経営指標 Part4~債務返済能力の経営指標~
こんにちは。SKPです。
前回までに『銀行のスコアリングでよく用いられる』経営指標の内、【安全性】【収益性】【成長性】の指標をご紹介しました。
企業の【状態】を考えると、これだけの経営指標の項目でいいような感じもしますが、『銀行のスコアリング』ですので、【債務返済能力】。つまり『貸したらお金が、ちゃんとお金が返ってくるのか』というのも大切な評価項目になっています。
経営指標:債務返済能力
【債務返済能力】を表す経営指標は、「どれくらいでお金が返ってきそうか」「どれくらい返済に余力があるのか」などを見る指標です。そのため、資金的な余力・企業の健全性を見るという点で、【安全性】の経営指標と似た側面もあります。
1.キャッシュフロー額
PL 営業利益 + PL 減価償却費
ここでいう『キャッシュフロー額』は、厳密な計算ではなく、簡便に算出したものです。そのためFCF(フリーキャッシュフロー)などとは、そもそもの意味合い・計算方法が異なります。
あくまでも「簡便的に、今期の通常の営業活動でいくら現金を得られたのか」を知るための計算式・確認項目だと思ってください。
ただ、これがマイナスであると『融資があった場合、元金の返済額も稼げていない』という状態ですので、当然評価が悪くなります。
今から新しい借入金を検討する場合は、最低でもこの『キャッシュフロー額』の範囲内に年間の借入金元金返済額を抑えなければ、資金は減少していく一方となります。
減価償却費がない場合は、端的に「PL 営業利益」が『キャッシュフロー額』ということになります。
2.債務償還年数(年)
BS 有利子負債残高÷1.キャッシュフロー額(営業利益+減価償却費)
既にある借入金の残りの償還(返済)年数…ではありません。1.キャッシュフロー額をそのまま借入金の返済に充てるとして、今の借入金を返済するのに何年かかるのか。を計算したものになります。
要するに『本業で生んだ現金で、借入金の返済に何年かかるの?』を表したもの、と思ってください。
厳密なことを言えば、1.キャッシュフロー額から「法人税等の支払」であったり、運転資金をやりくりする必要がありますので、ここで計算される数値よりも、【実態の方が悪い】のが一般的です。
また「金額の大きい借入金を借りた直後」は、自然と数値が悪くなります。あくまでもこれは『経営指標』ですので、目安としてとらえてください。
当然、この指標が小さくなる方が「営業活動で生んだ資金で十分に返済ができる」となりますので、金融機関からの信用度合いが高くなります。
現在、借入金がない場合は、この計算は『0÷キャッシュフロー額』となりますので、この指標は計算できません。その場合は『1.キャッシュフロー額』がどれくらいになるのかが、【債務返済能力】を考える上では重要になってきます。
3.インタレスト・カバレッジ・レシオ(倍)
(PL 営業利益 + PL 受取利息・配当)÷ PL 支払利息・割引料
これは少し毛色が違う経営指標で、【利息の支払能力】を表しています。
『自分の会社』の経営指標を『自分たち』で分析する場合には、正直この指標はあまり意味はないと思っています。
インタレスト(支払利息を)・カバレッジ(どれだけカバーできているかの)・レシオ(割合・比率)ということで、『支払利息を利益でどれだけ支払えるのか・利息を支払うのにどれだけ余裕があるのか』を計算したものです。
お金を貸す金融機関側からしたら『収入は企業の支払う利息』ですので、『収入(利息)がきちんと得られそうか』を見ている、ということになります。
インタレスト・カバレッジ・レシオが「1.0倍」の時は、「営業利益+金融商品の収益(受取利息・配当)の合計額」と「支払っている利息の金額」が同じ。ということです。
これはどういうことかというと、単純に考えれば『営業利益+営業外収益(受取利息・配当)-営業外費用(支払利息)= 経常利益±0』ですので、稼いだ利益は全て利息の支払いで飛んでいっている状態。というわけです。
元金返済をしていないのに、生んだお金が無くなっていてはどうしようもありません…。ですので、インタレスト・カバレッジ・レシオは、できれば3倍以上・理想は10倍以上であることが望まれます。
今回ご紹介した指標は、全て【営業利益】が絡んできます。それだけ【営業利益】を良くすることが、スコアリングの評価を良くするためには大切なこととなります。
実際のスコアリングの詳細は各金融機関によって異なりますので、確定したものではありませんが、融資・借入の相談業務の一環として『ベーシックな指標によるスコア算出(有料:1,000円)』を実施しております。もし【現状の自社のスコアリング】が知りたいという方は【note クリエイター問い合わせ】にてご連絡ください。
これまで3回に渡って『銀行のスコアリング』で用いられることの多い経営指標についてご紹介しました。少しは『経営指標』が身近に感じられたでしょうか?
次回は、これまでに紹介していない経営指標で「こういう使い方・考え方もできる」ということをご紹介したいと思います。