3日連続関西方面の株主総会へいってきた話(任天堂、H2Oリテイリング、りそな銀行)
前書き
今年も株主総会シーズンがやってきた。
6月といえば株主総会|テツノトリ (note.com)
趣味で関西で株主総会を実施する企業を中心に銘柄を選んで株主総会へ足を運んでいたりする。世間で話題になっている課題について、実際の身近な企業がどのように対応しているのか?経営陣の質問への返しや、参加者の中にたまにいる質問がうまい人の質問の仕方等、質疑応答のやり取りがいろんな意味で大変勉強になるためである。以前の記事で書いた通り、今年の予定は6月末週に集中することとなったが、運よく日が一日ずつずれていたので、予定分は全て参加することができた。
エイチ・ツー・オー・リテイリング
阪急百貨店、阪神百貨店、イズミヤ、関西スーパー、オアシスといったの大阪北部周辺の民にはお馴染みのお店を有する。中津駅に近い、梅田芸術劇場にて行われた。実は入ったことがなかったが、やはり格式あるホールという感じがした。
100~200名程であったかと思うが、年齢層は全体として高い。ごくたまに若そうな方もおられた。
質疑応答のテーマ
国内顧客⇒海外からの顧客⇒顧客サービスビジネス⇒データ活用ビジネス
顧客開拓×LTV(生涯を通じての価値の総量の向上)×コンテンツ開発
郊外型百貨店は限界ではないか?
中途半端などっちつかずのコンセプトの店舗が多い。
接客される方の水分補給をやりやすくしてあげてほしい
女性の役員がいない
甲子園付近に店舗がない
千里中央での取り組み内容について
フードロス問題
百貨店の復活は一過性か?オワコンではないのか?
一部店舗の友の会カウンターは復活しないのか?
阪急梅田本店13階のシャンデリア、VIPルーム化は大衆化という創業者の思いに反するのではないか?
グループ会社でのポイントカードが多すぎる問題
社員への労務管理体制、育休取得状況
その他所感
利益面はもとより、利用する側目線や従業員をいたわるような意見が多かったように感じる。
議長が締めの言葉を述べ始めた直後にちょっと待ったー!!!という大声からの黙とうを願う意見がねじこまれた。宝塚歌劇団の件で黙とうをという意見だった。阪急阪神ホールディングスが8.97%の株をもっているのでまったくの無関係とも言えないかもしれないが、最早遠い親戚のようなものである。社長はたしかに痛ましい事件ではあったが、うちはエイチツーオーリテイリングということで全体での黙とうは差し控える判断をとった。個人的にはこの判断は無理からぬ判断ではないかと思う。とはいえ、同様の事態が起きないような体制をとっていることを祈るばかりである。
振り返ってみれば、運送業の2024年問題への言及がまったくなかったが、果たして大丈夫なのか?という疑問に残った。
りそな銀行
りそな銀行の本店は実は大阪だったりする。大阪市内のオフィス街の中心地区である堺筋本町にある本社地下にてささっと行われた。銀行の地下ながらホテルのようなつくりであり、クロークも整備されていた。建物自体も歴史が感じられる、御堂筋地区の景観にマッチした趣ある造りである点はぐっときた。普段なかなか入ることのできない場所でもあるので、そういう意味では来てよかったのかもしれない。
DX(デジタルトランスフォーメーション、いわゆるデジタル技術による業務の革新)を進める、という言葉が何度か繰り返されたが、具体性にかけいまひとつピンとこなかった。
銀行と言えば合併と再編の繰り返しなので、グループ内に複数の銀行が存在するのはわかるが、地区や顧客特性に応じて役割分け、という点が今一つわかりにくかった。メガバンクと地銀の住み分け、ということなのだろうと思うことにしたが、全体としてふんわりしすぎている感じが否めない。
最後の質問で、詳細な資料はQRコードから参照くださいとは株主を舐めているのか?と苦言を呈されていたご老人がいたが、改めてデジタルデバイドを感じた。
あっけなく1時間程度で終了した。
任天堂
