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『ヤドカリとおおきなおさかな』

<出会い>

朝、目が覚めると細波の音と波が岩肌に当たる音が聞こえる。
ひろいひろい海の隅っこに住むボク🐚は
いつも海を眺めながら、朝ご飯を探しにいく。

浜辺に打ち上げられたおさかな🐟は美味しくて、
浜辺から続く入り組んだ森にはたくさんの木々が多い茂っている。
この木々の葉っぱ🍃も瑞々しくてとっても美味しい。けれど、
葉っぱ🍃を食べるには大きな崖を登り切らないとたどり着けない。
危ないけど、美味しいからついつい向かってしまう。

この浜辺で暮らすのはとっても居心地がいい。大好きだ。
大切な仲間たちもたくさん住んでいる。

ただ、そんな日々も退屈に感じてしまう時がある。
何か楽しい事か、ワクワクして胸躍る事はないだろうか…。
あのどこまでも広がっていく大きな海に出てみたいなあ。
きっと楽しい事がたくさんあるんだろうな。
小さなボクには海を眺める事しかできない。

ボクは臆病な生き物だから、
何か大きな音や生き物が通るとすぐに貝に閉じこもってしまう。
とっても怖い…。あんな海にでたら怖くて前にも進めない気がするよ。

そんないつもと同じことを考えつつも、
今日も木々の葉っぱ🍃を食べに、いそいそと崖を登っている。
崖をすこし登ると、いつものひろい海が見えてくる。
とても静かで綺麗な海。
この風景と波の音を聞くのがボクの癒しだったりする。

だけど、今日はいつもと様子が違う。
とてもおおきなおさかな🐟が海の浅瀬の方であばれてる?
ボクはすこし機嫌を損ねながら、
『綺麗な波の音が聞こえないじゃないか…』
おいしそうな葉っぱ🍃を見つけたら、
あのおさかなが何なのかつきとめよう。

ノロマな脚を必死に動かして、崖の上にようやく辿り着いた。
いつもの特等席で葉っぱ🍃を見つけて、海を見てみる。

やっぱり"おおきなおさかな"が泳いでいる。
『珍しい…こんなところにあんな"おさかな"がいるなんて…。』
よく見てみると、
"おおきなおさかな"の泳いでいる目の前には
いろんな生き物が殺到している。

『なんだろ…あの数は…。』

『周りにあんなに生き物がいたらボクは怖くて貝に閉じこもってしまうよ…。』

どうやら、人間もいる。
人間は貝ごと持ち上げられたこともあるからとっても怖い存在。
そんな怖い存在がなんで"おさかな"の前にいるんだろう。


その"おおきなおさかな"はただ泳いでいるだけじゃないみたいだ。

規則的に動いて、とてもしなやかで綺麗な動きをして魅せている。

時折こっち側見て笑顔も魅せている。声?も聞こえてくる…

とても高くて綺麗で可愛らしい声だ…。何かを伝えている?のかな。

その可愛い声は、時折とても低くてカッコ良くもなる。

どこか冷たいような奥深い声にボクは声を漏らす。

『わあ…かっこいい声だ』

可愛い声も素敵だけど、かっこいい声の方が好きかも…。

『今日は良いものを見たな…』

そう呟いた。


葉っぱ🍃を食べ終えたので、そろそろ家に帰ろう。
夜は怖いし危険がいっぱいだ。
今日はとても珍しいものを見た。
少しワクワクした気持ちを抑えながら家に向かう。
戻ったら仲間になんだったのか聞いてみよう。

家に戻って仲間に"おおきなおさかな"について聞いてみた。
どうやら、"おおきなおさかな"はシャチというおさかな🐟で

別の呼び方で”さかまた”というらしい。
みんなは"さかまた"と呼んでいるみたい。

あの泳いでたのはダンスで、綺麗な声は歌ってゆうものらしい。
他にも"さかまた"だけじゃなくて、
いろんな動物が同じような事しているみたい。
またきたらボクも行ってみようかな…。

