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アイスダンス 全日本前に思うこと

どうも。1年ぶりの更新です。

1年前に書いたっきり放置していたが、今年も全日本がやってきたので思うことを書こうと思う。

何を?

もちろん、フィギュアのアイスダンスについて、村元・髙橋組についてだ。

髙橋大輔をみていつも思うのは「この男の才能はこんなもんじゃない」っていうことだ。眠っているものが大きすぎて、毎回演技を見て、いつも少し不満に思ってしまう。どんなに良くても、

「もっとすごいものを見せてくれ」

そう思ってしまう。彼自身にとっては不幸なことかもしれないが、多分、永遠に満足することはない気がする。申し訳ない。


さて、アイスダンスの話である。

去年の全日本は公式練習中に転倒した際の村元選手の影響もあって、結果に
ついては

小松原 美里/小松原 尊
総合得点:175.23 (FD:103.49 RD:71.74)

村元 哉中/髙橋 大輔
総合得点:151.86 (FD:84.03 RD:67.83)

(ちなみに小松原組はその後の世界選手権で総合得点で167.81なので、全日本の得点より低めに出ていることから考えても全体的に甘めの採点だったと考えられる。)

と、3連覇した小松原組とは大きな差があった。この差は1年では埋まるまいと思った人がいても当然だと思う。しかし、直前のアクシデントさえなければ大きな差は付かなかっただろうし、去年のNHK杯から全日本のRDまでの進化を見たらおそらく来年はとんでもないことになる、そう思っていた人も多いのではないか。

実際それは今年の9月のレイバーデイ・インビテーショナルでの初演技を見たときに確信に変わった。

完全にアイスダンサーとなった髙橋大輔がいたからだ。

2人の距離が違う。おっかなびっくり滑っていた去年と違って一体感がある。シングル時代のぬめりとした有機的な動きがある。最初の動きから引き付けられる。

点数についてはその時点では高すぎたかもしれないが、その点数にふさわしいポテンシャルはすでにあった。

小松原組にはかなり辛いことになるかもしれないな…

その後に行われたGPSのスケートアメリカの結果を見てそう思わざるを得なかった。そして、予想通りNHK杯では村元・髙橋組が小松原組を上回る結果となった。

6位:村元哉中/高橋大輔(日本)
総合得点:179.50(FD:108.76 RD:70.74)

7位:小松原美里/ティム コレト(日本)
総合得点:172.20(FD:104.07 RD:68.13)

正直、かなだいのRDに関してはもっと点数が出てもよかったはずだ。
一番滑走と世界大会初デビューということで抑えられたと感じた。
実際FDでは問題なく点が出ていた。

去年の全日本の時には明確にあったはずの差がもうない。
序列が入れ替わったかもしれないとさえ思った。
村元・高橋そしてマリーナ=ズエワ恐るべしである。

普通だったらこの状況の中で試合も練習もままならずに、たった2年足らずでここまでは無理だっただろうし、良い勝負はするけど順当にキャリアの長い小松原組が勝って北京に行ったはずだ。

小松原組だって順調に伸びている。NHK杯ではPBも出した。あきらかに年々進化している。他のカップルが伸びたとしても北京には間に合わなかっただろう。

普通なら。

だが、髙橋大輔は普通のスケーターではなかったし、そのパートナーである村元選手も普通ではなかったし、コーチのマリーナ=ズエワも普通のコーチではなかった。

まず村元・髙橋のカップルの相性が良すぎた。村元選手は高橋大輔の演技に惚れ込んだうえで彼をアイスダンスに誘った。そして、髙橋選手自身も村元選手でなければ受けなかったと語っていた。どちらも大切にしているものが似ているのだろう。どちらも踊れる選手で、スケーティングが良い。

