「レバ刺しみたい」だったアイツ その2

すみません、その1だけでまとめるはずが、あとから思い出すことも多くて長くなっております。

そもそもプロット無しで、思い付きで書いているため、文章構成はめちゃくちゃ。読みづらくてごめんなさい。


やっとメスが入ります。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



とうとう手術当日。

その日の最後に手術をするとのことで、夕方早め、昼過ぎよりはちょっと遅めにお呼びがかかると聞いていた。

朝から絶食絶水である。

その前日のことだ。
夕食が終わったとたん、ナースがやってきて、


「すけっちさんは明日手術なので、配膳の間違いがないようにこちらを置かせてもらいますね」


と、言いながら、どーんと、以下の内容の立札(結構なデカめ)を置いて行った。


---

<食事中止>

0000号室 すけっち様

★7月xo日手術の為、

食事:7月xx日夕食後より中止

水分:7月xo日 0時より中止

「6:20に朝分の内服薬をお飲みください」

---

※カギかっこ内は手書き


……。

萎える。


うん、間違いないようにするのは正しい。
気分を取り直していこう。

というわけで、夜中の0時から水中止だが、朝起きて6:20には服薬のためにちょっとだけ水が飲めるわけだ。

(確かココでも、「どれくらい水飲んでいいのか」を聞いた気がする。執念。「コップ1杯未満ですかね~」と明るく答えが返ってきて涙した)

夕食後、最後の晩餐よろしく最後の水分補給と称して、2Lのペットボトルのお茶をラッパ飲みした。


本当にお茶やお水が飲めないのが苦痛すぎる人間なので、アホみたいだがここは執着した。



そして、時はきた。(©︎橋本真也)

朝6:20の服薬が終わり、水分中止だ。←そっちか。


ワタシは絶食なので、朝食配膳時は仕切りのカーテンをぴっちり閉めて忍び泣いていた(嘘)。

朝食の配膳が終わって一息ついた頃、やることねえなヒマだな、と思いながら本を読んでいると、新人らしき若手ナースがやってきた。


「点滴しますんで、針を手の甲にいれさせていただきます」


どーぞどーぞと手を差し伸べ、なすがままにするが…一向に刺さらない。

というか、決まらないのだ。血管に針が入らない。

何回か手を刺されて、怪訝な顔になりだしたワタシを見て焦りだした若手ナースが


「あの…上手く刺さらないので…いまから他の方(ベテランナース)に来てもらいます」


なるほど、慣れてないのね。

「え?他の人ってすぐ来てくれるの?」

「いや、どうでしょう…ごにょごにょごにょ」


…すぐ来んのかーい!
当然だけど他の仕事でみんな忙しいから、そりゃーすぐ来るわけない。そもそもこの人にこの仕事を任せたんだからな、来るわけねえわ。

しっかしアタシ血管浮き出やすい手してんのになあ、と思いながら、これ以上時間はかけたくないので、


「大丈夫、絶対次でできるからもう一回自信もってやってみて。大丈夫だから、絶対できるから。できなかったら人呼べばいいじゃん。でもできるよ絶対」


と、謎に根拠のない鼓舞をして、若手ナースをたきつけた。


「えええ…が、がんばります…!!」と、戸惑いつつもやる気を出した途端、針はちゃんと血管にヒットした(ようだ、素人だからわからん)。


「あ、できました。大丈夫です。ありがとうございます。じゃあ点滴つなげますね」


若いって素晴らしい。
ほら言ったでしょできるって。


そうこうしているうちに、昼頃に手術の時は立ち会う(って言っても外で待ってるしかないわけだが)つもりの旦那と母がやってきた。
(ここでも配膳がないわけだが、朝より覚悟が決まったのか、特に気にならなくなってきたのか、あんまり嫌でもなく記憶にない)


が、しかし。

ここからが長い。



絶食絶水のため、間が持たぬ。
食べない飲めないは意外と大丈夫なのだが、とにかくヒマすぎて辛い。
普段ヒマに任せて水分飲んでるんだなアタシ、と思った。

そのうえ、なぜか聞いていた時間になっても、誰も呼びに来ない。


ナースがたまにきて「前の手術が長引いてまして…」と、伝えに来るのみ。

旦那とも母とも、もはや話すこともなく。


キツい。
これは非常にキツい。
(なんなら一人の方が気が楽だったかも←贅沢)


とうとう夕方になり、陽もだいぶ傾いてきてぐったりしているところに、ようやくお呼びがかかった。



マジ待ちくたびれたんですけど。



「x階に手術室があるので、こっちのエレベーターでご案内しますね」


と、言われ、とぼとぼナースについて移動した。

家族とはここでバイバイ。

割と長い廊下を歩かされ、手術室に足を踏み入れた。


なぜかステキな音楽が流れていて(何の曲かはわからんが、確かクラシックだった?)、どうせならゴリゴリのHip Hopとかハードコアとかがかかってたら面白いのに、などと思う。
よく他だと手術中お気に入りの曲をかけさせてもらう、なんてことを聞くが、一切そんなこと聞かれなかったな、そういえば。