静けさを取り戻した海の
綺麗な波の音と共に
その日は眠りについた。 

<"さかまた"との日々>

ある朝、また"さかまた"がやってきた。
ボクはワクワクする気持ちを抑えながら、見にいく事にした。

そこには本当にたくさんの生き物たちが
"さかまた"を見ようと集まっている。

ボクは怖くてその中には入っていけないから、
ずっと後ろの目立たないところで"さかまた"を見ることにした。


 "さかまた"を見て驚いた。

そこにいるのは、本当にボクと同じ生き物なんだろうか。

"さかまた"はとてもダンスが上手で、歌声も綺麗で、

そして何よりもお話が面白い!歌にも種類があって、

どれも個性的な感じがして聴いているとワクワクドキドキする。

こんな"おさかな"がいるなんて!"さかまた"とおしゃべりしてみたいけど、
あまりにも人気があっておしゃべりは直接する事ができないみたい…とても残念…。

ただ、

"さかまた"が帰った後にみんなが海に向かって

何か書いたものを浮かべているのを見た。

あれはなんだろう?仲間に聞いてみると、

あれは"さかまた"への手紙らしい。

海へ手紙を浮かべると、"さかまた"が時間がある時に読んでくれるらしい。

『それなら、ボクにもできるかも!』

『でも、何を書いたらいいだろう』

『ボクの小さな手脚じゃあ、ろくなものがかけない気がする…。』

『あ、そうだ…!あの崖の葉っぱ🍃を持って帰ってこよう。きっと美味しいしよろこんでくれるだろう!』

そうして、ボクは葉っぱ🍃を必ず一枚、崖を登る時は持って帰ってくることにした。あまり今まで誰かに伝えるものを書いた事がないから、なんて書いたら良いかわからないけど、"さかまた"に気持ちを送ろう…!。

『すこし恥ずかしいし、このくらいにしておこうか…』

そこからの毎日は、朝起きた時、寝る前、
"さかまた"に会うたびに、その手紙を海へ浮かべた。
みんなもとても"さかまた"の事が大好きで、
それぞれの想いを色んなものに書いて、手紙にして海へ浮かべている。

"さかまた"はとっても優しくてその手紙を見て、
みんなに返事をしてくれたり、見たことを報告してくれる。

"さかまた"が来ている時も手紙を流すと、
その場で読んでくれることもあって、
その時が1番ドキドキするし、少し恥ずかしさもあったけど、
それだけで、みんな嬉しそうな顔を浮かべて喜んでいる。

ボクも同じだった。
それを見てボクもとっても微笑ましい気持ちになって、同じ気持ちで喜んだ!

誰かの誕生日を祝ったり、
おもしろい名前をつけてあげたり、
普段の事を話して笑い合ったり、
時には頭からかぶりついて吸い上げたり
なんだか言葉にしにくいふざけ方もしてたけど…
そんな時間がとても楽しかった。みんな笑っていた!

『誰かが喜んでいるところを見て、
自分も喜ぶなんて今までこんなことなかったのに…!
"さかまた"のおかげだなあ…』

退屈だった日々はいつのまにか彩り豊かな日々に変わっていた。
ああ、幸せだ!今までも幸せだったけど、"さかまた"と出会って
ドキドキワクワクするし、毎日が明るくって楽しい!

ただ、少し悩みがあった

"さかまた"の来る日がわかってればいいのに…。
他の人気の動物達は来る日を事前に教えてくれているらしいけど、
"さかまた"は来る日を教えてくれない!

昔から"さかまた"を好きな人たちに聴くと、
予定表となるものがあるらしいけど、
新しく書き込まれることはほんとどないそう!
『そうか、"さかまた"はきっと忙しすぎるんだね…』
『…』

なんだか変な間があった気もするけど、
『"さかまた"は可愛いからね』と言われて納得した。

毎日葉っぱ🍃を取りに行くけど、

今日"さかまた"が今来たらどうしよう…とドギマギする。

でも、"さかまた”は本当に忙しくて、大変そうだった。

"さかまた"はよく見たら体もボロボロで、とっても頑張ってるみたい。
そんな頑張ってる"さかまた"を見て、ボクも見習おう!と頑張った。

体調が悪い日も葉っぱ🍃を取って仲間にあげたりしたけど、
これはとっても大変なことで、何日も続けられることではなかった。

"さかまた"は自分の体がボロボロになってまで、
みんなに会いに来て元気をくれている。

『"さかまた"ってすごいな…。尊敬できるな…。
こんなおさかなは他にはいないよ…。』
本当に心からボクは"さかまた"を尊敬した。

ボクはいつのまにか"さかまた"が大好きになって、
周りにいた生き物達は怖かったけど、
自然とみんなの中に入っていくようになっていた。

できるだけ近くで"さかまた"のお話を聴きたい!
そして、いつのまにか毎日一緒に"さかまた"を応援していた。

『ここではずっと暮らしてるけど、こんなに胸が高なった事はないや…。』とっても楽しい日々だ!幸せだ…!
別の生き物のみんなとのも少しずつ関わりをもててうれしい!

