目的を明確にする - 下刈編 -
どんな仕事も着手前に目的を明確にすることで、仕上がりと仕事に取り組む姿勢に大きな違いが出てくると思います。
林業における各作業について、その目的を改めて明確にしていこうと思います。
目的に加えて、労務低減策や目から鱗情報も提供していきます。
目的
植栽木が小さく競争力が乏しい段階で、成長や生存を脅かす雑草木を刈り払うことで、植栽木の健全な成長を支えていくことが目的です。
日本は高温多雨なため、下刈をしないと雑草木に埋もれてしまい、日当たりが乏しくなったり、風通しが悪くなることで枯れてしまうリスクがあります。
土壌条件などにもよりますが、概ね5年間程度は下刈が必要です。
(私の経験では植栽から3年で上がった現場もありました。)
条件によっては同じ現場で1シーズンに2回刈ることもあります。
大切なこと
なるべく誤伐しない
そもそも植栽木を育てるための作業なんで、苗木は息子くらい大切にしましょう。
息子は極端ですが、大切にしてください。
いつまで刈るのか
目的からすれば、雑草木より背が高くなった時点でやめるべきですが
機械的に5年間と決めてやり続けてしまう事例がありました。
お金も労務も無駄なので、技術者であれば、あがりを意識して現場を見てください。
ここの見極めに技術者の力量が出ます。
つるは確実に除去
植栽木の形質に大きな影響を与えるつるは必ず刈ってほしいです。
休憩・水分塩分補給
日陰の無い空間で湿度も高め。
熱中症リスクが高いので、休憩は時間に囚われず適宜取りましょう。
ハチ対策
ハチの活発な季節の作業になりますので、アレルギー検査の上、自分のリスクに応じた対策をしてください。
時期
効果的な時期は梅雨明けのころ(7月中旬から8月上旬)です。
早く刈りすぎても、再び競争に見舞われてしまうため、時期の見極めは植生等を見ながらスケジュールを組む必要があります。
年々暑さが増しているため、効率や安全を考えると6月中旬ごろから、順次実施したいですね。
プチ情報
①.植栽木と雑草木を適度な競争関係に置くことで、上長成長を促し、幹の通直性が高まるそうです。
②.三重県林業研究所の研究結果によると、無下刈でも成林する可能性が示唆されています。(下記リンク、P170参照)
https://www.rinya.maff.go.jp/j/kikaku/hakusyo/r4hakusyo/attach/pdf/zenbun-41.pdf
労務低減策
①.暑さ対策の観点から、フレックスタイム制を導入し午前中に作業を終える。
②.機械地拵えで地表掻きを行うことで、下刈の初回を省略することができる。
③.下刈の刈高を低くしすぎない。
下刈の効果は梢端が出ていれば十分です。
キックバック等を減らせる効果もあります。
④.植栽木のギリギリまで刈りこまない。
誤伐しては本末転倒なので。
最後に
暑い中、ハチ刺されや熱中症のリスクがある中、作業してくださる作業員の皆さん本当にありがとうございます。
下刈一つとっても奥が深いと記事を書いていて感じました。
奥深い林業、楽しい。