私の主治医、キリスト先生のこと
2023/08/07
私の主治医、通称キリスト先生との出会いについて書いておきたい。先生との出会いは人生でもほんと特別なことだったから。
なんでキリスト? それは優しいし初対面から信じられたから。あとほんとは先生の苗字+キリストなんだけど、その苗字が「イエス」と抑揚同じでちょうど良いのだ。もちろんご本人を実際にこのあだ名で呼んだりはしていない。ちょけとると思われたら困るもん。私は先生をとても敬愛しているからさ。
主治医ということはお前病気なの? って思うよね。そう、私はがん患者。子宮と卵巣のがんを患っている。がん患者の中では若い方らしく、事実入院中病棟でお会いした他の患者さんは大半が年配の方だったし、後日伺った患者会の参加者も全員私より一回りかそれ以上年上の方たちだった。私もよもや自分ががんになるとは思っていなかったよ。
がんの告知を受けたのは今治療を受けているのとは別の病院だった。2022年の11月、滅茶苦茶お腹が痛くなって救急車で行った病院で告知を受けた。「自分の体の中で死のプロセスが始まっている」という感覚はもっと前からあったんだけど、病院ってか医者が嫌い過ぎて行きたくなかった。色んな嫌な医者に会ってきたから。だからやばい血とかがあそこから出ていたけどリミットが来るまでは何もせんとこって思ってた。
で、告知。救急で担当の先生に色々聞かれた後回された婦人科の先生は30代から50代の間ならいくつと言っても通りそうな女性。血液検査の結果腫瘍マーカーの数値が高いって言われた。ホルモン異常や良性の腫瘍の可能性もあるとか言っていたけど、それってつまりそういうことだよね?その後何回か診察して検査して、最終的には12月初めに腺がんだって宣告された。
告知は母と聞いたんだけど、あらかじめ予想してた私よりこの人の方がショック受けてる感じだった。私も当然ショックは受けてたんだけど。というか、わざわざついてきて自分の感情に溺れるだけの人なんて、いても支えにならんから必要なさすぎ。あとこの病院の問診票がん告知望むかどうかの項目無かったんだよね。それって普通なの?
まあとにかくそんな感じで告知されて、入院して手術する必要があるって言われた。私はバセドウ病を患っていて以前から大学病院に通ってたんだけど、そこで手術するなら入院期間短くなるかもって言われたし、既往症との兼ね合いでも都合良さげだからがんの方もこの大学病院で診てもらうことにした。
その大学病院の婦人科へ行くのは初めてだったから、どんな先生がいるのか見当もつかなかった。そしてがんって言われたことで滅茶苦茶傷ついてたし、なんかそれ言われたことで過去に受けた無数のトラウマよみがえってすごい心の傷が開いた感じになっていた。だから診察室に入るまでめっちゃ不安でならず、どうかまともな先生であってくれって死ぬほど祈った。だってがんとかなってて、これ以上傷つくの嫌だから。
でも診察室に入って、担当の先生と対面したらそんな不安はあっさり吹っ飛んだ。その人の第一印象は、「めっちゃ賢そう、そしてめちゃくちゃ優秀そう」というものだった。マスクしてるけど賢い人の顔してるのが分かる。そして全体の雰囲気や話し方がそんな感じ。その上優しさとか配慮がある。内診の時も、痛かったらやめるから無理しないでねってすごい配慮に満ちてた。診断名は子宮体がんだったんだけど、子宮体がんは初期であれば手術すればそそれで大丈夫だし五年生存率も高いって教えていただいた。最初の問診票でメンタルの調子に関する項目が四つくらいあったんだけど、その全部が最高に悪いって結果になってしまったんだ。だからそれもあって私の不安を払拭する為だと思う。絶対治るからねとかそういう無根拠な言葉じゃなく、事実を使って私の気持ちを楽にしようとしてくださった事が嬉しかった。自分ではもう初期なんかじゃないってことは悟ってたけど、それでも。
この人は私のことを傷つけたり、酷いことを言ったりしたりはしない。むしろそんなことにならないように配慮してくれる人だ。そんな風に思った。
さっき書いたこともその理由ではあるけれど、やはり理屈を超えた説得力を私は先生から感じたんだ。信頼できるオーラがあるというか。先生の周囲にはアガペーが満ちている。
いずれにせよ、そんな風に信頼することを迷わなくていい人って初めて会った。そしてその人が私の主治医。最高かよ。
とにかくこれが私のキリスト先生との初対面で、今も先生が主治医。先生の言葉はいつも温かい。嫌だと思うことが何一つあったためしがない。だからこれからもずっとそうなら良いと思う。