『野球格闘リーグマン』は誰が企画したのかという話(+リーグマン関連雑記)
*以下補足がない限りアイレムは旧アイレム社(現アピエス社)を意味しています。
*本記事は基本的に
THE HISTORY OF NBBM
と
Ninja Baseball Bat Man - Wikipedia
からの引用です。英語に抵抗ない方はこれらのリンク先も参照ください。
また他のサイトからの引用も行っていますが、その際にはリンクを貼るようにしています。雑誌等からの情報はありません。ゲーメストの増刊号「最新格闘ゲーム2」は確認しましたが、リーグマンのページはあるものの今回の内容に関わる情報は掲載されていませんでした。
英語の翻訳に間違いがある場合、指摘していただけると嬉しいです。
ふと
「『アンダーカバーコップス』のプランナー(企画者)は "みいはあ" (Meeher)さんだけど、『野球格闘リーグマン』のプランナーは誰なんだろう?」
と思いました。
リーグマンのスタッフクレジットを確認してみると
プランナーは「CHINTA」となっています。
"chinta irem"で検索してみると
などがヒットします。
Chintaさんは
『野球格闘リーグマン』(1993年10月発売)(9月発売説あり、北米版発売日?)
の他に
『餓狼伝説2』(1992年12月発売)
『餓狼伝説スペシャル』(1993年9月発売)
のプランナーも担当していたようです。"snk chinta"等でも検索してみましたが、Chintaさんについてはこれ以上の情報は見つけられませんでした。
ここで一つ疑問が出ます。リーグマンとガロスペは発売日が1ヶ月しか違いません(1993年9月、10月) or 同月(1993年9月)に発売されています。ゲームの規模的に同時期にこれら2作品に深く関わるのは厳しい気がします。しかも発売されたメーカーが違います。リーグマンまたはガロスペは発売が遅れた?Chintaさんは特定の会社に所属していないフリーランスで、複数のメーカーをまたがって仕事をしていた?偶然同時期に同名の変名/エイリアスが使用された?(そんなことありえるか?)
なおアイレムがゲーム開発から一旦撤退し、ナスカ(アイレムの開発者が多数移籍した、後にSNKに吸収される)が設立されたのはリーグマン/ガロスペのリリース翌年の1994年と言われています。
次に"Ninja Baseball Bat Man"、"Ninja Baseball BatMan"で検索してみたところ、英語版のWikipedia
Ninja Baseball Bat Man - Wikipedia
に結構詳しく情報が書かれており、更にオフィシャルサイトを掲げる
OFFICIAL WEBSITE OF NINJA BASEBALL BAT MAN
に
THE HISTORY OF NBBM
としてインタビューが掲載されていました。ここからキャラクター、イラスト、世界観の作成などを行った人がわかりました。
以下概要です。
・リーグマンのオリジナルキャラクターデザイン、世界観(野球がテーマなど)、ストーリーライン作成などはFabtek社、Irem America社に所属したDrew Maniscalcoさん(https://twitter.com/drew_maniscalco)が行った
・DrewさんはUSA Today誌に記載されていた当時の売上上位の映画『ティーンエイジ・ミュータント・ニンジャ・タートルズ』(1991年)と『バットマン』(恐らく『バットマン リターンズ』(1992年))にインスパイアを受け自分自身のスーパーヒーローを作成することを思いついた。更に忍者と野球バットを武器として使用するというアイディアを足し"Ninja Baseball Bat Man"、『野球格闘リーグマン』を考えだした
(Wikipediaでは1991年のTMNTへリンクが貼られていますが、時期的に1992年のTMNT IIの可能性もありそうです)
(Drewさんはバットを使用するというアイディアは映画『ウォーキング・トール』(1973年)の影響だろうと述べています/予告編にもバットが出てきます)
・Drewさんはキャラクターのイラスト化に際しGottlieb社のピンボールアーティストとして有名なGordon Morisonさんに協力を依頼した
(Development、Screen ShotsにDrewさん、Gordonさんの描いたイラストが掲載されています、最終的なデザインはアイレムのデザイナーが行ったらしく、ディティールは結構違います)
