋藤史は二・二六事件の首謀者の一人と幼馴染だったということである。
短歌からは作者の呼吸が感じられることがあるが、齋藤の息はため息のようである。

濁流だ濁流だと叫び流れゆく末は泥土か夜明けか知らぬ

『魚歌』

おいとまをいただきますと戸をしめて出てゆくやうにゆかぬなり生は

『ひたくれなゐ』

自分にはどうしようもない成り行きがある。それに応じて生きていくしかないが、ため息も出る。

死のがはより照明てらせばことにかがやきてひたくれなゐのせいならずやも

『ひたくれなゐ』

生の世界からではなく死の世界から光を当てれば、生きることは輝いていて赤い輝きなのではないか。
赤い輝きは夕焼けのようでもあり血を連想させもする。ひたくれなゐ、という言い回しは白色の光ではないにも関わらず強い輝きを思わせる。迫力のある短歌である。

参考:
『現代短歌の鑑賞101』小高賢・編著

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