コンドルズ兵庫スペシャル公演「グランドスラム」(2015.3)
構成・映像・振付:近藤良平
振付補佐:藤田善宏、鎌倉道彦、山本光二郎
兵庫県立芸術文化センター阪急中ホール
2015年3月1日
「奇跡のベスト盤」と銘打つだけのことはあって、コンドルズのコンドルズらしいパートがぎっしり詰まった、初見の人にもコアなファンにも楽しめるバランスのいい公演だったといえるだろう。
かねがね、コンドルズの魅力は、近藤良平や藤田善宏そしてFA(!)で参加している平原慎太郎らのシャープな身体と、オクダサトシ(右段写真)を筆頭とする、わりとよく動くデブの身体のコントラスト、またカッコいいダンスシーンと勝山康晴や橋爪利博らのコミカルなコントとの「落差」だと思っていたが、もしかしたらそれぞれ前者の割合が小さくなってきて、脱力するコミカルなパートが魅力の中心になっているのかもしれない。
というのも、客席を見ていて、前者のパートのほうが「お休みタイム」で、後者になると前のめりになっている人が多いように思われたからだ。また、後者のほうは新しいアイデアをどんどん展開して、新鮮味を出すことができるだろうが、前者で新しさを出すことは容易ではない。余計なことだが、年齢とともに衰える部分もある。近藤たちのダンスは、相変わらずキレキレに見えるが、40代半ばの身体ではある。
基本的には近藤の振付は、モダンダンスのテクニックをベースとして、エッジのはっきりしたカッコいいダンスであることは、変わっていない。それを十数人の学ランの男子がユニゾンで踊ったり、シンプルなフォーメーションで個々の魅力を発揮したりするのだから、まずもって見やすく、見ていて気持ちのいいダンスである。メンバーは皆、ルックスも「芸風」も非常に個性的で、観客が引っかけられるポイントを探し出すのは簡単なことだ。
1996年から本格的な活動を開始したというから、約20年のキャリアがあり、その間ほぼ一貫して同じようなステージ構成を維持しながら、高い人気を集めている。少しずつ新人を入れているが、客席も20年来のファンが多い。もちろん、若い人たちも多い。コミックグループのように、笑いに来ているお客さんがいても不思議ではないし、その人たちにとって合間に挟まれるダンスも見やすく「悪くない」ものではあるのだろう。
コンドルズにとって、この落差を抱え続けることは、非常に重要なことなのだろ思う。ダンスだけではこれだけ幅広い動員を保てないだろうし、コミカルな部分だけでは、おそらく持たない。ダンスカンパニーとしての身体の成熟と、コンセプトユニットとしての破天荒さという一貫性(いい意味でのマンネリズム)が、公演によって相補的なバランスを少しずつ変えながら展開してくるのが、安心できる芸能的な面白さとなって高い人気を保ち続けている所以なのだろう。
ところで、彼らが繰り出してくる新鮮味には、コンセプチュアルなどと呼ばれるような硬さがなく、あくまでエンタテインメントの枠の中で、思いつきの軽さや楽しさを失わない。それでいて、身体のスリルを垣間見せるあたりが絶妙だ。頭のいい男子校の放課後の悪ふざけが、無茶をしてもどこかで愛らしさを失わず破綻しないのとよく似ていて、微笑ましい。多くの女性ファンにとっては、そのあたりがツボなのだろう。しかし、破綻した姿も見たい。