・Drewさんはもともと『スーパーマリオブラザーズ』系のプラットフォーム・ゲームを想定していた("an adventure game similar to Super Mario")が、4人同時プレーのベルトスクロールアクションに変更された("made it a four-player scrolling fighting game")
(想像でしかないですが、もとの想定だったプラットフォームを家庭用で出す、などをすればリーグマンの販売数(後述)や知名度は随分違ったのでは…とインタビューを読んでいて思いました)
(ここの文章を補足しておきます。「家庭用で出す」云々というのは「リーグマンを家庭用でも出していたら知名度が上がって、ACの基板がもっと売れたかもね」と私(かねだ)が"思った"ということです。Drewさんが(例えば『ソロモンの鍵』のように)ACと家庭用の両リリースを目指していた、リーグマンの企画がもともと家庭用として構想されていた、ということではありません)
・リーグマンの基板(ここでは基板としておきます)の販売数は、北米で43、日本で489、アジアで510、トータル販売数は1042
(日本での販売数が900という説もあるようですが、Drewさんの説明が正しいとするなら900は日本+アジアまたはおおよその全販売数という意味かも)
(販売数は更に別の説もある、詳細は後述追記参照)
・当時のアイレムが家庭用(SFCなど/PS1は94年発売でリーグマンリリース時は発売前)に注力するようになったこと、Drewさんはリーグマン発売前にアイレムアメリカを離れたがプロモーション用の様々なモノを用意していた("IREM AMERICA had everything they needed to promote the game")、しかしアイレムはそれらを何も使用しなかった("but nothing was used")ことで北米でのセールスが悪かった
・リーグマンの権利は
アイレム → ゲーム部分
Drewさん → キャラクターとタイトル名(ここは英語タイトル名限定だと思います)
がそれぞれ保持する(*2010年Drewさんへのインタビュー実施時点)
(現状アケアカ等への移植時の許諾権利はアイレムソフトウェアエンジニアリングがすべて保持している?)
(2022年現在キャラクターグッズが販売されているので、Drewさんはキャラクターと英語タイトル名の権利を保持し続けているようです)
・Drewさんの名前はリーグマンのスタッフクレジットに記載されていない("my name omitted from the on screen game credits")
・リーグマンのプログラミングは濱田慎一さんも参加したようだが、開発は北陸開発室で行われたという情報もあり、いまいちはっきりしない
(濱田さんは大阪のアイレムに所属したそうなので、リーグマンの開発の主導は北陸だったけれど大阪とも協業した?)
(スタッフクレジットのMC.HAMA AMUSE_LIGHTは濱田さんのことだと思うのですが、プログラマーの先頭に記載されていないということはリードプログラマーではなかったのかもしれません)
(*2022/06/30追記、ADNDREW WHISKEYはAndoh Kenji/Kenji Andō(漢字だと安藤健二?)さんのことだと思われます。Metal Slug: The Ultimate Historyを読み返したところ、インタビューで本人がリーグマン及び『GALLOP』に関わっていたことを言及していました。『エアデュエル』や『メジャータイトル』や『フック』などのプログラミングも担当したようです。因みに初代『メタルスラッグ』のエンドクレジット中PROGRAMの先頭にHAMACHAN(濱田さん)、ANDY(Andohさん)と出てきます)
(*2023/04/19追記、安藤健二さんがTwitterを開始していました(漢字は私の予測が当たっていました)、akioさんもTwitterを開始しニュース記事になっています、最近になってみいはあさんもTwitterがアクティブになり、続々アイレムのレジェンドがTwitterに参入しています)
・誰が「ゲームとしての」リーグマンの企画/プランナー、ディレクションを行ったのかはわからなかった=Chintaとは誰なのかは不明のままとなった
(アラン・スミシー的な扱い?)