しかしどうせ寝るし、手術する先生が聞いてて心地いいやつがいいだろう、なんてことを考えていた。


そして、ここで会ったが百年目。

麻酔医の若造と目が合った。


「めっちゃ時間ずれちゃいましたね。てへ。」


みたいなことを言われてめっちゃにらみつけた。

くそう貴様水飲ませろ。


そして主治医の先生と何気ない、挨拶程度の会話をし、手術台へ登った。


麻酔医とナースが「麻酔入れていきますね~」と声をかける。


「すけっちさん効いて来ました?わかります?」

「あーーーー…なんかぼんやりしてきたかも」



そこで記憶が飛んだ。




◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



「…ちさん、すけっちさん、すけっちさん、聞こえますか」



結婚してしばらくたつが、仕事では旧姓を使っており、プライベート、特に病院や役所関係くらいしか新姓を使っていなかった。


なので、声がけが新姓だったので、しばらく呼びかけられても「はて?」といった感じだった。


(便宜上すけっちにしていますが、呼びかけは新姓苗字でした)



……ああ!
これアタシの名前!!
アタシ呼ばれてる!!
返事しなきゃ!!!



と、思った瞬間目が覚めた。


「手術終わりましたからね、これから病棟に戻ります」


ああ、終わったんだ…。

と、同時にものすごい寒気に襲われた。

そして「アタシ、ほぼ裸じゃね?」という感覚。

とはいえ、まな板の上の鯉は何もできない。


どうやら手術前に着ていたパジャマは当然脱がされ、手術終了後病衣に着替えさせられていたようだ。

そこのところは細かい説明がなかったので、「裸だ」という感覚にひどく戸惑っていた。


が、当然だ。

尿道カテーテルつけるって言われてたじゃん。
パイ切るのに服着てるわけないじゃん。
ちょっと考えればいろいろわかるはず。


想像力の欠如を起こしていたようだ。
やはりこの1か月尋常な精神状態じゃなかった模様。


ガラガラストレッチャーで運ばれ、流れゆく天井を見つめながら「寒い。寒い。寒い」と訴え続けるしかできなかった。



どうやら全身麻酔で若干低体温症のような状態だったようだ。

病室に帰ってすぐに、電気毛布でくるまれた。あったけえええええええ。



そして旦那と母が「帰るからね」と声をかけてくれたが、ああ、うん、どうも、くらいの受け答えしかできなかったように思う。

それくらい何もできない。

ビビる。こんな感じなんだ。



そして、そのまま眠りについた。



が、夜中、暑くて目が覚めた。

アタシ、全身汗だくだ。

喉乾いた。

手にはナースコールが握らされている…押すべき?どうだ?そこまでのことか?いやマジヤバイか?いや、そんなことないな。うーーーん?


悩んでいるうちに、巡回のナースが懐中電灯でワタシの顔を照らした。


「あ。すけっちさんお目覚めですね。どうかされましたか?」


「あ…あの、すみません毛布が暑いです…」


なんてことを訴えたところ、即座に様子を確認。
「あらー!汗たくさんかいてますね!着替えましょ!」
と、てきぱきと他の人を呼び、電気毛布をはぎ取り、汗だくのワタシを拭き上げ、病衣を新しいものにかえてくれた。


「何かあったらすぐにこのボタンを押してね」


と、病室に戻ってすぐにいわれ、握らされていたナースコール。
が、それをできなかったワタシだが、素晴らしいナースのみなさんのおかげで快適になれた。

マジ困ったときは迷わず人に頼るべきだな、としみじみと反省しながら、再度眠りについた。




目覚め、やっとの朝食。

しかし待ちに待った朝食は、ジェイルそのものだった。
食パン、サラダと牛乳とマーガリン&ジャム。以上。

…泣く。


そしてとうとう嫌だった尿道カテーテルの抜管をし、晴れて自由の身?となったワタシは、リハビリと称して点滴を手に病棟内をぐるぐる散歩した。
(抜管は確かに気持ちいいもんじゃないけど、想像より大丈夫だった)

そして、コンビニでお茶を買って飲み干した。←執念。

ああ、自由ってすばらしい。
(ワタシは一度、水を自由に飲めない地域に住む人たちに謝るべきだ。平和ボケって本当に恐ろしい)


旦那がモバイルバッテリーを手に来てくれ、夕べの手術後の話をしてくれた。


「●●先生が手術終わったあとやってきて、切ったしこり見せてくれた」


えええええええええええええええええええなんだって?!
そんなもん見せてくれるのかよ!
アタシも見たかった!うらやましい!!!!

とはいえ本人は術後。
しかもぶるぶる震えながら低体温にやられていたので、そんなもん見るの無理に決まっている。


「なんか、先生こないだ会った時と違う感じで、『取ったったぞ』って感じだった」(←普段は柔和な先生だから感じ悪かったと思ったらしい)

「そりゃー外科医って手術の時にアドレナリン出るっていうし、その余韻じゃん? ねえ、しこりどんな感じだった?」




「レバ刺しみたいだった」



…。

いや、わかるけど例えのクセ!!!!!!



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


※入院時や手術の状況など、全身麻酔もしているので本当にうる覚えです。また、医療は日進月歩です。記載したものが現状とは違う可能性が「大いに」あります。
何かご自身のお体にご不安がある場合は、専門の医療機関に問い合わせることを、強くおすすめします。

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