良い子の定義
あるところに少女がいました。少女は小さい頃から怒られることが怖いので、出来るだけ怒られないように大人のいうことを何でも聞いてました。
少女は大きくなり、学校に通いました。少女は同い年のお友達とは上手くいきませんでした。少女は学校が苦手でした。特に休み時間は地獄だと思いました。けれども、先生達からは「良い子だ」と褒められるので、毎日通い続けました。
少女は大きくなり、一人の女性として仕事をする社会人となりました。彼女の上司が言いました。
「君はこの件についてどう思う?」
彼女は困ってしまいました。なんて答えればいいのか分からなかったのです。今まで自分がすべき事は、全部大人達が指示を出してくれていたからです。そのほうが楽だし、周りも褒めてくれることを彼女は学習していたのです。
彼女は俯いてしまいました。周りが意見を発表する中、彼女だけは何も答えられずに、時間だけがどんどん過ぎていきました。
彼女は大人になるにつれて褒められなくなりました。頑張っていても「要領悪い」やら、「もっと見通しを立てて行動してください」と言われる始末です。
「私の何が間違っていたの?」
彼女にはもう相手を思いやる余裕がありませんでした。
そんな彼女の前に、天使が現れました。天使が言いました。
「私は天使です。良い子を救い、悪い子を消すのが天使のお仕事です」
彼女は藁にも縋る思いで、天使にしがみつきました。
「天使様、どうか私をお救いください」
天使は彼女の頭をよしよしと撫でました。
「言葉には見えない『ルビ』というものが存在します。あなたには見えないようなのでお伝えしますね。良い子というのは、『その場に合った行動が出来る子』であり、『嘘を使い分けることが出来ず、その場その場での自分の立場というものを考えることが出来ない頭でっかちの子』ではないんですよ」
天使は微笑みます。
「私が来た理由、何故だが分かりましたか?」
彼女の頭上には天使が振り下ろした金色の大槌がありました。
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「良い子を救い、悪い子を消す。それが天使のお仕事なのです」
天使は金色の大槌を持ち上げました。
「さて、あなたは『良い子』ですか?」
天使は微笑みました。