リーグマンのキャラや世界観などはDrewさんが考え出した、もともとリーグマンはプラットフォームタイプのゲームが想定されていたなどの情報が日本語翻訳されていないようだったので、今回ざっとまとめてみた次第です。
以下2つの動画は
THE OFFICIAL WEBSITE OF NINJA BASEBALL BAT MAN
からもリンクが貼られているものですが、リーグマン好きな人にオススメです。
NINJA BASEBALL BATMAN - History of the GREATEST Named Game Ever!!! - YouTube
Meet the Makers: Ninja Baseball Bat Man - MAMECADE - YouTube
この動画ではDrewさんがリーグマンについての質問に答えています。ここでも権利所有者の話が出てきて、Drewさんは"I have all the non video game contents."と答えています。
2022年2月に出版予定の
Go Straight: The Ultimate Guide to Side-Scrolling Beat-’Em-Ups
という本に
Drewさんのインタビューとリーグマンのオリジナルデザイン画が掲載されるようです。
*2022/01/22追記
現在はタイトー社に所属、「アーケードアーカイバー」に出演したりなど、ハムスター社とも多少関わりのある外山雄一さんのtweet。
アイレム作品は「アーケードアーカイブス」として2018年、2019年頃は順調に移植されていましたが、以降は全く動きがなくなりました。つまり2年以上アイレム作品がリリースされていません。
タイトーは2022年3月2日に「EGRETⅡ mini(イーグレットツー ミニ)」を発売する予定ですが、この追記時点でイーグレットへの「追加してほしいゲームタイトル」の募集を行っています。しかもタイトー作品限定ではありません。
現在アケアカはリクエストを受け付けていないので(アケアカがPS4のみだった頃はリクエスト掲示板があった)、私はイーグレットにアイレム作品 ―― 特にアンカバとリーグマン ―― が収録されることを祈ってリクエストしてみました。外山さんがMr.HELI推しという関係で「アイレム系(特にM-92)がワンチャンあるといいな」という私の下心ありのリクエストでした。
「アストロシティミニ V」の例もあるように、メーカーの枠を超えて意外な作品が収録される可能性はあるかもしれません。
外山さんといえば
秋のシューティング祭り 2017 第6回 Mr.HELIの大冒険 ミスターヘリのだいぼうけん(Battle chopper) - YouTube
こちらでMr.HELIをプレーしています。解説はミカド店長イケダミノロックさん + 石田雅彦さん(Mr.HELI、イメージファイト等を作曲) + 先述の濱田慎一さんです。
ついでに2017年に石田さんと濱田さんが関わったVR関連情報へのリンクを張っておきます。
*2023/11/09追記
『野球格闘リーグマン』という日本語タイトルは、元アイレムの窪田シンジさん(https://twitter.com/Kubota_4nz)による命名だそうです。
窪田さんの描いたイラストは以下のサイトで見ることができます。
少し前から調査中なのですが
は
「『野球格闘リーグマン』になる前の日本語タイトルではないだろうか」
と思っています。これは結論が出たら追記、修正する予定です。
*間違っていたらスイマセン。
*2023/11/21、2023/11/26追記
リュウネンダーさん(https://twitter.com/ryunender)がピンクリーグマンに言及していました。
とありますが、恐らく正しくは「DECO(データイースト)アメリカ」ではなく「アイレムアメリカ」からの要請ですね。Drewさんはアイレムからデータイーストに転職したと言われているので、それが理由でデコとアイレムを書き間違えたのだと思われます。
アイレムのツインレバーグラフィック入力装置「鉄人」は、以前akioさんがイラストを上げていました。
リュウネンダーさんはアイレムでグラフィッカーだったのでしょうか?
(リュウネンダーさん=Chintaさん、ではなさそう)
↓
リュウネンダーさん≠Chintaさんで、さらにMeeherさん≠Chintaさんでした。
リーグマンのクオリティの高さ、及びリーグマンは一部コマンドがアンカバと同一ということで
「ChintaさんはMeeherさんの変名かも?」
と思っていたのですが、この推察は違っていました。
基板販売数も(また)Drewさんの言っていることとは異なっています。販売数については
リーグマン販売開始"前"にアイレムを離れたDrewさん
より
リーグマン発売後にアイレムに在籍していたリュウネンダーさんなど
の方が正しいことを言っている可能性は高い気がします。素直に考えてアイレムの中の人のほうが販売数などの情報は入手、把握しやすかったでしょうし。
でもDrewさんは1桁台まで言及してるしなぁ。Drewさんの発言における販売数はイニシャルの販売数で、追加生産分は含まれていないとか?
【了】