論文の精読方法
世の中の99.99%くらいの研究はあなたには関係ありませんが、0.00001%くらいは隅から隅まで把握していなければならないものがあるでしょう。
学術的な論文や本を精読するときにどうやって読んでいくべきか、挙げればキリが無いですが、幾つか私が大事だと思うことを書いていきます。
個人的には2-2番が一番大切です。
まず論文の内容を理解して、さらに内容を吟味して理解を深めていきましょう。
1. 論文の内容を理解しよう
まずは論文の内容を理解しましょう。
1-1. 目的を明確にする
まずはこの論文をなぜしっかりと読まなければならないのか、その理由をはっきりとさせましょう。
分野の重要な論文である、自分が使おうとしている解析について理論と実装方法が詳細に書いている、興味深い仮説が解説してある、自分の研究と競合しそうな研究である、など様々な理由が考えられますが、大事なのはその論文から何を知りたいのかをはっきりとさせておくことです。
1-2. 大枠を掴む
まずは論文の内容をざっくりと把握しましょう。
やり方は論文の速読方法とほとんど同じです。
TitleとAbstractを読みましょう。
図にも目を通しましょう。
1-3. 研究開始に至る経緯を知る (Introduction)
1-3から1-5までは学術論文の中での情報の探し方(論文の構成)の内容と被ります。
まずは筆者が研究をどういった経緯で始めようと思ったのか、どういった背景知識が必要か、どういったことを最初に考えて研究に入ったのか。
そういったことがIntroductionに全部書いてあるので読みましょう。
1-4. 結果の解釈を知る (Results)
次に、実際の研究の経緯とその過程で出てきた結果について順を追って(?、実際に研究を行った順番とは異なることが多々ありますが)読んでいきましょう。
それはResultsに記述されていて、一つまたは複数の節の中で小さな論文のような形でまとまっていて、目的(Introduction的)→実験方法の簡単な記述(Method的)→結果の詳細(Results的)→解釈(Discussion的)という形になっていることが多いです。
また実際に取れたデータや詳細な統計値を記述するのもResultsです。
1-5. 出た結果から考えられること、発展できそうなこと (Discussion)
研究全体の結果から筆者がどういった発見をしたか、どういう仮説を思いついたか、過去の関連研究やこの研究内での食い違う結果はどう解釈したのか、どのような発展が今後望めるか、という研究全体の筆者の解釈を記述するのがDiscussionです。
論文の構成の中で一番自由度が高く、筆者が言いたいことが一番書かれているのがこのパートに多いです。
この研究から筆者が何を主張したいのか、何をアピールしたいのか、何が大事な部分だと思っているのか、理解していきましょう。
1-6. 実験・解析の詳細を知る (Methods)
研究の結果、解釈を理解したら、今度はその研究が具体的にどのように行われたのか確認しましょう。
Methodsにはできるだけ具体的に(研究を再現できるように)詳細な情報が書いてあります。
実験環境はどのような状況だったのか、どの装置を使ったか、解析のパラメーター設定は、計算式は、被験者の層は、詳細を見ようとすれば無限にあります。
実験風景をイメージしながら一つずつ確認していきましょう。
1-7. 引用文献にも目を通す
論文の内容を理解した後は、論文の中で参照している文献も読みましょう。
必要であれば、幾つかの引用元の論文も同様に精読しましょう。
1-8. 被引用文献も目を通す
この論文をその後引用している文献(被引用文献)も調べましょう。
他の研究者がこの論文の内容をどのように自分の研究に活かしているかを知ることができます。
2. 理解を深めよう
内容を整理・吟味して理解を深めよう。
2-1. 論文の内容をまとめて記録する
論文の内容を理解したら自分の言葉でまとめてみましょう。
理解が薄いところ、論文に対する疑問点などが浮かび上がってくると思います。
また、後日その論文の内容を見返そうとした時にも、探したり、内容をまた理解するために読む時間が省けて便利です。
2-2. 論文の内容を批判する
ここが一番大切です。
論文に対する批判や質問を自分の頭の中で行っていきましょう。
データの解釈は妥当か、必要な手続きを省略していないか、考慮すべきアーチファクトは他にないか、提案されている仮説に穴はないか、別の可能性はないか、査読者になったつもりになって吟味していきましょう。
査読者になったつもりで。
クリティカルリーディング(批判的読み方)といいます。
完璧な仕事はあり得ません。
批判的な姿勢で読んでいくことで論文の問題点や逆に優れている点などが際立ってきます。
また自分の研究を批判的に評価する力も上がります。
2-3. 自分の研究に応用する
そもそもこの論文は何らかの利益があるから精読しているはずです。
論文を理解した今、存分にその新たな知識を利用していきましょう。
精読は底がありません。
その研究への理解が深まるほどに新たな疑問が湧いてきます。
だから同じ論文を違う味で何度でも楽しめるとも言えますね。
大事なのは論文の理解を深めることと批判的・発展的に読むことです。
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