想像妊娠
彼女が妊娠したらしい。僕の元にその情報が届いた頃にはもう彼女のお腹は大きく膨れていた。
「誰の子なんだい?」と尋ねると、「分からないの」と彼女は答えた。
「お腹の中に何かいるのは確かなのだけれど、どうやら人間の赤ん坊ではないみたいなの」
彼女は淡々と喋り続けた。
「此処のところ、私は自分の中の想像を形にすることを放置していたの。ただの言い訳だけど、とにかく時間が足りなかったのよ。私の頭の中の想像が外に出れずにずっとずっと私の中でぐるぐる、ぐるぐる回る。あぁそうか、私は自分の想像に孕まされてしまったのね」
彼女は淡々と喋り続けた。
「産むつもりなのかい?」
「選択肢なんて」
彼女の声は淡々としていたが、布団を掴むその拳は震えていた。死を受け入れるにはまだ早すぎる歳だ、仕方のない話だ。
「大丈夫、君の想像は僕が一生大事にするよ」
創造主を殺す想像、か。
好奇心の化身のような僕にとって、これほど興奮する立会いはない。