でも、そんな日も長くは続かなかった。

<大切なお話>

今日も"さかまた"が浜辺まできてくれた。
とても楽しみだけど、どうやら大切な話があるらしい。
なんだろう?"さかまた"の大切な話ならちゃんと聴かなきゃ!

 『ばっくばっくばく〜ん!今日は、みんなに大切なお話があります!ごめんね。みんな。"さかまた"はこの浜辺にはこれから来れなくなります。本当に申し訳ない気持ちでいっぱいです』

唖然として言葉が出なかった。
本当に衝撃だった。みんなもその場で泣き出してしまっている。
ああ、こんなにも早く、こんなにも楽しい日に、終わりが来るなんて。

『"さかまた"と会えなくなっちゃうなんて…。』

こんな小さな臆病なヤドカリなんて、
サカマタにも覚えてもらえてないだろうし、
このやり場のない気持ちをどうしたらいいかわからなかった。

でも、サカマタは前を向いて

しっかりとした声で気持ちを話した。

『実はこの浜辺に来ることはとっても難しくて体が傷ついたり、辛い事がとてもあった。でも、みんなに会えるのことが"さかまた"の幸せだったよ。本当にここにいる時間がとっても大切で、みんなといるのが1番楽しかった!"さかまた"はこれからも頑張るよ!』

『まだ、すこし一緒にいる時間はあるから最後まで楽しもう。そして、見届けてね。』

みんな泣いていた。

それだけ"さかまた"への思いが強かったんだろう。

ボクはまだ"さかまた"と会って間もないし、

思い出と呼べるものが少ないから…。



あれ…?



なんで。。。



違った…。



ボクも涙を流している。



おかしいな…。



泣いたことなんてほとんどないのに…。



ボクは気づいたんだ。
"さかまた"がどれだけ大切な存在で、

忘れっぽいところも、

妄想癖があるところも、

体を洗わない日があるところも、

賭け事好きなところも、

考えも、歌声も、ダンスも、仕草も、笑顔も、

努力家なところも、

頑固なところも、

体調が悪くても頑張り続けるところも、

音楽に対しての姿勢も、

少し抜けてるところも、

歌に対してのこだわりがあるところも、

家族思いなところも、

人が大好きなところも、

優しい気づかいができるところも、

お話がおもしろいところも、

たくさん寝るところも。


何もかもひっくるめて

大好きなんだなって…。


"さかまた"を見てるだけで…

幸せな気持ちがこんなに溢れてくる…。

なんで今まで気づかなかったんだ…。


別れがわかってから気づくなんてずるい…。

そう自分を問い詰めた。好きとは言ってるくせに、

周りが怖いとか恥ずかしいとかそんな気持ちで

"さかまた"への応援する気持ちを抑えてたなんて。

自分の甘さにとても心が荒んだ。

"さかまた"はこんなに頑張ってこの浜辺にきてくれているのに…。



…。



でも、もう臆病になって貝に閉じこもっている時間なんてなかった…


できることなんてちっぽけだけど、


"さかまた"に何もお返しもできずに、全てが終わってしまう。


周りに迷惑さえかけないなら、


"さかまた"にこの気持ちをいっぱい伝え続けなきゃ!


後悔だけはしたくなかった。今ままでここで生きてきたけど、仲間も生活も何も後悔はなかった。大変な事もあったけど、後悔だけはしてこなかった。


そこからボクは葉っぱ🍃により一層、想いを強く書くことを心に決めた。

"さかまた"に覚えてもらう必要はない。

"さかまた"がこの浜辺に来てくれて、

感謝していることとかいっぱい!

全部全部別れが来るまでは伝え続けないと…!


どこかで見たかどうかも覚えてない。

手紙でもみんなもきっと応援を送っている。

そんなありきたりな言葉でも

それが"さかまた"にいっぱい届いて

すこしでも"さかまた"が未来が

幸せになってくれればいい。

みんなも同じ想いで"さかまた"に手紙送っていた。


あとから来たボクは

前からずっと"さかまた"が好きだったみんなを見て勇気をもらった。

本当にたくさんの生き物たちが"さかまた"を愛していた。

『私は沙花叉のお姉ちゃんなんだ…』って言ってる

色んな種類言葉を話すことができる頭のいい人や

砂浜に"さかまた"絵を描いて送っている生き物たち

光る"さかまた"カバンを作っている人

"さかまた"の絵本を作って届けているお花さん

"さかまた"が好きでずっと求愛している本もいたり、

詩みたいな素敵な言葉を送る猫さんもいた。

星に"さかまた"という名前を付けてあげている人もいた!

