読書記録 銀行を淘汰する破壊的企業 その2
昨日は、メガトレンドの「すべての銀行手数料が「0(ゼロ)」」を主題にしていたら、予想以上に書きたいことが出てきて収拾がつかなくなった。
本書が掲げるメガトレンドの2番目「預金量よりもデータ」も興味深いので、少しだけ触れてみる(少しで済むかは自信がない)。
戦後永らく、銀行は預金を集めることが主要な業務だった。銀行のランキングには「預金量」があり、それが銀行の信用力を反映しているともいわれていた。給料、ボーナス、年金、退職金、農村部では、米の収穫期など、顧客にお金が入る時期には、朝から夜まで家々を回り、預金をお願いしていた。
しかし、預金はそのままでは銀行にとって「コスト」しか生まない。利息、預金保険料の支払、通帳や預金証書の印紙税、今はほとんどみなくなったが洗剤やティッシュなどの贈答品、もちろん社員の人件費もかかる。
これができたのは、コストを上回る貸出金利息などの「収益」があったから。ところが、バブル崩壊からの平成不況。その後にかけても、金融政策でゼロ金利や低金利を維持したから、貸出利率も低下の一途。当然、収益も減少した。加えて、不況の経験から企業は借入による資金調達を手控え、貸出先の確保が難しくなり(いわゆるいわゆる「オーバーバンキング」)、金利を引き下げて貸出先を奪い合うようになる。それが、銀行の収益を低下させることになった。
金利が低い状態が変わらない以上、預金を集めて貸出に回し、両者の利息の差額で儲ける旧来のビジネスモデルは維持するのが困難となっている。
そこで、本書ではデータの活用による新たなビジネスの展開を提言している。銀行にも、預金の取引履歴などの顧客の行動履歴に関連する情報は持っているが、それを営業に活用する「データ」としては扱ってこなかった。そこに新たなビジネスチャンスがあるかもしれない。早く宝の山を見出したところが成果を得ることができるだろう。
ここで、昨日言い忘れた手数料に関するもう一つの変化を記しておきたい。それはATM手数料。今は、一定時間外や土日祝日に現金を引き出すと手数料が一緒に口座から引き落とされる。この手数料も近く廃止せざるを得ないかもしれない。決済手段が多様になったことにより、常時現金を持ち歩く必要性が低下してきているためだ。現金の引き出しに手数料を払うくらいなら、代わりにクレジットカードや電子決済など、使える手段で決済すればいい。そうなれば、ATM手数料は、ATMに客を近づけないための役目しか果たさなくなるだろう。
今日も長くなった。メガトレンドはもう一つ残っているが、また今度にしよう。