とある女の子の話 -I wear the clothes-
今日と明日の私はウルトラハッピー。
明日は学校一の美女で有名な先輩と買い物の約束。
今日は友達と一緒にちょっとリッチなレストランでのバイキング。
「明日先輩とデートなんでしょ?」
「いいなー、いいなー。うらやましい」
「デートとかそんな照れるぅ」
えへへ、と両頬に手を乗せて体をくねらせる。
「ハメ外し過ぎると子豚になっちゃうから気をつけなよ」
友達が意地悪なことを言うので、私はぷいっとそっぽを向く。
「いいの!今日は食べるって決めたんだから!」
口ではそう言ったものの、やはり美味しいものの前では胃袋に素直になってしまい、結局店を追い出されるまで食べてしまった。
うーん、ちょっと食べ過ぎちゃったかなぁ。
乙女にこの鏡餅腹と餅顎は駄目だよね。
うえーん、この格好じゃあ先輩に会ったら嫌われちゃうよぉ。
「でもまあ明日はこれで行くから関係ないけどね」
クローゼットから取り出したのはハンガーにかけられた一枚の皮。
最近見つけたお気に入りの皮だ。
念入りにアイロンをかけて、お腹の下の方を多めにワタつめて完成。
「気が早いけどもう着替えますか。えいっ」
自慢の長いもみあげを思いっきり下に引っ張った。
パサッ。
先程までそこにいた女の子は空気の抜けた風船のように絞み、情けない音を立てながらゆっくりと床に落ちていく。
そして、先程までハンガーに吊るされていた男子高校生くらいの人間の形をした革は程よく膨らみ、閉じられていた二つの目がぱっちりと開いた。
全裸の少年は目の前の鏡を確認するとにこりと笑い、鏡の前で少年はターンをして決めポーズを取った。
「よし、僕決まってるぅ」
暫し少年は鏡に映る自分の姿に見とれていたが、「さてと」と首をこきこき鳴らしながら呟くと床に落ちていた少女の皮を丁寧に整えて、ハンガーにかける。
「やっぱ美少女には美少年だよねぇ」
かつて自分が着ていた皮に笑いかけ、クローゼットの奥の奥の方へとしまいこみ、ぱたんと扉を閉じた。