批判的思考(クリティカルシンキング)の重要性
人間には確証バイアスという性質があります。
自分が正しいと思う情報を集め、それに反する情報は除外する傾向です。
批判的思考(クリティカルシンキング)はこの影響をできるだけ防ぐために大切な思考方法、というか姿勢です。
批判的思考は名前の通り、常に内容を批判をしながら、疑問を持ちながら考えていく思考方法です。
例えば、最近だとBCGの摂取とコロナウイルスへの罹患率に関係があるという情報が流れました。
確かにBCG摂取の分布とコロナの患者数の分布を比べると、パターンが被っているように見えます。
これを短絡的に考えると「BCGの摂取がコロナウイルスへの感染を防ぐ」ということになりますが本当にそうでしょうか(ここから批判的思考です)。
まず偽相関という考え方があります。
共通する要因が全然関係のない二つの事柄を関係があるように見せるというものです。
上のドイツの例で言うと、東西ドイツの罹患率差は富裕層の数の差ではないか、という指摘もあります。
つまり、お金を持っている富裕層がスキーに出かけて、集団感染したんじゃないか、という話です。
もう少し一般化すると、お金を持ってる富裕層が多い地域の方が移動が多く、他地域からウイルスをもらってくる可能性が高いということでしょうか。
ただこの説も他の地域(イランとイラク、日本と西ヨーロッパなど)の違いに当てはまるかというと、かなり怪しいです(ここも批判的思考)。
また別の視点として、なぜ結核のワクチンであるBCGがコロナウイルス対策に効くのか、という作用メカニズムに関する疑問があります。
結核の原因である結核菌とコロナウイルスは構造が全然異なります(人間とネズミの差よりも全然差があります)。
ワクチンは基本的に特定の種類の菌やウイルスごとに作るもので、結核菌とコロナウイルスに共通して働くとは考えにくいです。
これに関しては、BCG摂取が免疫力全体を底上げするのではないか、という説があります。
下のツイートのリンクに詳しい説明があります。
これが正しいとしても、BCGワクチンの何が免疫力を上げているのか、ワクチンの株ごとに差があるのはなぜか、といった疑問は残ります(これも批判的思考)。
ここでまとめてみましょう。
まず、BCGの摂取がコロナウイルスへの感染を防ぐのではないか、という情報が流れました。
それに対して、偽相関や他の原因が考えられるか、ワクチンが効くメカニズムが分らない、といった疑問からさらに富裕層の分布やBCGの免疫向上効果といった新たな情報を調べていきました。
ここで見えてくるのは、批判的思考によって、一つの事柄から様々な疑問が派生し、新しい話題が持ち上がり、内容が深掘り・展開されていくことます。
ここが批判的思考が大事と言われる点です。
批判的思考によって、疑問を持ち、それを検証していくことで、考えがより深化します。
また思考の過程で富裕層の分布やBCGの全体的な免疫向上効果など別の複数の可能性を同時に検討していることに気付いたでしょうか。
この複数の仮説を同時に想定して検証することも批判的思考の重要な側面です。
批判的思考をする際に大事なのは、出来るだけ中立な立場で考える、という姿勢です。
どういった意見にも、信じすぎず、疑いすぎないことが大切です。
批判的思考はどのような事柄に対しても応用ができます。
ぜひ何かを調べる際は意識してみて下さい。
(ちなみにBCGがコロナに効く仮説は個人的に結構確度が高い情報化と思います。各国が臨床試験を始めている段階なのでまだわかりませんが。)