みえないものに
与えられたものだけ受け取って生きるのは超楽チンで、選びとることをしなければならない今、慣れない作業はいつだって苦しい。
当面の悩みは就職とか仕事とか、お金を稼ぐこと、すなわち生きてゆく活動に関することばかり。文学も音楽も、本当にしにたい人の心ひとつ救えないことを身を持って知ってしまったから、真っ黒で真っ暗なその気持ちを本当に二度と味わいたくなくて、これから先、もう何も大切に出来ない気がしている。
大切にしてしまうことが怖い、と思う。どちらかというと、大切なものが出来ることで、それがどうでもよくなってしまう瞬間が来ることが恐ろしい。どんなに美しい芸術作品も愛おしい音楽も、昔自分を助けてくれた言葉も、何もかもどうでもよくなって、投げ捨ててしまえる自分と向き合うのは、ほんとうに苦しいな。自分の好きなものを無下に扱う行為は、自分自身を裏切ることと同義だと思う。信念みたいな部分を傷つけにいってるわけだから、深く、本当に自分にしか分からない自傷行為だ。
やりたいことなんか無いな、生きていたいと思えないもの。会いたいと思う人も、こんな自分を好きだと思ってくれる人も少なからず存在すると知っていて尚そう思う。人の繋がりも、音楽も文学も、人を殺さずとも生かしもしない。いつだってそこにあるだけで、勝手に救われたり勝手に裏切ったりしている。
自分の中の自分と「ひとりぼっちだね」って言い合っている。そんなかんじ。最終的に人の命を繋ぎ止めるものって何なんだろう。矛盾しているけれど、目の前の息遣いとか触れ合った体温みたいに儚く消えて忘れたことすら気づかないものしか、確かじゃない気がしている。