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村元・髙橋組RD感想 2020全日本フィギュア
レジェンドのデビューというパワーワードに笑ったNHK杯。
このカップルは全日本で大化けする。
そう確信した通り、その後のアイスパーク船橋の祝賀イベントの練習動画からあきらかに進化した姿があった。デビュー戦からたった2週間だ。それを見て全日本の演技を心待ちにしていたファンは自分も含めて多いだろう。
ところがよりによって当日の公式練習でフィンステップ中に転倒、転倒で村元の左足の上に高橋が全体重で乗ってしまい出場すら危ぶまれる事態に。
どこまでも一筋縄ではいかないのはカップルになっても同じらしい。
何とかRDに出場できるようで胸をなでおろしたが、村元の怪我による動きの制限や怪我をさせてしまったという自責が2人の演技を根本から狂わせる可能性が多分にあったはずだ。組んだキャリアの短いカップルならなおさらだ。大崩れしてもおかしくない状況だった。
しかし、その心配は杞憂に終わった。
あきらかにNHK杯の演技と比べて、音楽の中に入ったアイスダンサー髙橋大輔がそこにいたからだ。怪我をしてしまった村元の分もという気持ちが見えた。NHK杯では緊張しすぎて体の動きが硬く、回転速度も不安定だった右回りのツイズルが安定していてよりシンクロしていた。
パートナーの村元は痛みがあっただろうに、怪我の影響をほとんど見せずに軽快な動きを魅せて、髙橋がそれにそん色ないレベルでアイスダンサーとして追いついてきたと感じた。
正直に言って髙橋大輔というスケーターは才能は誰よりあるが、その生来の優しさと欲の無さからか勝負事になるとちょっと引いてしまうようなところがあって、それが彼の成績の不安定さを生んでいたように思う。あの性格でオリンピックでメダルをとって世界チャンピオンになるのだからその才能のすさまじさが分かるというものだ。
とにかくシングルスケーターとしての髙橋大輔はその場の状況やその心理状態で演技の幅が大きく変化する選手だった。(そこが魅力的でもあるのだが。)
だからこそ、爆発したときは観客のパワーを吸収し、本番で200%が出せてしまうような選手で誰も勝てないだろうという演技もするし、ダメなときは本人が演技後に苦笑いすることも多かった。
個人競技なら責任を取るのは支えてくれるチームやサポートしてくれる関係者がいたとしても自分一人だ。良くも悪くも自分の責任ですべてを処理できる。
だが、パートナーのいるアイスダンスにおいてはそんなことも言っていられない。本番で突っ走りすぎてもいけないし、普段より動きが悪くてもいけない。少ない観戦経験ではあるが、アイスダンサーたちのコメントを拝見する限り、練習通り100%を出すことがアイスダンスの大事な点のように感じた。
普段と違うパフォーマンスはパートナーに迷惑をかけてしまうというこの状況は、優しすぎて勝負に徹しきれない髙橋大輔にとって非常に重要なファクターになるのではないか。
どこまでも自分の勝利のために集中できる人間もいれば、自分のためには頑張れないが、誰かのためにと思ったときほど力を出せる人間がいる。
相性が良く、華があり、お互いを補える存在。
もしかすると髙橋大輔のポテンシャルを最大限に引き出すにはそんなパートナーが必要だったのかもしれない。
そんなことを思った2020年全日本のRDであった。
村元の怪我が軽傷であることを祈りながら今日のFDの時間を心待ちにしている。
すけお