経営戦略、組織戦略、人事戦略（９）：組織戦略と人事戦略の接続
こんにちは。組織行動研究所代表の今井です。本日は「組織戦略と人事戦略の接続の重要性と具体例」についてお話しします。
組織戦略と人事戦略の接続の重要性
前回は経営戦略と組織戦略の接続について考えてみました。経営が上手くいっていない、あるいは、比較的順調だけどちょっと目先を変えてみたいというときに安易に組織戦略を変えることがないように、しっかりと両者の接続を考えてみましょう、というお話でした。
組織戦略と人事戦略も同じような関係にあります。これまで見てきたように、人事戦略として考えるべきことは様々あり、例えば人事制度設計や採用戦略、人材育成計画や異動・昇格、報酬制度など、挙げ始めたらきりがありません。そして、それらには「流行り廃り」があります。
危ないのは、経営陣が「うちもそろそろ人事制度を変えようか」みたいなことを言い出した時です。人事制度は（たとえばパソコンの買い替えのように）何年経ったら変える、というものではありませんが、どうも、ハコ（組織）と同じように「なんとなく変えたい」と思われているのかもしれません。
企業経営を船の航海に見立てれば、組織戦略は船の構造そのものであり、人事戦略は船の乗組員たちに対する働きかけです。船の構造（大きさや機能）は変わっていないのに、航行中に乗組員を急激に減らしたり（あるいは増やしたり）、乗組員の配置を突然変えたり、休憩時間や勤務のシフトを変えたりしたら、乗組員は混乱してしまい船の運航に支障をきたします。
組織戦略と人事戦略の接続とは、例えば、ある企業が新しい市場に進出するための組織戦略を立てた場合、人事戦略として、新市場に精通した人材の採用や育成をしたり、既存の従業員に対するトレーニングやモチベーション向上策も立てたり、新市場の進出に成功した場合のインセンティブボーナスを設計する、といった流れのことを指します。
ある企業の具体例
では、組織戦略と人事戦略の接続が成功した企業の具体例を見ていきましょう。
事例1：IT企業C社の成長戦略
ITサービスを提供するC社は、迅速な製品開発を目指す組織戦略を立て、新しいプロジェクトに取り組むために、以下のような人事戦略を実行しました。
専門チームの編成：各プロジェクトに特化したチームを組成し、プロジェクトごとに必要なスキルを持つ人材を採用・配置
トレーニングプログラム：新しい技術やツールに対応するために、定期的なトレーニングプログラムを実施し、従業員のスキルを向上
柔軟な働き方の導入：従業員のモチベーションを高め、生産性を向上させるために、リモートワークやフレックスタイム制度を導入
事例2：製造業G社の品質向上戦略
製造業のG社は、製品品質の向上を目指す組織戦略を立て、以下のような人事戦略を実行しました。
品質管理専門チームの設置：品質管理に特化したチームを編成し、品質向上活動を推進
従業員の意識向上：全社員に対して品質管理の重要性を教育し、品質に対する意識を高めるための研修を実施
インセンティブ制度の導入：従業員発の品質改善提案に対してインセンティブを与える制度を導入
事例3：サービス業H社の顧客満足度向上戦略
サービス業のH社は、顧客満足度向上を目指す組織戦略を採用し、以下のような人事戦略を実行しました。
カスタマーサポートチームの強化：顧客対応を専門とするチームを強化し、顧客からのフィードバックを迅速に反映する体制を整備
従業員の接客スキル向上：定期的な接客マナー研修を実施し、従業員の接客スキルを向上
評価と報酬の見直し：顧客満足度を評価基準に含め、優れた顧客対応を行った従業員に対してインセンティブを与える制度を導入
まとめ
人事戦略とは従業員への働きかけそのものであるため、人事戦略の変更は従業員にとっての影響が極めて大きいものです。したがって、経営陣やリーダーシップ、人事部門には「なぜそのような人事戦略をとるのか」の説明責任があります。経営戦略と組織戦略が連動し、組織戦略と人事戦略もまた連動して初めて、従業員の理解・納得を得るためのスタートラインに立つことができるのではないでしょうか。
次回は、経営戦略、組織戦略、人事戦略を統合して効果的な戦略を構築する方法について考えてみたいと思います。お楽しみに。
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