エンタープライズ市場では、Microsoftが参入してきたら終わりの予感
まだお金を払ってアンチウィルスソフトを買うのが当たり前だった時代「マイクロソフトがアンチウィルスソフト業界に参入したら、マカフィーもシマンテックもトレンドマイクロも終わる」と言われていました。
御存知の通りWindows 8 からWindowsの標準「機能」としてアンチウィルス+αを担うDefenderが搭載されています。その当時はオマケで付いているお守りのようなもの扱いでしたが、あれれという間にセキュリティ調査期間からものすごく高い評価を得るようになりました。これはアンチウィルスソフト御三家にとって終わりの始まりだったわけです。
もちろん以前からAVGやKingSoftといったフリーのアンチウィルスソフトはあったわけですが、Windows DefenderはなにせWindowsの一部としてデフォルト有効化状態で存在しており、インストールする必要がありません。有料版でないと気が済まないユーザーや企業はお金を払ってウィルスバスタークラウドなどを買うでしょうが、「Defenderが信用できない」という理由でAVASTやAVGをインストールする人はほとんどいないでしょう。Defenderは多くのセキュリティベンダーを駆逐し、これからも市場シェアを拡大していくのです。
PC暗号化ソリューションとしては日立やCheck Pointが有名ですが、BitLockerという標準暗号化「機能」が付いています。Windows 10 にマイグレーションする際に、多くの企業はBitLokerに以降するのではないでしょうか。
Active Directoryのパブリッククラウド版であるAzure ADを使うのであればフェデレーションサービスは不要ですし、Intuneの普及によりサードパーティーのリモートPCツールは姿を消していくでしょう。
Office 365があれば、各国のISPのメールホスティングサービスなど無用です。
もちろん、どんなビジネスにもセグメンテーションというものがありますので、マイクロソフトのサービスと競合関係にあっても自分たちの製品を買ってくれる市場を定義することはできるでしょう。ただ、マジョリティはマイクロソフト製品を買います。なぜならマジョリティ向けに最適化されたものがマイクロソフトソリューションだからです。
前置きが長くなりましたが、我々IT業界のプロダクトマネージャーや経営者はどうすればいいのでしょうか。
自国の商習慣や規制に最適化されたプロダクトを作り上げていくというのは常套手段です。ただ、一度その路線を取ると海外進出が難しくなるのと、いつか黒船が自国に来航する際に絶滅してしまう可能性があります。
これは極論ですが、マイクロソフトが参入を決めた時点でその市場はもはや他社にとって有望ではありません。Windowsというプラットフォームを握っている以上、「PC買ったらはじめからインストールされている」というものすごい強みがあります。前述のセキュリティ機能だけでなく、OutlookもSkypeもプレインストールです。反則です。
マイクロソフトと言えども万能ではありませんので参入当初においては製品品質や機能が不足しているということはあると思いますが、いずれ既存のマーケットリーダーたちに追いついてきます。なにせ開発者の人数や資金力がローカル企業とは段違いです。
中長期的に見れば早く次のビジネスを見つけるしかないでしょう。ITプロダクトビジネスを成功させている会社はたくさんありますが、それを長期に渡り維持・発展させていくというのは本当に難しく、その難しさのうちひとつは確実にマイクロソフトなのです。
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