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2021年の振り返りと2022年の相場展望

明けましておめでとうございます。
2022年もよろしくお願いします。

2021年の振り返りと、2022年の相場展望を書きたいと思います。

2021年の振り返り

2021年を最も象徴するのはこの2つのチャート以外に無いでしょう。

コロナ対策のために米国はGDPの15%相当の財政支出を行いました。これは第一次世界大戦に匹敵します。米国GDPは20兆ドル強なので15%というと3兆ドル程度です。

US Federal Deficit for FY2022 will be $1,837 billion according to federal budget. (usgovernmentspending.com)

この政府の信用創造が3兆ドル、さらにFRBによる大胆な金融緩和により民間でも3兆ドルほどの信用創造が促進され、マネーストック(M2)は15.4兆ドル→21.6兆ドル(+6.2兆ドル、+40%)とリーマンショック(2008~2009)の政府救済が霞むほど増加しました。

この2つのチャートが示す信用拡大こそが現在経済で起こっているあらゆる事象を説明する根源です。

当マガジンで毎月再掲しているクレジットサイクルの記事でも書いてますが、お金が先で、経済が後です。
信用創造により世の中のお金の総量が増え、そのお金が使われることで経済が拡大します。

これによって名目GDPは急回復し、年率4%成長のトレンドラインに復帰しました。

とはいえマネーストック+40%から考えればGDP+4%のトレンドラインは控えめ過ぎるでしょう。コロナや半導体、海運などのボトルネックが原因だと思われますが、借りたものの回っていないお金がかなりあると思われ、経済は加速余地があります。

このような強い経済の環境下、株価指数はダウ、S&P500、NASDAQ指数ともに大きく上昇しました。

2020/12/31~2021/12/30
ダウ:+19.22%(予想EPS+30.0%、予想PER▲8.3%)
S&P500:+27.2%(予想EPS+33.8%、予想PER▲4.9%)
Nasdaq:+22.3%(予想EPS+27.5%、予想PER▲4.0%)

株価をEPS×PERに分けて見ると、EPSは予想を大きく上回る上昇となり、PERもあまり低下しませんでした。

昨年の見通し「長期的な視点からみる2021年の相場展望」に貼っていた2021年頭のEPS予想はこちらになります。

2021年のEPSは$169.83(+21.7%成長)にV字回復する予想でした。

しかし2021年が終わってみれば2021年ESPは$205.55(+47.3%)と+25%も年初予想をビートしたのです。

予想12ヵ月先EPSは1年間で$169.83(2021年EPS予想)→$223.48(2022年EPS予想)と+31.6%伸びました。この非常に強いEPS成長が株価上昇の主因です。

次にPERもあまり低下しませんでした。

2021年初は予想PER22.6倍とコロナ前の19倍から+19%も高くなっていたため、最大10%くらいは逆風があるかと思ってましたが、2021年末時点で予想PER21.5倍と▲4.9%しか下がりませんでした。

予想を大きく上回るEPS成長と、あまり低下しなかったPER、この2つが株価が大きく上昇した要因です。

スタイル・サイズ別リターン

スタイル別リターンでは中小型グロースだけがほぼ横ばいと一人負けしてしまったため、今年は大型株かインデックスの強さが際立ちました。中小型グロースがメインになりがちな個別株投資には厳しい1年でした。

2020/12/31~2021/12/30

2020年、2021年、2020-2021年のスタイル別リターンを並べると、2020年で出遅れたバリュー株が2021年に強くなり、グロースが弱くなりました。
しかし大型グロースだけは2年連続で非常に強く、2年間で+80%と圧倒的にアウトパフォームしています。

大型グロース以外はリターン格差はほぼリセットされたように見えます。
大型グロースだけはバリュエーションが相対的に高まっており、それを相殺出来るほどの成長をしなければ2022はアンダーパフォームすると考えるのが普通です。


2022年の相場展望

2022年も強気です!まだクレジットサイクルのリセットから1年半しか経っていません。とはいえ2021年よりもかなり控え目なリターンとなるでしょう。

2022年の予想EPS$223.48は2021年$205.55から+8.7%成長、足元の予想PERは21.5倍です。

控え目なEPS成長率予想と高いPER、状況は2021年に似ていると思います。

しかしインフレが前年比+6%もあるなかで、2022年のEPS成長が+8.7%は控え目すぎるでしょう。インフレを除いたらかなり低い成長率になってしまいます。2021年同様にEPS成長は予想を大幅ビートする余地が大きいのではないかと思います。

一方PERは間違いなく逆風になると考えています。

まず国債利回りを見てみると10年債はインフレや好景気見通しなどから早い段階でコロナ前の2019年末レベルに戻っています。
2年債はFRBの急な引き締め転換によりここ3カ月くらいで半分ほど戻しています。
5年債はその中間という感じです。

この国債金利の上昇によって、社債の利回りも上昇しています。

そのため社債への投資は今年はパフォーマンスが良くなかったです。

LQD(投資適格債のETF)

HYG(ハイイールド債のETF)

信用リスクの安全度で言えば国債>社債>株式となります。
そのためFRBの引き締めによって国債利回りが上がり魅力的になれば社債の投資家が国債に移っていくことで社債の利回りも押し上げられます。

すると今度は株式の益回り(PERの逆数)も押し上げられるわけです(PERの低下)。

なのでPERはもっと低下しても良さそうでしたが、S&P500のPERは22.6倍から21.5倍と▲4.9%しか下がらず、コロナ前の19倍から13%高い位置にいます。

なぜ株式の益回りは上がらないのか、言い換えるとPERはもっと低下しないのか、それは名目金利から期待インフレ率を引いた実質金利がほとんど上昇していないためと思われます。

インカムしか受け取れない債券と異なり、株式は成長(キャピタルゲイン)というリターンを受け取れます。

そのため株式は名目金利よりインフレを加味した実質金利を見る事が適切と考えられます。言い換えれば株式はインフレ分の成長をPERに織り込んで高く評価しているということですね。

実質金利がほとんど上昇していないという事は、FRBの金利政策だけでなく政府の財政政策もセットで見るとかなり緩和的なままということです。

しかしこれからインフレ率が低下していく一方、名目金利はFRBが引き締めによって高めに維持する事が想定されるため、実質金利も上がっていくでしょう。

そのためPERはコロナ前に戻るほどでは無いにしても一桁後半%くらいの逆風になると見ておいた方が良いでしょう。

よって2021年はEPS成長が現時点で8.7%成長、PERがいくらか低下すると予想されますが、EPS予想は控えめ過ぎであり、一年後の着地ではEPSが力強く予想をビートすることで株価は上昇すると予想します。

いずれにせよクレジットサイクルがまだ若いので、1年後に投資し直すくらいなら今ポジションを取って2年くらいの投資スパンで見た方が確実です。

米国経済そのもののリスクはほとんどないと思います。中国のリスクが波及する可能性はありますが、全体の趨勢を決めるほどの影響力はないでしょう。

一方日本人投資家としては安すぎる円にリスクがあると思われます。
実質実効為替レートで見て日本円は安過ぎます。

コロナ終息後に行きたい旅行先ランキングで日本はかなり高い得票率で一位のようです。
投資としては魅力に欠けると思われがちですが、消費地として活躍する場面など何かしらポジティブな面があれば円高に振れる余地は大きいです。
とはいえ景気後退期などのようにわざわざヘッジするほどのタイミングでもないので円高になっても対応出来ないのですが。。

以上、簡単に2021年の振り返りと2022年の相場展望でした。

本年もよろしくお願いします!

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