離職率41.5%の悲劇 地獄の中で体験した組織崩壊の罠と会社運営のジレンマとは
1,はじめに
はじめまして。
スキルティ株式会社代表の中塚と申します。
弊社は主にスタートアップ・スモールビジネス向けに組織マネジメントシステムや コンサルティングを行う会社として、2022年2月に設立いたしました。
この会社を立ち上げた理由。
それは私が経営しているもう一つの会社である、
ネットワークエンジニア専門のIT派遣・SES(システム・エンジニアリング・サービス)事業を運営するネットビジョンシステムズ株式会社での苦い経験があるからです。
IT派遣・SESは、エンジニアが現場常駐になることが多いです。
そのため、本社や同僚など自社社員とのコミュニケーションが少なく、
関係が希薄化し、帰属意識が低下しやすいビジネスモデルです。
弊社でも2016年に社員数拡大と帰属意識の低下で
離職率が40%以上にものぼりました。
また、帰属意識を表す従業員エンゲージメントの偏差値は47.8、
フロントマネージャーに至っては27.6と壊滅的な体験をしました。
そこから、多くの書籍や様々なコンサルタントや専門家など
これまで多額の投資を実施して組織改善を推進しました。
さらに、その過程で考案した新たなマネジメントの仕組みで組織を整え、
従業員エンゲージメントを偏差値71.5まで飛躍させ、
離職率10%以下の帰属意識の高い会社に変革させることができました。
現在では自律的に社員が成長し、低予算で組織運営ができています。
また、エンゲージメントの向上により、売上だけでなく利益率も大幅に改善しています。
この新たなマネジメント手法が弊社だけでなく同業界、さらには他の業界の日々忙しい経営者やプレイングマネージャーの方々の一助となり、
より生産性高い組織運営ができることを願って、
スキルティ株式会社を設立しました。
エンゲージメントが壊滅的な時期を経て、
どのように社員のエンゲージメントを高め、会社を立て直していったのか?
私が体験し、考え、実践したこと。
これらをこのnoteでお伝えしていければと思います。
このnoteが私と同じように組織の運営で悩むだれかの助けとなりますように。
まずは、エンゲージメントが低かった時代の会社の状況について、
お話しさせていただきます。
2,順調だった創業期
私は30歳でNTTを辞め、フリーランスで独立。
NTTという大きな組織を出て、フリーランスとして仕事をする中で感じたことは、業界全体の人材不足でした。
この業界のためにも課題を解決したい。
その思いで「ITインフラエンジニアを輩出し続ける」というビジョンを打ち立てて、
ネットワークエンジニア専門のSES会社としてネットビジョンシステムズ株式会社を設立しました。
2011年、私が34歳のときでした。
設立した後は高校の同級生や部活の後輩に声をかけて仲間を増やし、
組織は一気に30人ほどになりました。
3,組織の歯車が狂い始めた時期
順調だった組織の歯車が狂い始めたのが2015年ごろ。
このころから100 人の企業を目指し、採用のギアを入れはじめました。
リファラル採用に加え、媒体を使った採用も行い始めました。
採用媒体を使うと、うちの会社に来てくれるのが嬉しくて、
自社に少し合わないなと思っても実は採用してしまっていたんです。
加えて、その当時の私の経営への意識も歯車が狂い始めたきっかけの一つだと思っています。
人を採用してSESとして現場に派遣していくことが経営だと思っており、
人事評価についても査定のタイミングですればいいや、と思ってしまっていました。
この2つが相まって歯車が狂い始めました。
致命傷になったのは人事評価制度でした。
社員増加を見越して、2014年ごろからコンサルの方と人事評価制度の構築を始めていたのですが、実際の組織には上手くハマりませんでした。
4,地獄だった第二創業期
経営方針の実現と社員の成長のためと言われ、約60個の評価項目を設定しました。
ただ、60項目の1項目ずつにコメントを記載する設計だったため、メンバーも上司も疲弊してしまいました。
メンバーは評価項目が多いゆえに、それぞれの項目には一言だけ書いて提出してくるのが常態化していました。
また、それを評価する上司はひとり3~5人分の60項目分の評価シートを3ヶ月に1回チェックする必要があり、「しんどい」という声が上がっていました。
加えて、当時人事評価をエクセルで管理していたため、総務もパンク…
実際の社員の様子を見ても、無断欠勤が相次いだり、パソコンをなくしてしまう社員がいたり…
毎日毎日、電話がかかってくると「何かトラブルか」とびくびくしていました。
そして極めつけは離職者の急増。
媒体で採用した社員を中心に、たくさんの社員が辞めてしまいました。
実際の数字が一番深刻さを物語っていると思います。
2016年の離職率は29%、2017年の離職率はさらに増えて41%…。
中には、査定の結果昇給したにも関わらず、
「給料が上がる理由が分からない」という理由で離職したメンバーもいました。
それくらい、今考えると社員の納得感を作ってあげられていなかったんです。
また、昔から会社を支えてくれた社員も数名会社を去ってしまいました。2016年から組織のエンゲージメントに対する社内調査も始めていたのですが、
当時のフロントマネージャーのエンゲージメント偏差値は27.6。
マネージャー陣までもが疲弊し、まさに地獄でした。
マネージャーから言われた中で一番ショックだったのは、
「教え損です。」という言葉。
成長すると転職してしまうメンバーが多く、どうせ教えても辞めてしまうんだから成長させない方がいい、という考えがマネージャーたちの中に生まれてしまっていたんです。
未経験から社員を教育して活躍してもらいたい、成長して喜んでほしい。
この思いで会社を経営していた私にとって、
マネージャーの「教え損です」という言葉はとてもショックでした。
この地獄の状況の中で感じたジレンマ。
SESは会社や上司から離れ、現場に派遣されるがゆえに、
本人の成長が日々の現場に依存してしまう。
そして現場のマニュアルに沿って決められた業務を行うだけだと、
日々のルーティーンをこなして行くのみの「作業者」になってしまうという問題がある。
だからこそ評価項目を細かく定め、「作業者」にならないように成長を会社がサポートすることが若手にとっては必要です。
しかし、一方で、評価項目が多いとマネージャー陣が疲弊してしまうということを肌で感じました。
このジレンマを解消すべく、私たちは2018年から人事評価の項目は減らし、同時に弊社のMVVを策定し、所属意識を高める施策を始めたのです。
この舵取りにより、徐々に離職率は下がり始めました。
さらに、ある秘策により 2018年には27.6だったフロントマネージャーのエンゲージメント偏差値は、2020年以降は70前後まで飛躍しました!
さて、本日はここまでといたしましょう。
次回からは、離職率を抑え、エンゲージメントを高めたネットビジョンシステムズの秘策を詳しくお話しさせていただきます。