兄弟になりたい生き物もいたり、

"さかまた"をママだと言い張る生き物もいた。

ピンク色の可愛らしい犬っぽい人気動物と"さかまた"が好きな過激派もいた

みんなそれぞれが個性豊かに"さかまた"に

形が違ってもストレートに好きを伝えていた。

そして、笑顔を届けていた。


まだボクだけは"さかまた"にもらってばっかりだった…

"さかまた"にもっとお返しをしないと!

ただ、そう決意してもボクにできることは小さくて

葉っぱ🍃にできるだけの想いを乗せて、

それを海に流すことしかできなかった。

『"さかまた"がくれてるものに対してのお返しが少なすぎるよ…。』

残された時間が過ぎていった。


そんな時"さかまた"から

『オカヤドカリさん、お手紙見てるよ。いつもありがとう』

そんな言葉をもらった。短い言葉だったけど

心臓が高鳴って、"さかまた"を見ながら本当に涙が出てきた。

『あぁ、ボクはまた"さかまた"にもらってしまった…。』

見てもらえなくても、どこかで目に入って力になれればと思って

浮かべていた葉っぱ🍃を"さかまた"は読んでくれていた。

こんなに嬉しい事はないし、とても幸せだった。


大切なお話の後は

"さかまた"は浜辺に現れては、

満面の笑みでみんなとおしゃべりして、

みんなとの時間を大切にしてくれた。


他にも、


背中に羽の生えた人型の人気者の天使さんと、

地図を広げてピンを持ってる人気者のお姉さんと、

3人でダンスや歌を披露したり


ピンク色の可愛らしい犬っぽい人気動物と、

二人で歌ったり、おしゃべりしたり、遊んだり、


紫色の帽子を被ったとってもとっても可愛い美少女と

ラブラブしたり

(この美少女といる"さかまた"少し変だったな…目が怖かったような…
 噂では匂いを嗅ぐために帽子を取ろうとしたことがあるらしい…
 "さかまた"がそんな事するはずないよね…!)


大きな角の生えたカッコちいさい生き物と

大きな羽の生えたお姉さんっぽい鳥さんと

ピンク色の可愛らしい犬っぽい生き物と

『ござる〜!』が口癖のサムライと

とんでもなく迫力のあるステージを披露したり

それぞれが考えた歌を次々に歌っていくメドレーは圧巻だった!