そして、マリーナ=ズエワを含む環境が整いすぎていた。時間と手間を髙橋大輔という希代のシングルスケーターをアイスダンサーにするという楽しみに注ぎ込む余裕があった。チャンピオンメーカーとして全盛期だったころと違って今は半分隠居に近い生活を送っていたところに才能と可能性の塊がやってきたわけだ。力も入るというものだろう。

戦略も素晴らしい。レイバーデイの演技の動画をジャッジに送り、意見をフィードバックする。どう思われるか、どう評価されるかを見て、それをもとに改善する。ジャッジからすれば自分たちがジャッジされるような気にもなるだろう。インタビューでは確固たる評価を選手に与えて選手だけでなく、周囲にアピールしている。

NHK杯で日本にやってきたときにはさすがに勝負所がわかっていると感心した。

正直、この辺の戦略性はシングル時代には欠けていたと思う。もう少しうまく立ち回っていたり、ソチの選考について周囲が余裕をもっていられてたらあそこまで消耗せずに済んだはずだ。

真っ正直さは良いところでもあるので、誰のせいというわけでもないが。

話を戻すと、NHK杯直後のワルシャワカップではまさかの2位で表彰台に上った。NHK杯は正直、1組目の滑走だったこともあって、点数は控えめに出ていたので、それを上回るだろうとは思ったが、アメリカの3番手争いをしているグリパーを上回ったのは大きい。それで実力的には中位グループまで来ていることが証明されたからだ。

・レイバーデイでお披露目かつその演技のフィードバックをもらう
・NHK杯で改善されたものを披露し直接対決を制す
・ワルシャワでさらに実践経験と改善を繰り返す

RDとFDのプログラムについてもいえる。去年の時点で難易度の高いFDに時間を使っていて、RDはNHK杯寸前に完成するという感じであきらかにFDに集中していた。そして、2年目はFDは継続し難易度も完成度も上げて安定感も出てきた。RDは画期的な『ソーラン節&琴』を持ってきた。斬新な曲と振り付けで海外の評価も高い。

2年がかりの完璧な戦略だ。

そして、北京オリンピックの選考条件は4つ。

A) 全日本選手権大会最上位組・・・未定
B)  ISU ワールドスタンディング最上位組・・・小松原組
C)  ISU シーズンワールドランキング最上位組・・・村元・髙橋組
D)  ISU シーズンベストスコアの最上位組 ・・・村元・髙橋組

こうしてみるとポイントでは村元・髙橋組がリードしている。しかし、これまでのキャリア・実績も含めて互角と見た方が良い。総合的に見て判断するならこれまでの実績やキャリアも無視できない。とはいえ、去年の時点ではまず無理だったところから五分五分どころか優位な状況まできたのは驚異的というほかない。

おそらく全日本で勝った方が北京オリンピックの日本代表に選ばれるはずだ。どちらが勝っても嬉しく悲しい。だがそれがオリンピックの選考というものなのだろう。

個人的には演技以外の部分、その選手の人間性や環境、物語はどうでもよく、その演技がすべてだと思っている。

物語性という意味では小松原組だって素晴らしい。運命的な出会いをして国際結婚、そして夫の国籍変更までして夫婦で同じ夢を目指している努力している感動の物語だ。映画が1本作れるだろう。

村元・髙橋組だって、シングル男子日本人初のワールドチャンピオンであり、アジア人初のオリンピックメダリストの髙橋大輔が前人未到のアイスダンスでのオリンピック出場を目指す物語も魅力的だし、村元選手が元全日本チャンピオンとして再チャレンジして再びオリンピックの舞台を目指す物語も面白い。

だが、人間性や物語がいくら素晴らしくても結果は結果。結局はその場でした演技がすべてだ。

願わくばどちらもベストの演技をして、勝った方に胸を張ってオリンピックに行ってもらいたいものだ。

そして、この2組はどちらもオリンピック後も現役を続けてもらいたい。ワールドの枠などは結果に過ぎない。

ただただもっと素晴らしい演技が見たいのだ。



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