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自殺カタログ

A太は生きることに辟易していた。趣味も、これといった特技もなく、ただ毎日を生きる。そんな人生に意味を見い出せといわれても難しいもので、事実A太は意味を見い出せていなかった。
こうなったらいっそ死んでしまおう。しかしどうやって死のうかな。
悩んでいるうち、A太はあるものを見つけた。《自殺カタログ》というインターネット上のサイトである。様々な死に方を実際に体験してみて、一番良いものを選ぶという何とも奇妙なサイトだった。また、それはリニューアルオープンしたばかりで、特別に費用は無用とのことだった。どうせ死ぬならいい死に方をと思ってA太はそれに申し込んだ。
スタッフは思いの外すぐにやってきた。
「まずはどの死に方をお試しになられますか。」
「そうだな。溺死をやってみよう。」
「かしこまりました。」
スタッフはA太を水に沈めた。
「これは苦しい。冷たいし、とてもいい死に方とは言えないよ。次は焼死をやってみよう。」
スタッフはA太に少々の油をかけ火をつけた。
「熱い。熱すぎる。死ぬまでとても耐えられない。もっと、苦しくも痛くもない死に方はないのか。」
「それでは失血死などいかがでしょう。」
そう言うとスタッフはA太の手首を切りつけた。A太の手首から鮮血が滴ってゆく。
「痛くも苦しくもないけどさ、気分が悪いよ。こんな死に方じゃ死んでも死にきれない。」
それから幾多もの死に方を試したが、A太が気に入るものはなかった。
「疲れた。死のうとしたのが間違いだったよ。生きていたほうがマシだ。それにしても、君達はどうなってるんだ。リニューアルもしたというのに客を満足させられないのか。リニューアルする前はどれほど酷いサービスをしていたんだ。」
A太が怒りに任せて怒鳴り散らすと、スタッフがゆっくりとした口ぶりでこう答えた。
「我々はリニューアルする前まではこのような苦しく残酷なサービスはしていませんでした。ただ声をかけていただけです。死んではいけない、と。《自殺防止組合》という名前で。」

#第2回noteSSF

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