怒涛のように過ぎていく時間を

ボロボロになりながら、

大切大切にして、

この浜辺に、

みんなに、

会いに来てくれた。


別れが来ることは悲しかったけど、

本当に一日一日が楽しくって

”さかまた"には感謝しかなくって…。

本当に大好き。本当にありがとう。


たった5文字で伝わるとは到底思えないけど、

直接言えるなら『ありがとう』って伝えたい。



本当に『ありがとう』



<お別れ>

別れの日がやってきた。

"さかまた"の別れの日は、

"さかまた"の最後のステージがある日で

その時間はあっという間に過ぎ去った。

"さかまた"が自分で作った歌や思い出の歌、

苦手と言ってた頑張ってきたダンス。

その集大成を披露して、

仲間達と手を取り合って、この浜辺から旅立とうとしていた。

"さかまた"は浜辺に背を向けて海の方へ向き、

みんなが応援する声を聴きながら浜辺からゆっくりと離れていく。

その声援を焼き付けるように。ゆっくりと。


止めようとした仲間たちもいたけど、

"さかまた"の事を思って仲間たちもその姿を見届けていた。

"さかまた"と仲間たちは絆で結ばれていた。

本当にお互いを大切に思っていて、

それぞれみんな目指しているものは違うけど、

支え合って、協力して、笑いあって、喧嘩もして、今日まで歩んできた。

みんなもそれを知っていたし、気持ちを汲んで涙を流した。

ボクもみんなの中でいっぱい泣いた。

本当にみんなに愛されていたんだね。

そんな"さかまた"が大好きだったし、みんなもそう思ってるよ。






"さかまた"にはやりたい事があった。


きっとそのやりたい事を


このひろいひろい海のどこか


別の場所でやり続けるために決断したんだ。


この浜辺に来るのは大変だから、


もっと自分を大切にしたいと思ったんだ。


みんなもボクも望んでた事じゃないか。


とっても苦しくて辛い決断をありがとう。


そして、"さかまた"の夢に付き合わせてくれて、ありがとう。


ボクが憧れた海の遥か向こうから"さかまた"は来たんだね。


それだけですごい事なのに、そんな事に気づくのも最後だったよ…。


ボクも"さかまた"と一緒に海を泳いでみたいけど、


それは難しいから、この葉っぱ🍃に想いを載せて浮かべるよ。


仲間たちもみんなも"さかまた"が好きだったから、


辛かっただろうけど、みんなわかっていたよ。


結局1番辛かったのは"さかまた"だった。


"さかまた"はこの浜辺が大好きだったし、


ここに来たくて君は頑張っていた。


そして、みんなの事も大好きだった。


後悔はなくとも、きっと別れを悲しんでいるよね。


それまでの葛藤も決断した事も


離れることに辛くないはずがないよ。


浜辺を背にして泳いでいる今も


きっと振り返りたくてしょうがない。


それでも、"さかまた”は振り返らないんだろうね。


『沙花叉が決めたことだから…』


君はそう言うよね。


君は涙もほとんど見せなかった。


とっても強い子だね。そして、頑固だね。


常にみんなの前でも笑顔で、いてくれて本当にありがとうね。


その笑顔は君の本当の強さだよ。


勘違いされやすいのは、君が相手を思って言葉を彩ってるから。


そんな君にみんな勘違いしちゃうんだよ。


でも、本当に君をわかってくれている人はきっといるし


沙花叉もそれをわかっているよね。その人たちを大切にしてね。


涙だって最後ぐらい共有してくれてよかったのに


本当に君の意思の強さには驚かされるし


そういうところも大好きだよ。


無理はしないでね。


辛い時は我慢しなくていいんだよ


きっとそれぐらい君を好きな人は周りにいる。


体もだけどどうか自分の心も大切に。



みんな事ある毎に言っていた


『君に幸せになって欲しい。』


ボクも本当にそう思う。


それぐらい頑張ってたことを知ってるし、


みんなのことを考えてくれてたかも知ってる。


人と関わる上でも、


やりたい事でも


君は本当に努力家なんだよ。努力しすぎなくらいに。




"沙花叉"なら


どこへだって泳いでいけるし


どんなところだって自分らしく戦える。


この浜辺で得たものは本当に大きいから。


君自身がわかっていると思うけど、


すべてきっと君の力になっているよ。




どうか…家族と一緒に体を大切にして


これからもやりたい事を続けて欲しい。


このひろいひろい海のどこにいたって


"沙花叉"が頑張ってることに変わりは無いし、


この浜辺で残してくれたことに変わりはないから。


みんなの記憶にある限り、


君はみんなの"アイドル"だ




ーーーーーーー




ボクはいつも通りの日常に戻る。


いつも通り浜辺に打ち上げられたおさかな🐟か


あの大好きな葉っぱ🍃を取りに崖を登る。


特に葉っぱ🍃を持ち帰る意味はないのに


あの崖を必死に葉っぱ🍃を持ち帰る。


もう"さかまた"はいないのに、


その想いを綴って海は投げ入れる。



届かなくなっていい。


初めからそのつもりでこの想いを投げてきた。


みんなも”さかまた”が好きでまだ手紙を投げ続けている。


もし、”さかまた”がしんどくなったら、


またここにくることがあるかもしれない。


別にこの浜辺にこなくたっていいんだ。


何かをきっかけにこの手紙が”さかまた”に届いて


”さかまた”がすこしでも元気になれるかもしれない。


今までもらったものはそれぐらい


大きくて大切なものだったから。


いつもいつも私ができるのは、


この手紙に想いを載せることだけだから。






『ヤドカリとおおきなおさかな』


おしまい



沙花叉クロヱ様 へ

少しの期間だったけど、沙花叉を推すことができて嬉しかったよ。
後悔は本当にないけど、1つ願いが叶うなら、
沙花叉がデビューする日に私は戻りたいな。
最初から最後まで沙花叉を見届けたかった。

言葉を綴るのが苦手だったので、物語にして感謝を伝えたかったです。
本当は絵本みたいにしたかったけど、
思いついたときにはもう時間がなくてごめんね…。
絵本の原本みたいな感じに思ってもらえると嬉しいです。
どうかこれからの人生が華やかで君にとって大切なものになりますように。

〜オカヤのてんもより〜

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