わんこの皮膚の病気 ー 膿皮症,治療編 ー
イヌの膿皮症の治療について説明するよ。膿皮症は犬の皮膚病で一番多い病気。でも時々治りにくい。治るのに時間がかかる。どうして?どんな治療法があるのかな?
1.治療の基本
膿皮症の基本治療は細菌をやっつける💪こと。細菌数を減らしてあげれば後は自分が持っている自己治癒力で綺麗な皮膚に戻っていく。
慌ててステロイドなどで炎症を抑え込んだり、アポキルなどの痒み止めで痒みを抑え込む必要はありません。(アトピーなどの基礎疾患が十分予想されるケースで、寝ていられないほどや診察台の上でもずっと引っ掻いているような場合は別ですが・・・)
炎症や痒みを抑え込んでしまうと、細菌の影響がきちんと除外できているか分からなくなってしまうことがある。
2.治療は主に2種類
1.外用療法
2.内服による方法
3.現在は外用療法が主流
私が獣医になった20年くらい前までは2.の内服療法が圧倒的に主流でした。
「 ”セファレキシン”という抗生物質を2週間使えば95%の膿皮症は改善に向かう 」なんて言われたものです。
でも、私達獣医師と、おそらくはヒトのお医者さんたちも、この数十年抗生物質を使いすぎた。膿皮症に抗生物質、ちょっと怪我をしたら念のため抗生物質、ちょっと咳したら抗生物質、手術後は必ず抗生物質、入院中は必ず抗生物質。。。。😓
結果・・世の中には一般的に処方される抗生物質に対して耐性を持つ細菌(薬剤耐性菌)が増えすぎてしまいました。。特にメチシリン耐性菌は一般的に使われるβーラクタム系の抗生物質(ペニシリンとか、セファレキシンとか、アモキシシリンなどが含まれます)は全部効かないと考えるもので、これが大変に問題になっています。
なので、現在はなるべく外用療法からトライしようね!👍🏻
という考え方が主流になってきています。
4.耐性菌って何?
医学領域でMRSAって聞いたことないです?これはメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(Methicillin‐Resistant Staphylococcus Aureus)の略で、ヒトの病院の入院患者さんの間で流行ったりして時々話題になりますよね。
イヌの場合はちょっと菌の種類が違うのでMRSP(Methicillin‐Resistant Staphylococcus Pseudintermedius)ってなるんですけど、現在はこれがとっても多くなっていて一般病院で30%近く、大学病院などに来るイヌの実に6割以上の膿皮症症例からMRSPが検出されている。(2021年獣医皮膚科学会発表)
イヌのブドウ球菌は、普通ヒトに定着して病気を引き起こすことはないのだけれど、お家にご高齢の方や免疫抑制剤を使っている方がいる場合はやはりリスクになる。
そうでなくてもイヌ本人が今後他の大きな病気(肺炎とか)を起こした場合に効く抗生物質がほとんどない!!😱っていう事態に陥いるかもしれない。
耐性菌は抗生物質を使うことで、細菌が変化して現れてくると考えられているので、耐性菌を減らすには抗生物質を使わないことが大切なんです。
5.外用療法はどうやるの?
外用療法としては、クロルヘキシジンという比較的優しい消毒薬(菌には効果あり!)で患部を消毒してもらったり、部分洗いしてもらったり、
菌の抑制作用を持つ成分が入ったシャンプーを使ってシャンプーや薬浴をする。「する」と一口に言うけど、菌は叩いてもすぐわずかに残った菌が増殖してしまう。だから、1日2回の消毒が必要。患部によけいなフケや分泌物が付いていると、本人も不快だし、また細菌のエサになってしまうので、1週間に2回くらいシャンプーで清潔にしてもらう必要がある。
マイクロバブルや、炭酸水の薬浴も効果的。菌が皮膚の内部に入りにくいように、皮膚の状態を整えるという意味で、薬浴やシャンプー後は保湿をすることもとても大切。
・菌を洗い流して菌の絶対数を減らす。
・菌を殺菌、抑制する。
・皮膚の状態を整える(スキンケア)
の3本立てですね👏
ちなみにこれ、自分で書きました。Sketchesというアプリです。頑張った−😂
何時間やってたかなんて。。。。? 恥ずかしくてとても言えません。。。😅
もう少し明るい色にしちゃえば良かったなーとか思ってるんだけど、もうこの絵はいじらないことにします。。。またいずれ。。。今度はもっとスムーズにいくかな?😆
6.治療は飼い主さんと一緒に💞
外用療法はお薬を飲ませるだけの場合と比べて飼い主さんの協力がずっと必要になるので大変なんですけど、どうかそんな事情をご理解の上で治療に参加してください。
よろしくおねがいします。🙇♀️
でもどうしても大変で、もう気が狂っちゃう!!みたいな時は遠慮せずに言ってください。病院によっては薬浴をお手伝いできます!!
7.背景にある病気を探す
膿皮症は他の皮膚病が元になっていることがある。治りにくい場合、繰り返す場合はそういう他の病気を探す検査にすすむ場合がある。
それについてはまたいずれ・・・
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