個人的にメインの株主総会である。昨年は一騒動あった任天堂の株主総会であったが、今年は荷物検査も行われ、質問内容もどれも真面目な内容ばかりで進行には何の問題もなく無事に終了した。マリオの生みの親である宮本茂氏が今年も経営陣の一人として壇上におられた。レジェンドの話を生で聞けるというだけでも非常に価値がある。そして昨年と同様代表取締役の古川氏の議長采配があまりにもうますぎた。質疑応答の内容を瞬時に判断して、近い内容の質問があれば回答の代わりに予告動画を瞬時に流すなど、最早職人芸の領域である。
質疑応答のテーマ
目が見えない方向けの取り組み
新ハードの転売対策
インディーゲームとの距離感
AIへの取り組み
ファミコンについての取り組み
マリオ、ゼルダ以外のIPのラインナップ
月の業績予想の必要性
(マリオの生みの親である宮本氏宛)これからの任天堂
今後のハード生産体制
情報セキュリティ面
ゲームソフトの開発期間の長期化
株主への還元
任天堂のIP(知的財産)の保護
(マリオの生みの親である宮本氏宛)開発者の世代交代について
人の笑顔を奪う人への対策
(SNSトラブル、悪質インフルエンサー等)製品の価格(国内、国外)
取締役の持ち株数
ゲーム音楽の活用
などといろいろ書いてみたが、任天堂についてはコアなファンが多い企業であり、特に内容についてはいろいろなところでまとめ情報が既に出回っている。ベテランの任天堂株主の方が超詳細な実況をしておられて、質疑内容についてはそちらをみていただいたほうがより詳細である。レスをたどっていくと、全18個の質疑応答の要旨が簡潔に網羅されている。
ちなみに過去10年以上任天堂の株主総会に参加し、まとめの記事をブログで挙げておられる。本家の任天堂の株主総会の質疑応答の要旨と合わせて是非読んでみてほしい。
株主・投資家向け情報:決算発表・IRイベント (nintendo.co.jp)
N-Styles - 任天堂 Switch 3DS情報サイト
経営陣が述べた印象に残った一言
経営陣が述べた一言一言が非常に印象的なものが多いのが任天堂の株主総会の特徴である。今回は宮本茂氏が3回ほど発言される機会があったが、どれも非常に含蓄が深いものであった。
映画等ゲーム以外の手段も含めて任天堂のIPに触れる人口を増やしていきたい
(表現として)マスコミは他社と競争させたがるが、任天堂では独自の道を行くといっている。
世界中の人にどうやって任天堂を選んでもらうか?
子供が小学一年生になったら『任天堂だ』となるようにしたい
ものづくりは遊びから考える
常にホームランを狙っている
このあたりの語録を数年分集めるだけで本ができあがりそうな勢いである。実際に世に出る作品の裏にある『思い』がつながるわけで、本当によく『刺さる』のである。
その他所感
今回は最前列の真ん中付近と議長席にかなり近いところで参加することができたが、意図的に避けられているような感じが否めなかった。真ん中から一つ
全体を通して思うところ
株主総会というのは平日の午前中に開催されるのがほとんどであり、議決権行使可能な1単元(概ね100株)数万円から数十万円の投資が必要なため、なかなか参加しづらい部分もあるが、参加してみる価値は大いにある。
今年の反省点は、他の株主の方と交流してみたかったという点に尽きる。会社によっては遠くからこられる方もいる。いろんな判断基準でその銘柄を持っていたり、株主総会に参加していたりするわけで、
株主交流会が予定されているわけではなく、自分で機会を作らないとどうやらなさそうだ。
参加する株主視点で見ると、割と勉強になったり物申したいというところに意識がいってしまうが、ちょうど最近別件で主催する側に近い方の話を聞く機会がいくつかあった。壇上に上がられる方に近い方の話を聞いてみたが、発言する機会の多さに関わらず、いつ出番がきてもよいように準備しておられ、相当に神経を使われていることが伺われた。
どの会社もそうだが、朝早くから会場付近の誘導含めて相当な準備をされているわけで、壇上に上がられていた経営陣の皆様のみならず、裏方で誘導等準備をされていた方々にも感謝の念を禁じ得ない。みえないところで神経を使われていた方がいる、という点は忘れないようにしたいものである。本当にお疲れさまでした、と。