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丸太の造材は質か?量か?

林業の技術者として未熟なため、読者の方からご意見をいただければと思っていることがあります。
それは、造材において優先すべきことは質か量か。
奥深い作業なので、単純化すべきことではないが大きな方向性として考えたい。


自分の意見

答えが出てないなりに自分の答えを先ず。
理想は質を高めるために1本1本の丸太に向き合いたい。
が、現実はある程度質より量を出すことに向き合わざるを得ない。
=(悲しいが)質より量なのかなと。
大前提として丸太の価格が低水準な点がある。
例えばカラマツの場合、用途は合板がメインで材の質は最重要ではない。
私は多少抵抗して、無節小節は用材、大節部分は矢板用材、それ以外はパルプやバイオマス材の3区分で造材を指示していた。
本来、用材(A材)を形質や形状ごとに細かく仕分け、それぞれを高い売り先に出荷したい。
そこに拘ることが技術者と技能者の林業における醍醐味の1つであってほしい。

コスト減を考えたシンプルな造材

【メリット】
■造材士の作業がシンプルになり効率が良い
■林内外の木材運搬も同様にシンプルで効率が良い
■土場のスペースが最小限で済みやすい
■林内に仮置きする際にも傾斜等に左右されずらい
【デメリット】
■質を高める造材技術の成長の鈍化
■高く売れる可能性を秘めた材木も中値以下の価値になる

売上単価増を目指すきめ細かな造材

【メリット】
■丸太の価値を最大化させるためにあらゆる販路を確保する面白みがある
■山の持ち主や木へのリスペクトがより高まる
■林業の技術が上がる
■良い造材をする事業体には仕事や信頼が集まる
【デメリット】
■思考時間が長くなり、生産性は下がる
■作業スペースや土場の広さなどの制約を受ける

現状の林業

丸太の単価が高いとは言えない状況で
量を伐らないといけない
                    ↓
こぞって一定以上の面積の皆伐が行われる
                    ↓
丸太が大量に出荷され在庫がダブついて単価が低下
                    ↓
収入が低水準になり林業従事者のなり手がいない
                    ↓
造林がされないor 遅れる
すごく単純化すると負のサイクルにあると思っている。
私自身、このサイクルの中で流れに乗ってしまっているが、上手く良いサイクルで林業を営んでいる事業体もあると聞いている。
もっと見聞を広めて改善に向けて取り組みたい。

理想的な林業

大前提として丸太が高く売れること。
高く売れることで、仕事の質は上がるし、立木の傷などにも気を遣うよう今以上に気を付ける。
量で勝負しなくてよければ、大面積皆伐もしなくていいし、択伐で森林を回す理想的な林業ができる。
択伐で回すことができれば、裸地状態の山林は大幅に減らすことができ、災害リスクも軽減されると思う。
林齢の幅も大きくなり多様なニーズにも対応できる。
ドイツでは一定面積以上の皆伐が禁止され、森林の成長量以内での収穫をすることにより持続可能な林業が行われている。
これを目標に、地産地消で丸太を積極的に使っていく社会になってほしい。
そして、林業が憧れられる職業になったらいいなと。


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