見出し画像

経営戦略、組織戦略、人事戦略(5):組織戦略の理論的背景

こんにちは。組織行動研究所代表の今井です。
本日は「組織戦略の理論的背景」をテーマにお話しします。


組織戦略の理論的背景

前回、組織戦略とは、船の構造そのものであり、企業の目標を達成するために、組織全体をどのように設計し運営するかを計画すること、と定義しました。では、組織戦略にはどのような理論があるのか、一緒に見ていきましょう。


1. 階層別組織

階層別組織(ヒエラルキー組織)は、伝統的なピラミッド型の組織構造であり、職務と権限が階層状に整理されています。指揮命令系統がはっきりとしており、トップダウンの意思決定が特徴で、大企業や公的機関によく見られる組織形態です。

  • Max Weber(マックス・ウェーバー)の官僚制理論:官僚制は明確な役割分担、公式な規則と手続き、職位に基づく権限体系を特徴とします。この理論によれば、官僚制は効率性、公正性、予測可能性を確保するために設計されています。具体的には、職務の専門化、階層構造、文書主義、非個人的関係、キャリア志向が重要な要素となります。

2. プロジェクト型組織

プロジェクト型組織は、特定のプロジェクトや目的の達成に向けてチームを編成するものです。当該プロジェクトの成功に必要な専門スキルをもったメンバーが集まり、プロジェクト終了とともに解散、またはメンバーが別のプロジェクトチームに異動したりします。

  • アジャイル組織:アジャイル組織は、変化に対応しながら、迅速に製品やサービスを開発・提供するための組織形態です。小さなチーム単位で作業を行い、短いサイクルで成果物を出して、フィードバックを基に改善を繰り返すことを特徴で、特にソフトウェア開発において広く採用されています。

Designed by Freepik

3. マトリックス組織

マトリックス組織は、製品軸×機能軸や製品軸×地域軸のように従業員が複数のレポートラインを持つことが特徴です。製品や機能、地域といった専門的な軸で従業員をまとめることによって知識の共有と社内リソースの効率的な利用が促進されます。

  • Stanley M. Davis(スタンレー・デイヴィス)とPaul R. Lawrence(ポール・ローレンス)のマトリックス管理理論:DavisとLawrenceは1977年に著書「Matrix」においてマトリックス組織を調査分析。マトリックス組織を「機能型」「製品型」「プロジェクト型」「混合型」の4タイプに分類し、メリットとして変化への柔軟性、専門性、顧客志向、人的資源の有効活用を、デメリットとして権限の混乱、コミュニケーションコスト、複雑な調整、従業員のストレスを挙げています。

4. コンティンジェンシー理論

コンティンジェンシー理論は、組織の構造や戦略は環境や状況に応じて変わるべき、という考え方で、組織が最適なパフォーマンスを発揮するためには、外部環境、技術、規模、文化などの変数に適応する必要があると主張します。

  • コンティンジェンシー理論の提唱者:Joan Woodward(ジョアン・ウッドワード)は、企業の生産技術をユニット生産、大量生産、プロセス生産の3つに分類し、それぞれの生産方法によって最適な組織構造が異なることを提案。Paul R. Lawrence(ポール・ローレンス)とJay W. Lorsch(ジェイ・ローシュ)は、企業がは多様な環境下にあり、それに対応するため組織構造は機能別に分化しつつも各機能を統合する仕組みが必要と説きました。

5. Balanced Scorecard(バランスド・スコアカード)

バランスド・スコアカードは、組織のパフォーマンスを多角的に評価するためのツールです。このフレームワークは、財務的視点、顧客の視点、内部プロセスの視点、学習と成長の視点の4つの視点から組織の成果を評価します。これにより、組織全体のバランスの取れた評価と改善が可能となり、また、各視点が相互に関連することで全体的な戦略達成に寄与します。


まとめ

組織戦略の理論的背景を学ぶことで、経営者は組織の設計や運営において適切な意思決定が可能となり、変化に対応する力を強化することができます。本日ご紹介したものは組織戦略のほんの一部の理論ですが、自社の組織戦略を理論的背景とつなげて考えるだけでも経営戦略の実現に一歩近づけるかもしれません。
次回は、組織戦略を実践していくための人事戦略について見ていきます。お楽しみに。


組織行動研究所は、企業の成長を支える人事戦略のプロフェッショナルパートナーとして、組織課題の解決に向けた総合的なコンサルティングサービスを提供しています。

人事戦略の立案から企業文化に合った最適な人事制度の設計、人材採用、教育・研修、評価制度の構築、労務管理まで。
企業の競争力を強化するために、柔軟で実行力のあるサポートを提供します。


いいなと思ったら応援しよう!

組織行動研究所
よろしければチップで応援お願いします!