春の香水-I want to sleep.-
僕は春の匂いが好きだ。
花の匂いでもなく、太陽の匂いでもない。
その両方を混ぜ和せた匂い、味のある春の匂い。
春の匂いを嗅ぐと、どんなに辛い日でも眠ることが出来る。
冬の日は寒さに震えて眠れず、なんだか変なテンションになり、いくつもの頭のネジが抜けてしまったときには疲労感に耐え切れず、立ち上がることさえできなくなってしまっていた。
このままではいけない、なんとかしなくては。
そして先日、春の匂いを閉じ込めた香水を手に入れることに成功したのだ。
早速手に入れた香水を床にひっくり返した。
目の前から春の匂いでいっぱいになり、僕は日向ぼっこをしているような穏やかな気持ちになった。心がどんどん真っ白にぼやけていく。
ああこれでようやく眠れる。
男はそう思いながら瞼の重さを感じながら静かに眠りについた。
そのあと、男が起きることはなかった。
その香水の注意書きにはこう書かれていた。
「使用量を超えた場合、命の保証は出来ませんのであしからず」